LIVE REPORT
"MEGA VEGAS 2023" -DAY2-
2023.03.12 @神戸ワールド記念ホール
Writer : 内堀 文佳 Photographer:Viola Kam (V’z Twinkle) 、スズキコウヘイ、浜野カズシ
SiM
サイレンの音と暗闇を照らすいくつものサーチライトで臨場感を掻き立て登場したSiM。その緊張感のまま始まった"進撃の巨人 The Final Season Part2"OPテーマ・ソング「The Rumbling」では、目を光らせる無数の"巨人"や、メンバー4人のパフォーマンスに炎や瓦礫のエフェクトを重ねた映像がステージ左右のヴィジョンに映し出され、楽曲の世界観をより演出する。続くキラーチューン「Blah Blah Blah」でツーステップ、ジャンプ、モッシュをして暴れまくるフロアに、「Faster Than The Clock」で高速サークル・ピットを生み出す。そんな激しい楽曲たちに続くMCでの、"MEGA"な"ラスベガス"ということでカジノのような光景を期待したなんて言うMAH(Vo)の冗談で全身の力が抜けてしまうが、SHOW-HATEのギターから「WHO'S NEXT」で演奏を再開してしまえば、あっという間に臨戦態勢に戻される。
さらに2曲続けて大暴れしてから再びMCに入ると、あとを絶たないモッシュ/ダイブの是非を問う論争についてMAHが"ロックのライヴってのは危ねぇのよ"、"(しかしコロナ禍前のライヴの光景を)知らない子たちが「何あれ面白そう、楽しそう」つって、「私も入りたい」ってなるような、そういうシーンになってほしい"と意見を展開。賛同の歓声が沸くが、今日の主催はラスベガスなので、ダイブ禁止の指示には従う。しかしそれ以外に制限はないので、体力のあり余るフロアを"安心して全員死ね!"と煽り「KiLLiNG ME」を投下。それを途中で止めたかと思いきや、"(RASのライヴで輝いていたサイリウムは)どこへ行ったんだ?"と尋ね、シーンを知らない観客にも自由に楽しんでいいのだと知らせる。"こんなことやってるバンドのライヴが安全なわけないのよ"と始まった「f.a.i.t.h」ではウォール・オブ・デスも発生。このシーンにおけるライヴの在り方が濃縮された1曲となった。
マキシマム ザ ホルモン
SEに合わせた手拍子から、両手のメロイック・サインをクロスさせたポーズで埋め尽くされたフロアに出迎えられたマキシマム ザ ホルモン。ド頭からヘヴィな「What's up, people?!」で熱気を爆発させ、今回彼らが大トリ前を任された理由をまざまざと見せつけられた。そんな彼らのラスベガスとの縁は、20年前に彼らが関西遠征の際に世話になっていた"越智たかし君"という当時大学生の友人が、中学校の国語教師になりSoを教えていたところからと明かされたのち、"三度の飯より?"、"飯が好き!"のコール&レスポンスから、ヴィジョンに映るメンバーの虹色の残像がトリッピーな視覚効果をもたらした「アカギ」、イントロで大きなざわめきが湧いた「ぶっ生き返す!!」、そしてヘドバンの勢いをますます激しくする「絶望ビリー」を連続で畳み掛ける。
ここでラスベガスが今回のイベントのために用意したオフィシャル・クラフト・ビールをダイスケはん(キャーキャーうるさい方)が絶賛する流れから、ラスベガスに出会ってから彼の胸に今も刻まれているという一言が発表される。それはTomonori(Dr)が放った"先輩、今日もブスでんな"。ヴィジョンで白い背景に黒の明朝体でそう映ると同時に爆笑が起き、それを読み上げるダイスケはんが激しくツッコむと、その勢いのまま「ハングリー・プライド」へと雪崩れ込む。間髪入れずに「ビューティー殺シアム」でウォール・オブ・デスを発生させ、ラストはナヲ(ドラムと女声と姉)の"恋のおまじない"から「恋のスペルマ」で、メンバーの3Dモデルが踊る映像が流れ、ダイスケはんの動きに合わせて会場がダンス・フロアになる。最後に控えるラスベガスのための舞台、熱気、興奮、すべてが整った。
Fear, and Loathing in Las Vegas
ついに2日間にわたって開催された"MEGA VEGAS 2023"も残すバンドは主催者 Fear, and Loathing in Las Vegasただひとつ。1日目同様にSo、Minami、Taiki、Tetsuya(Ba)が元気いっぱいに、Tomonoriがクールにステージに登場すると、最新アルバム『Cocoon for the Golden Future』のオープニングも飾る「Get Back the Hope」を繰り出す。Soが白いヘッドレス・ギターでTaikiとユニゾンでタッピング・ソロを披露する、爽快に駆け抜けるアゲアゲなナンバーだ。「Scream Hard as You Can」ではMinamiが側転したり、Taikiもギターを縦に掲げダンスしたりと、この2日間を楽しみまくったフロアの体力の消耗を一切感じさせずに、まだまだ急上昇していく盛り上がりに拍車をかける。
常にストイックにライヴに向き合うラスベガスだが、そんな向上心をオーディエンスにも共有するように、より大きな声を上げるようSoが促すと、よく訓練された観客は煽られるたびに今度こそはメンバーを驚かせてやろうと言わんばかりの勢いで声を張り上げていく。そこから突入した「Crossover」ではSoもMinamiと共にシャウトし、極悪なブレイクダウンでは会場にいる全員が頭を思い切り振り下ろす。さらにはTetsuyaが長い金髪をなびかせながら披露するベース・ソロもあり、めまぐるしく展開するなか、様々な形でラスベガスのヘヴィネスを堪能できた。続く「Just Awake」ももちろん大いに盛り上がる曲だが、こちらは対照的にラスベガスのポップでエモーショナルな面が強く押し出されている曲だ。
HEY-SMITHの猪狩に賛同する形で、Soが"イカレ仲間"と呼んだこのワールド記念ホールに集った人々と"イカレたダンス"を踊った「Virtue and Vice」から、昨日に引き続き披露された「Let Me Hear」。後者では隣同士で肩を組んでヘドバンする人も見えたところで、"MEGA VEGAS 2023"最後のアクトも終盤に近づく。Soが改めてオーディエンス、スタッフ、出演者への感謝を言葉にし、同じく彼らを支えた神戸にも恩返しがしたいということで"来年も「MEGA VEGAS」やってもいいですかー!"と問い掛けると、この2日間での歓声の大きさの最高記録をまた更新。さらにこの2日間であった嬉しいこととして、ゲスト・アーティストたちに"「MEGA VEGAS」、お客さんめっちゃ温かいな"、"地元でライヴしてるみたいやったわ"と伝えられていたことを報告する。喜びを分かち合うように盛大な拍手が沸いたわけだが、そんな温かい空気を共に作った観客ひとりひとりを称える拍手にも感じられた。
シンフォニック・メタルのようにストリングスの音色を用いた重厚なサウンドと、その対極に位置するエレクトロでラウドでダンサブルなパートを、違和感なく繋げてしまう1曲(しかも初期の!)「Twilight」から、さらに1stフル・アルバム『Dance & Scream』より名ダンス・チューン「Love at First Sight」を投下し、最後の最後にフロアをこの上ない大興奮に導いたラスベガス。"MEGA VEGAS 2023"の閉幕を飾る1曲を鳴らし終え、"また来年もよろしくー!"とSoが絶叫する。この2日間のエネルギーを再び、いや、6年越しの"MEGA VEGAS"をここまでパワーアップさせた彼らだからこそ、この2日間を間違いなく超えてくる来年の"MEGA VEGAS"開催が約束されている。この瞬間のワールド記念ホールは、世界のどこよりも熱く、幸せな気持ちで満たされていたことだろう。