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LIVE REPORT

Hi-STANDARD

2017.12.14 @さいたまスーパーアリーナ

阿刀 “DA” 大志

"THE GIFT TOUR 2017"最終日@さいたまスーパーアリーナ、出演するのは2バンドだが、会場周辺にはまるでフェスのようなお祭り感が漂っている。まぁ、実際のところ、お祭りに変わりはないんだが。会場の一角には、ハイスタのメンバーが実際に使用している楽器の展示があって長蛇の列ができていたし、自分に声を掛けてくる友人の声も妙に弾んでいる。

アリーナ内に入ると、人がぎっしり。400レベル以上の席が潰されているなんてことは当然なく、もう、てっぺんまでぎっしり。これだけの人がハイスタを求めて来ているんだと思うと、それだけで胸が熱くなる。

  "気持ちは完全にひとつだよね!"とナヲ(ドラムと女声と姉)が叫んだように、マキシマム ザ ホルモンと我々の想いは100パーセントシンクロしていた。「握れっっっっっっっっ!!」や「パトカー燃やす~卒業~」、「セフィーロ・レディオ・カムバック~青春最下位~」といった初期曲を多めにセットリストに入れてきた彼らの気持ちは大いに理解できる。

今ツアーでハイスタと対バンをしてきたバンドは口々にハイスタへの想いをステージで語ってきたが、ホルモンの面々も例外ではない。ただ、彼らの場合はガッツリとライヴの演出に組み込んでくる。ナヲが22歳、ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)が20歳のころにハイスタのメンバーと一緒に撮った写真をスクリーンに映し出したり、自慢のハイスタTシャツでじゃんけんをしてみたり、やりたい放題。

その一方で、曲ごとに映像を制作してスクリーンに流すというこだわりも発揮。かなり早い段階からハイスタのメンバーから声が掛かっていたということで、おそらくセットリストも早めに固めて映像の制作を発注し、MCの内容も決めていたのだろう。重量級の演奏を聞かせながらも、練りに練った演出を用意したのはさすがホルモンといったところ。あえて悪い言い方をするならば、ハイスタへの愛を散々語りながらも、それすらもハイスタに勝つための道具にしていたわけだ。こういう毒っ気が最高だ。

そして、比較的長めなインターバルのあと、ハイスタの3人が登場。飛び跳ねながら現れた難波(章浩/Vo/Ba)を見て、なんとなくいい予感がした。このままライヴに入るかと思いきや、難波は言った。"『The Gift』っていうのはハイスタからみんなへの贈りものってわけじゃないんだよ。お前ら、まだ何かやれるだろっていうこと"。つまり、みんなも自分なりのGift(=才能)を持っているんだから頑張れよ、ということ。冒頭からいきなり楽曲の意味の解説から入るところが彼ららしい。そして、一同が認識を改めたところで、「The Gift」を投下。周りに人がいるわけでもないのに汗が滲むほどの熱気が一気に場内を満たしていく。

このあと、「Growing Up」~「All Generations」とすでにお馴染みとなった新旧織り交ぜたセットリストで突っ走る。この時点で3人ともメンタルが充実している様子がびしばし伝わってくる。それは気合が入っているという意味ではない。リラックスしているし、吹っ切れているし、のびのびしている。「I Know You Love Me」の前のめりっぷりに思わず笑ってしまったほどだ。"ブロックごとでグルーヴ出していけよ! 最前はどうした!?"(難波)、"お前ら、地蔵かよ!"(横山 健/Gt/Vo)と自分たちの勢いに追いつけていない観客を煽る余裕すらある。実に頼もしい。

このツアーでハイスタは成長した。特に目覚ましいのは恒岡(章/Dr)の覚醒だ。ツアー初日はMCらしいMCは特にしていなかったはずだが、徐々に意識が変化したのか、この最終日に大爆発した。本当は"AIR JAM 2012"でやりたかったと前置きをしながら恒岡がドラムで先導したのは、サッカー日本代表のチャントとしてお馴染みの「VAMOS!NIPPON」の合唱。場内は戸惑いと笑いが混ざった状態で歌い始め、何度も繰り返しているうちにサッカーさながらの大合唱に発展。非常に感動的なシーンとなった。軽く泣きそうになるほどだ。この日のベスト・モーメントに挙げる人もきっと多いと思う。かつて、彼は決してこういうことをする人ではなく、寡黙に自身のプレイに徹する職人ドラマーだった。しかし、このツアーが、メンバーが、ファンが、そして自分自身が彼をここまで変えたのである。

横山は今ツアー中、実に楽しげにパフォーマンスを楽しんでいた。00年代の彼を見ていると特に違和感はないが、やはり彼も90年代はこんなではなかった。どちらかと言うともっとクールな印象で、難波のMCを横でうっすら笑みを浮かべながら聞いているイメージ。ツアーに参加した人ならわかると思うが、そんな時代が本当にあったのか疑いたくなるような変化だ。その場その場の空気で起こる化学変化を心底楽しみ、なんなら自らハプニングを起こしていくようなやんちゃさがある。長尺のギター・ソロから"やるぞ、やるぞ"という不敵な笑みを浮かべながら溜めに溜めて「California Dreamin'」のイントロを奏でる流れなんて最高だった。彼と難波のMC中のやりとりはまるで漫才のようでもあり、なんと言うか、家族のようなムードすらあった。

難波は言った。"ハイスタやってて、今が一番楽しいっす。みんなどう思ってるかわからないけど、俺たち今、めっちゃ仲いいから"。その言葉が嘘でないことはステージ上の彼らを見ていてよくわかる。この日、難波が"PIZZA OF DEATH"のTシャツを着て現れたことにも大きな意味がある。よくわからないキッズは父親にでも聞いてみてほしい。

さて、その難波はというと、実は何も変わっていない。もちろん、演奏はかなりたくましくなったし、人間的な貫禄もついた。しかし、難波章浩という人間はずっとそのまま、ナチュラル・ボーン・パンクス。まっすぐなまま。彼は自嘲気味に自分のMC力のなさを嘆き、"ケンくんはすごいなぁ"と横山のトーク・スキルの高さをうらやむ。しかし、難波のようにまっすぐな人間はそういない。言葉に、態度に嘘がない。だから、他のバンドマンが言葉を尽くし、うまい言い回しで感謝を述べて客を感動させるところを、彼の場合は"ありがとう"のひと言だけで聴き手の胸を震わせる。"AIR JAM 2000"の"よっしゃ来い"なんてその最たるものでしょう。横山は、難波のMCには"マジで"と"ホントに"が多いとからかっていたけど、彼も当然わかっているはずだ、難波の言葉の強さを、人間の強さを。

そんな3人が今のHi-STANDARDを、感情も何もすべてを曝け出したスーパー・バンドを構成している。前述した「VAMOS!NIPPON」も自然と難波のベースが加わり、横山もギターを重ね、気づけばパンク・バージョンのチャントになっていた。これはかなりわかりやすい例だけど、3人の心のやりとりは2時間にわたるライヴの間、ずっと密に交わされていたのである。これが今のHi-STANDARDの最大の強みなのだ。

これに18,000人が興奮しないわけがない。パンクのライヴを見るなら小さいライヴハウスがいいと一般的には言われるが、必ずしもそうだとは思わない。3人が特に煽ったでもなく生まれた一体感や、スタンディング・エリアも500レベルもどこもかしこも歓喜している光景を目にすれば、大会場でのライヴだって悪くないときっと思うはず。6万人収容のアリーナでみんなと一緒にOASISのライヴを見たいという感覚と同じだ。

いいライヴの条件のひとつに"一体感"というものが挙げられると思うが、ステージから煽られるがままに観客が一斉に手を左右に振ったり、ジャンプをしたりするからといって必ずしも一体感が生まれることはない。そんなことやれなんてひと言も言われてないのに、「Close To Me」や「Starry Night」のコーラス・パートをみんなで大合唱しちゃうような、音楽を通じて生まれる連帯感こそが真の一体感なんじゃないか。昨今のフェス流行りのせいか、誰でもできるようなお手軽な盛り上げ方が浸透してしまっているが、それってちょっと違うよねと改めて認識。

"日本を救うために集まった"と2011年に活動を再開したハイスタだが、その気持ちは当然今も持ち続けている。それはもはや復興支援に留まっていない。「STAY GOLD」の最後、"I won't forget"と歌うところを"You won't forget"に変えていたことに気づいた人はいるだろうか。"いつまでも金ピカのままでいろよ"と俺たちひとりひとりを鼓舞していた。3人はそんなメッセージをこれからも送り続けるんだろう。

アンコールでは、スマホのライトが照らされるなかプレイされた「Happy Xmas (War Is Over)」(音源に忠実に、恒岡がグロッケンを叩いていたのが最高)も良かったが、やはりラストの「Mosh Under The Rainbow」が素晴らしかった。ここまでずっとアリーナ席にいたが、この曲の光景だけはスタンドから見たかったのでダッシュで移動。そして、200レベルの扉を開けたときに目の前に広がっていた光景はきっと忘れないだろう。18,000人が放った歓喜のシャワーが降り注いでいた。ある者は駆け回り、ある者は隣同士で肩を組み、車椅子エリアの客も自分の前の席にいた客と抱き合って(輪になって)、喜びを表現していた。ステージを観てる場合じゃなかった。客の姿しか視界に入ってこなかった。

ここで終わっても十分以上に満足だった。しかし、13公演続いてきた"THE GIFT TOUR 2017"の物語にはまだ続きがあった。会場から2/3ほど観客がいなくなったころ、再び3人がステージに姿を現したのである。プレイしたのは「My Heart Feels So Free」。帰りかけていた客がものすごい勢いで戻ってくる。自分の座席やブロックなんてもはや関係ない。感情の赴くがままにステージへと突進。まさに"My Heart Feels So Free"状態。さらに最後には「Turning Back」をカマして今度こそ終了。18年ぶりの全国ツアーで帰ってきたHi-STANDARDが、最後に爆音を介して"また帰ってくるぜ"と俺たちと約束を交わし、去っていった。


[Setlist]
1. The Gift
2. Growing Up
3. All Generations
4. Summer Of Love
5. I Know You Love Me
6. Dear My Friend
7. Hello My Junior
8. Glory
9. Close To Me
10. Pink Panther Theme
11. Nothing
12. Going Crazy
13. We're All Grown Up
14. Pacific Sun
15. California Dreamin'
16. Fighting Fists, Angry Soul
17. Starry Night
18. The Sound Of Secret Minds
19. Stop The Time
20. STAY GOLD
21. Free
22. Maximum Overdrive
23. Brand New Sunset

24. Another Starting Line
25. Teenagers Are All Assholes
26. Happy Xmas (War Is Over)
27. Can't Help Falling In Love
28. Mosh Under The Rainbow

29. My Heart Feels So Free
30. Turning Back

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