LIVE REPORT
"山人音楽祭2018" -DAY2-
2018.09.23 @ヤマダグリーンドーム前橋
Writer 林 なな
妙義ステージ:山人MCバトル
この山人MCバトルは、集まったオーディエンスの歓声の大きさによって勝敗が決まっていく。ちょうどステージに辿り着いたのは、我次郎MICと小池潔宗の勝負真っ只中だった。シードとしてFRANKENが登場すると、盛り上がるオーディエンス。序盤はFRANKENが有利に思われたが、後半一気に追い抜いた輪入道が見事コマを進めた。TKda黒ぶちVS歩歩の闘いは延長戦の末、TKda黒ぶちが勝利を収めた。そしてROTTENGRAFFTYのN∀OKIが今年も登場! "3度目の正直"と過去の敗北への悔しさをぶつけるが、小池潔宗も真っ向から挑発する。結果、今年もN∀OKIは敗退、4度目の正直があることを願ってやまない。続くMc KjとNAIKA MCの闘いでは、まずMc Kjが"ツルッパゲVSツルッパゲ"と投げ掛けると、それに乗ったNAIKA MCが"鏡を見ているようだ"と返す。このギャグのようなやりとりに笑うオーディエンス。だが、やはりバトルという名だけある。そのあとは真剣なMCバトルが繰り広げられ、見事ハゲ対決を制したのはNAIKA MCだった。そして、チャンピオンの座に君臨したのは輪入道! それにしても、目の前で勝負が決まっていくこのドキドキがたまらない。もうすでに目玉になっているであろうこの山人MCバトル、ずっと続いていってほしいかぎりである。
赤城ステージ:UVERworld
真太郎のドラミングが勢いを増したところで、メンバーがオンステージ。が、ひとり足りない......。そのまま「7th Trigger」の1音目が鳴ると、すごい勢いで人影がステージを横切った。TAKUYA∞(Vo)だ。気合の入りようはこのとおりである。"魂乗っかったライヴをかましてやるよ"と言い放ったあとには、真太郎に加えて彰(Gt/Prog)、克哉(Gt)、信人(Ba)、誠果(Sax/Manipurator)の楽器隊もパーカッションを叩きつける「WE ARE GO」をプレイ。"昔は俺たちもあなたたちと一緒で、フェスでかっこいいロック・バンドを観ては泣いて、かっこいい曲を聴いては泣いて。いつかあんなステージで、自分たちの愛した曲をやりたいって願いながらやってきたんだよ"、そうTAKUYA∞が語ったあとに披露した「Q.E.D.」は、どこまでも破格だった。目の前の夢を叶えた男たちの姿以上に信じられるものは、他にないだろう。曲を終え、再び口を開いたTAKUYA∞はこう言う。"もう何も迷いはないよ"と。UVERworldは、本当に迷いなく、あとはひたすらに眩く光るステージで音を楽しむだけだった。会場に誠果のサックスが響き渡り始まった「零HERE~SE~」、「IMPACT」、新曲「EDENへ」を挟み、「在るべき形」でステージを締めくくった。"新しい時代に足跡つける、俺たちがUVERworld!"、そう叫んで一発音を爆発させ、自身たちも跳ねるその姿がなんとも美しかった。その足跡が"山人音楽祭"の歴史の1ページに刻まれたこと――この日会場にいたみんなが目撃者だ。
榛名ステージ:SHANK
SHANKのライヴにしては最前の柵前に構えるセキュリティの数が少ない! と思ったのも束の間、ライヴが進むにつれてどんどん増えていく。それでもフロアから飛んでくるダイバーはまったく途絶えなくて、休む暇なんてゼロだ。「Good Night Darling」、「Life is...」、「Grimy Window」と連続でフロアを踊らせると、庵原将平(Vo/Ba)の"SHANKです、よろしくー"という軽い挨拶を挟み「time is...」、9月発売のアルバムから「Smash The Babylon」を披露。SHANKの音楽は、速くて気持ちがいいのはもちろんなのだけれど、それ以上にステージとフロアの化学反応がたまらなくいいのだと、「Weather is Beautiful」で改めて思う。"ここを選んでくれてありがとうございます。俺だったら10-FEETを観に行きます"と庵原。そして"やる? せっかくだから......"と続けると、10-FEETの「RIVER」のイントロを松崎兵太(Gt/Cho)が弾き始め、即興でワンフレーズだけ歌ってみせる。そのあと、" G-FREAK FACTORYに愛を! また(ここに)立てるように精進します!"と言って始めた「Departure」、"またいつか会えるように、そういう曲"と庵原がしっとり「Set the fire」の出だしを歌い上げたところで、池本雄季(Dr/Cho)が一気にテンポを上げ、再び沸くフロア。超ショート・パンク・チューン「submarine」を投下して3人は去っていく。30分間、みんな最高に楽しそうな顔をしていた。
赤城ステージ:10-FEET
フロアだけでなくスタンドにも掲げられるタオルのおかげで、会場一面"10-FEET"の文字がびっしり。お馴染みのギター・リフから「RIVER」が始まると、一気に挙がる手、揃うジャンプ、そして「1 size FITS ALL」、「goes on」で常に揺れ動く人間の頭。メンバー、特に激しく動き回るNAOKI(Ba/Vo)もそうだが、休みなしに遊び続けるフロアも、どこにそんな力が眠っていたのかと不思議でならないほどに声を振り絞り、人の上を転がっていく。そのあとの「太陽4号」で見せつける彩度の違いが優しさへと変わり、会場を包み込む。そして、TAKUMAのムチャぶりにより始まったKOUICHI(Dr/Cho)のめちゃくちゃ面白い話(※高校時代サッカー部に入っていたKOUICHI少年が部活中に鼻血を出した際、監督に"これ塗っとき!"と渡されたのがムヒだった、という話)から「蜃気楼」へ。TAKUMAは、"G-FREAK(G-FREAK FACTORY)は、俺らが次の目標がなくなったときにいつも次の目標を教えてくれる"と、語る。ふと、ステージ上部に設置されたモニターに目を移すと、TAKUMAが映った。それは当然なのだが、その後ろのアンプの上に置かれている"山人音楽祭"オリジナルのミニ幟が目についた。アーティストごとにその紋章は違っており、会場内にも吊るされているが、このミニ幟は楽屋にダルマと共に置かれていたもの。言ってみれば、G-FREAK FACTORYからの愛ある贈りものである。TAKUMAはそれをステージ上に持ってきていたのだ。だからか、なんだか始まりからずっと嬉しそうな顔をしていたのは。"寂しさも虚しさも「山人音楽祭」へ姿を変えて"と歌詞を変えて歌ってみせた「その向こうへ」、そして「ヒトリセカイ」の最後の最後まで、G-FREAK FACTORYへの想いが詰まっていた。
赤城ステージ:G-FREAK FACTORY
暗くなった瞬間にシーンと静まった会場。これまで2日間3ステージで繰り広げられてきた祭を締めくくるのは、言わずもがなG-FREAK FACTORYである。先に原田季征(Gt)、吉橋"yossy"伸之(Ba)、渡部"PxOxN"寛之(Dr)がステージにやってきて奏でられるセッション。その音は、昨日よりも太いと感じた。それは遅れてステージにやってきて歌い始めた茂木洋晃も同じだ。確実に昨日よりも伸びやかに聴こえる。「風林花山」を終えたあとの「Too oLD To KNoW」のイントロで会場を眺めると、"こんなに残ってたんだな、ありがとう"と言い、そのままフロアに降臨。ど真ん中でマイクを握る茂木。"「山人音楽祭」2日間、どうだった?"という問い掛けには、雄叫びが帰ってきた。そして始まった「ダディ・ダーリン」では、会場を練り歩いて歌う。その姿は集まったひとりひとりの目を見ているかのよう。そして次の瞬間に茂木の口から紡がれていく言葉。口頭伝承で良かったのかもしれない、この日本という国で起こったことを次の世代へと継いでいくのは。でも、G-FREAK FACTORYはそれを選ばなかった。彼らは音楽を続け、その音楽で平和を歌い、怒りを込め、困っている人がいたらその場所まで飛んでいく。いつだって彼らは弱い者には強くて優しかった。それは変わらず、この日も同じ。そのG-FREAK FACTORYの人柄をそのまま閉じ込めたような「EVEN」で本編は終了。ギラギラと目を輝かせたままの4人は、静かにステージを去った。
再度呼ばれたアンコールでは「日はまだ高く」を披露。途中からは出演者が次々とステージにやってきて、わちゃわちゃと楽しそうな空気が流れる。マイクを手にしたN∀OKIは、"群馬、最高だな!"と叫ぶ。その言葉に対し、茂木は"見たか群馬ー!"と返した。そしてそれを謳歌するかの如く、会場に響く拍手。
G-FREAK FACTORYは、群馬という場所で人と人が巡り会うことを願った。その人の心と心が向き合うことを祈った。"来年このフェスをやる約束はできねぇけど、もしやれたら必ず会おうぜ"と茂木も言っていたが、同じ音楽を前に共に笑い、共に泣き、共に願い、共にこの2日間を過ごしたみんなが再び集まったその日には、この日を超える光景が待っているはずだ。同じ音楽に共鳴できることは、そう簡単にありふれたものではない。