MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

マキシマム ザ ホルモン

2017.05.20 @八王子Match Vox

Writer 荒金 良介

個人的には約8年ぶりに恋の街・八王子のMatch Voxにやって来た。2009年9月3日、シングル『ざわ・・・ざわ・・・ざ・・ざわ・・・・・・ざわ』初回特典の葉欄(ばらん)を持ってる人のみ参加のプレミアムなフリー・ライヴ"草~えのん~"以来になる。あの日も腹ペコたちのとてつもない騒ぎっぷりにもみくちゃにされ、間違いなく人生5本の指に入る過酷なライヴ・レポートだった。そのなかで鮮明に覚えているのは、ライヴ後の床が腹ペコたちの汗でびちょびちょになっていたことだ。

今回はナヲ(ドラムと女声と姉)の妊活のため、2015年6月からライヴ活動自体を封印していた彼らの、約2年ぶりのライヴ活動復帰となる"耳噛じる真打TOUR"ツアー初日。結論から書こう。2年ぶりに観たマキシマム ザ ホルモンはブランクを感じさせないどころか、その音像はグッとウェイトが絞られ、さらなるパワーアップ化を図っていた。あの鋭利で暴虐な殺傷力は磨き抜かれ、その一方で、ズバ抜けたポップ・センスも忘れちゃいない。あのホルモンが帰ってきた。よりソリッドになり、有無を言わせないド迫力のサウンドを増強させて。その事実が何より嬉しかった。

今日の対バンにはKen Yokoyamaが呼ばれた。やはりホルモンのルーツ中のルーツである尊敬する大先輩にライヴ活動復帰の門出を祝ってもらいたい気持ちが強かったのだろう。会場内にはホルモンTシャツに交ざり、Ken YokoyamaのTシャツを着た人もあちこちで見かけ、なかにはOi-SKALL MATESのキャップにOPERATION IVYのTシャツを着た男性もいた。そして1曲目が始まるやいなや、Kenはお決まりのように白いマイクをぎっしり埋まったフロアに投げ込み、ライヴ後半は1曲終わるごとに"パンク・ロック! パンク・ロック!"と観客と共に大コールを起こし、怒濤のサウンドで腹ペコたちを焚き付けていく。パンク・バンドは数多くいれど、誰にもマネできない唯一無二のスタイルで一気に駆け抜けていった。

それから30分ほど間隔が空き、ついにマキシマム ザ ホルモンが登場。幸運にもチケットをゲットした約300人の腹ペコたちが満杯のフロアを激しく蠢き、ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)、上ちゃん(4弦)、ナヲ(ドラムと女声と姉)、そして、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)をふと見ると、IRON REAGANのTシャツを着ているではないか。MUNICIPAL WASTEのTony Foresta(Vo)率いるハードコア/クロスオーバー・バンドで、今や本家を凌ぐ人気を獲得している彼ら。速い激しいうるさいの3拍子を揃え、シリアスとバカバカしさを併せ持つ。そのTシャツのチョイスに、現在のマキシマムザ亮君のモードが表われているようにも映った。もちろんIRON REAGANとホルモンを比べるつもりはないが、ハードコアの突撃力に加え、あらゆるものを混ぜたクロスオーバーという意味において共通項は見いだせる。
ライヴ序盤に"Kenさんがパンク・ロックなら、ウチらはハードコアな空間で......"とダイスケはんがMCでも言っていたが、この2年間に溜めに溜め込んだ感情を大爆発させ、いきり立つハードコアな演奏力で攻めまくる。いや、ホルモンの楽曲が持つ多彩なエッセンスの核だけを抽出し、純粋にまっすぐに叩きつける振り切れっぷりがとにかく凄まじかった。1曲目の演奏を聴いた時点で、"えっ、本当に2年間ライヴ活動休止してたの?"と首を傾げたくなる衝撃度だ。そんじょそこらのメタルコア・バンドも裸足で逃げ出すキレキレの極太サウンドである。

この日は『耳噛じる 真打』からの楽曲も披露され、特に「アバラ・ボブ<アバラ・カプセル・マーケッボブ>」(プログラミングはAA=の上田剛士が担当)は生で聴くと、新鮮極まりなかった。まだミクスチャーという言葉さえなかったころにラウドとデジタルを繋ぎ合わせ、未開のジャングルを切り拓き、90年代のラウドロックにエポックをもたらしたTHE MAD CAPSULE MARKETS。フォロワーが生まれないほど強烈な個性を、2017年にホルモンが愛とリスペクトをもって自分たちの音に咀嚼している様にひどく感動した。もっとストレートに言えば、めちゃくちゃかっこよかったのだ。
ほかに小ネタや様々な面白要素を盛り込み、ホルモンならではの痛快なショーを展開。振り返れば、2008年にENTER SHIKARIとジョイントした初のヨーロッパ・ツアーにおいても、彼らは現地の人たちの前で全編日本語MCを貫き、メンバー4人でギャハギャハ笑っていた。あのノリは9年経っても微塵も変わらないまま、音楽に対するストイックな眼差しは2年のブランクを経て、さらにレベルアップしているのだから、恐れ入った。この日は初めてホルモンを観るという腹ペコも多くいたようで、ライヴお休み中にも新規ファンが続々と列を成して、ホルモンの音楽に群がっている状態なのだから。今回のツアーはまだ始まったばかりだが、首を長くして待った甲斐があるクオリティというより、想像以上に鍛え上げられたホルモン・サウンドに出会えるだろう。本当に度肝を抜かれた。

  • 1