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INTERVIEW

HEY-SMITH

2022.10.05UPDATE

2022年10月号掲載

HEY-SMITH

Member:猪狩 秀平(Gt/Vo)

Interviewer:荒金 良介

HEY-SMITHがニュー・シングル『Inside Of Me』を発表! 表題曲はサビがホーン・セクションで構成されており、"サビで踊れ!"と高らかに告げたスカ・チューンに仕上がっている。これまでにない斬新なアプローチを取った攻めの1曲と言っていい。今作を引っ提げて結成15周年対バン・ツアーが10月1日から始まり、そのあとはHEY-SMITH&東京スカパラダイスオーケストラ共同企画"SKAramble Japan"も11月に控えている。猪狩秀平に、今作を中心にじっくりと話を訊いた。


サビは歌うんじゃなく、踊るんだぜ!って曲にしたかった


-まず今年の"HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2022(以下:ハジマザ)"を終えて、猪狩さんが感じたこと、思ったことはありますか?

率直に思うのは賛否両論分かれるイベントになってしまって。そこが良かったのか悪かったのか......この先数ヶ月~1年とかでわかるのかな。今はそう思ってます。

-賛否が起きたのは猪狩さんの中では想定外だった?

そうですね。2点あって、1点はモッシュ、ダイブ禁止を掲げているにもかかわらずそれが起きたこと。もう1点はライヴ中に撮影している人が10~20人くらいいて、それに苛立ってしまい、自分たちのライヴを途中で切り上げたんですよ。それが賛否分かれた要因かなと。

-モッシュ、ダイブが起きたときは注意して?

やりました。そもそもガイドラインで"人が触れ合わない程度に距離をとる"と書いているので、モッシュ、ダイブは不可能じゃないですか? "HAZIMAZA BOX"でEGG BRAINが始まったときに、そういう状況になってしまって、マジ!? って。多少は元気なやつらが来るのかな、そうしたらどう対応しようかなと考えてはいたけど、想像以上に元気でしたからね。だけど、禁止と書いてるんで、これ以上何をしたらいいのかなと。禁止と書いていても、内側から出てくる感情をみんな持っていて、それを無理矢理抑えつけたい気持ちもないから。

-ええ。

対処としては"ダメやからね"と言うために、セキュリティを入れてなかったんです。セキュリティが立っている=遊んでもいいだろうと考える人もいるから。でもそういう状況になり、セキュリティをバンバン入れて進めたんですよ。そしたら"ガイドラインでダメと書いているにもかかわらず、どっちなん?"となったと思うんです。まぁ、俺も緊急事態宣言とか、去年だったらまだあれやけど、そろそろ次のフェーズに入っているのかなという気持ちもあったから。そういうことを思っている人たちを否定したくなかったので、とにかくケガ人が出ないように頑張りました。

-なるほど。

コロナ禍前もモッシュ、ダイブは禁止やったんで、今頃何を言うてるのかなと。ずっとダメだったけど、みんなで協力して、楽しめるように頑張ってきたわじゃないですか。基本はダメやと思っているんで、今も特に話し合いたいことはないんです。ダメと書いても、みんなが破るんでしょ? だからそれに関しては最悪! と思いました。主催としてはモッシュ、ダイブ禁止と書かないと、会場は借りられないですからね。(モッシュ、ダイブは)なしはなしなんで。でも少しずつ良くしていきたい気持ちはありますよと、お互いにね。

-わかりました。では、今回のシングル『Inside Of Me』に話を進めたいんですが、楽曲的にはスカにフォーカスを当てたサウンドですけど、これはいつ頃に作ったものなんですか?

"Inside of me~♪"って途中のサビっぽくなるフレーズがあるんですけど、それはずっと昔からあったんですよ。『Life In The Sun』(2018年リリースのアルバム)ぐらいにはあったかな。フレーズ自体はかっこいいのに、当時の自分では曲に落とし込むことが難しくて。イントロだと少し長いし、イントロというよりもエンディング感があるし......このフレーズどうハメるの? と思っていたんですけど、コロナ禍で暇になり、今まで聴いたことがなかった音楽を聴いているときに......"あれ? このフレーズをサビのど真ん中に持ってきたらどうなるんやろ"って。サビでは普通歌うじゃないですか? でも歌わずにフレーズがサビみたいな曲ってあるのかなと思ったら、意外とあるんですよ。

-例えばどのへんの楽曲ですか?

Billie Eilishの「Bad Guy」とかね。あとEDMにも多いんですけど、Aメロ、Bメロはラップなのにサビになると違うビートだけで来るみたいな。作曲として考えると、これありかもって。そのへんからヒントを貰ったかな。

-それでサビがフレーズでも行けるだろうと。他にはどんな音楽を聴きました?

BLACKPINKとか。前から好きやけど、より聴いたし、音的にはヒップホップとEDMの間みたいなノリで来るんで、それも作曲としては勉強になりました。あとHi-STANDARD、NOFXを聴くにしても、ベースだけを1枚通してずっと聴く、ドラムだけを聴くとか。そういう聴き方は中学生以来やってなかったけど、"あっ、このひとつのフレーズで次の展開がこんなに変わるんや"、"このコードを一瞬入れるから、次のコードはこっちにしてるんや!"って。そういう気づきもたくさんありました。

-猪狩さんが以前からBLACKPINK好きなのは知っていたので、僕もふと映像を観てハマってしまいました。特にMVを観ると、脳が幸せを感じるんです(笑)。

そうなんですよ! 音楽もかっこいいけど、映像ヤバいですよね? バンドのアンサンブルが揃うと気持ちいいように、ダンスのアンサンブルもそうなんですよ。そんなクールな映像のあとに普通に会話している映像を観るとキュートだから、あれにやられるんですよね。

-普通にファンじゃないですか。今回の「Inside Of Me」MVも踊っているから、BLACKPINKに対する猪狩さんからの回答かなと思いました。

いや全然(笑)。単純に意味のわからないMVを作りたかったんですよ。"ハジマザ"のこともそうやけど、最近は説明しなきゃいけないことが多くて、ルールやマナーもそうやし。あと、失礼かもしれないけど、日本語の歌詞を歌っている方も歌詞の説明が多いんですよ、1から10まで。

-日本語で歌っているバンドはたくさんいますが。

ごめんなさい、全部じゃないですよ(笑)。説明しすぎと思っちゃうんです。説明がつかなくて興奮したり、自分の解釈を当てたりすることが大事やと考えてるから。そういう意味で理解できないMVを作りたいなと。

-あの近未来感のあるMVは、ちょっとBLACKPINKっぽいですよね?

あぁ、それはたしかに(笑)! 

-そして、MVのダンスのアイディアは誰によるもの?

あれは俺が出したんですけど、サビは歌うんじゃなく、踊るんだぜ! って曲にしたかったんです。でもどう表現しようかなと思って......。

-ダンスは猪狩さんの中にあるどの引き出しを開けて?

いや、俺はあんな引き出しないから(笑)。"俺らが30分練習したらできるもの"と伝えて、別の人に簡単なダンスを考えてもらいました。ダンスでかっこ良く見せるのは不可能だから、ダサくて、いい感じのやつになればいいなって(笑)。

-それでツッコみどころ満載のダンスになったと。この曲を聴いて、みんなに踊ってほしい?

はい。ただ、この振付を踊ってほしいという気持ちはなく、好きに踊ってくれたらいいなと思います。

-locofrankも以前にダンス入りのMV(「Intertwining」)を発表して、当時ビックリしましたが。

あっ、出してましたね! 忘れてた。でもそういうことかもしれない。考えるという感情から離れて、イェーイ! となってほしかったから。

-楽曲的にも「Inside Of Me」はHEY-SMITHの中では異色のサウンドかもしれないですね。

うん、ほんまに新しい扉を開けられた気がするし、この扉はいい感じやなと。だいたい扉を開けると閉めちゃうんですけど、この曲には全然迷いがなかったです。