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FEATURE

HAWAIIAN6

2012.10.17UPDATE

2012年10月号掲載

初のメンバー・チェンジを乗り越え、再び歩み始めたHAWAIIAN6。その温かなメッセージは、キッズの心に語りかけることを決してやめない。

Writer 山本 真由

“ハワイに連れてってやるぞ!”なんて、お父さんが急に気前の良いことを言い出したと思ったが、蓋を開けてみたら “常磐ハワイアンセンター”のことだった……。
初めてHAWAIIAN6を聴いた時は、そんなことを考えていた。確か友達が持っていた『ACROSS THE ENDING』の「MAGIC」だったと思う。ハワイアンとか言うから、頭空っぽにして聴ける太平洋っぽいカラっとしたスケート・パンクだとばかり思っていたので。そんなこんなで肩透かしを食らったけど、それでガッカリしたわけじゃない。HAWAIIAN6の、暑苦しいくらい温帯湿潤JAPANな歌詞の世界観と分かりやすいメロディは、東北のおっちゃんやおネエちゃんが一生懸命、日本人のホスピタリティで独自の南国リゾートを作り上げたように、日本人の歌心で“メロディック・パンク meets 歌謡曲”という独自のサウンドを作り上げ、感動を与えてくれた。

なんていう私の個人的な話はそこそこにして、ここで今一度そんな彼らの略歴を振りかってみよう。97年、安野勇太 (Vo/Gt)、小鷹徹(Ba)、畑野行広 (Dr)の3人により結成されたHAWAIIAN6。結成当時は、Hi-STANDARDのカヴァーを主に演奏していた。当初オリジナル曲はポップ路線だったようだが、バンドの個性を追求するために自分たちの独自のスタイルを模索し、メロディック・パンクと歌謡曲というメンバーの共通点を活かした現在のHAWAIIAN6の個性を確立した。
そして、00年にSTEP UP RECORDSからミニ・アルバム『FANTASY』をリリース後、徐々に頭角を現し、02年にはHi-STANDARDの横山健が代表を務めるレーベルPIZZA OF DEATH RECORDSより1stフル・アルバム『SOULS』をリリース。その知名度を確かなものとする。その後も同レーベルよりヒット作『ACROSS THE ENDING』(03年)、『BEGINNINGS』(05年)を発表。07年には自主レーベル“IKKI NOT DEAD”を立ち上げ、ミニ・アルバム『RINGS』をリリース。09年には、バンド至上初の配信シングルとなる「Blackout」を発表し、同年11月には約4年ぶりとなるフル・アルバム『BONDS』をリリースしている。
作品の発表と共に、ライヴ活動も意欲的に行っており、自身のツアー以外にもFUCK YOU HEROESとの共同イベント“HAWAIIAN6 & FUCK YOU HEROES presents 1997”を開催している。これは、06年から10年までに計4回新木場STUDIO COASTで行われ、1度に20バンド以上が参加する大型イベントでありながら全出演バンドがノーギャラという、主催バンドの求心力を感じさせる特殊なイベントでもある。
こうして、それまで1度のメンバー・チェンジもなく不動のスリー・ピースとして活動を続けていた彼らだが、11年1月に行われたワンマン・ライヴをもってベースのTORUが脱退、一時活動休止を余儀なくされる。“これからどうなるのか?このまま解散しちゃうの??”というファンの心配の声もあがったが、同年6月には新ベーシストとして相坂亮介 (FUCK YOU HEROES / HARDCORE FANCLUB)の加入が発表され、新体制として活動を再開させた。

ということで今回の新作は、“新生HAWAIIAN6”としての初のリリース作品ということになる。がしかし、何かが大きく変わったわけじゃない。今回のミニ・アルバム『The Grails』は、前作から約3年ぶりのリリースだが、元々多作なバンドではなかったから、メンバー・チェンジのせいで新作の発表が遅くなったわけではないだろう。HAWAIIAN6として、自然な流れでできた作品に違いない。というのも、これまでHAWAIIAN6にとって身近な存在として活躍していたRYOSUKEは、わりとすんなり彼らのサウンドに馴染んだんじゃないかと思うからだ。HAWAIIAN6の持ち味である美しいコーラス・ワークも健在で、メンバーを欠いて一旦は危機的状況に陥ったバンドだとは思えないほど、まとまりのあるサウンドに仕上がっている。実は新メンバーの加入で、もうちょっと不穏な攻撃性が出るんじゃないかと思っていたから、あまりの完成度に逆に期待を裏切られた気分だ(笑)。
しかし、苦境を乗り越え、よりタフになったサウンドと成熟した詞世界、そしてより強固になったバンドの一体感は、聴く者のハートを鷲掴みにするパワーを持っている。HAWAIIAN節とも言えるエネルギッシュで温かいメッセージがこもったこの6曲は、またこれからもライヴ・ハウスに感動を、笑顔を与えてくれるに違いない。

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