INTERVIEW
locofrank × HAWAIIAN6 × dustbox
2024.04.16UPDATE
2024年04月号掲載
2013年、locofrank×HAWAIIAN6×dustboxの3バンドによるスプリット・アルバム『THE ANTHEMS』が突如リリースとなった。当時、メロコア・シーンのみならず、ライヴ・バンドとしてそれぞれその名を響かせキャリアを積み上げていたバンドが、タッグを組んだのは強力なインパクトをもって迎えられた。そこから11年。交わることはあれど"ロコダスト6"としてのリリースはなかったが、これまた突如、3バンドによるスプリット・アルバム第2弾『THE LAST ANTHEMS』の発売&ツアー"THE LAST ANTHEMS TOUR"の開催が決定した。新曲のみ、全9曲。あれから11年を経た今だからこそ音にできる思いを渾身の力で放つ、このアルバムの重みと、その楽しさを味わってもらいたい1枚だ。今回は各バンドから3名を呼び、ここに至る思いを訊いた。
locofrank:木下 正行(Ba/Vo)
HAWAIIAN6:HATANO(Dr)
dustbox:SUGA(Vo/Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
-3バンドでのスプリットとしては2013年に第1弾『THE ANTHEMS』がリリースとなった。当時このスプリットはHATANOさんの発案だったということでしたが、今回約10年の時を経て第2弾『THE LAST ANTHEMS』をやろうというのは何が大きかったのでしょうか。
HATANO:引き金になっているのはコロナ禍の影響が大きいですね。あのときにみんな、通常の"ライヴ"というものができなくなって、対バン形式もやりづらくなって、ワンマンとかが多かったんですね。あとは、終わったらとっとと帰ってくださいみたいなライヴもあったりとか。そこから徐々にコロナ禍の状況も変わってきたあたりで、dustboxとツアーを回っていたときに、暗いニュースばかりが続いたなかで、ちょっと世の中が変わってきたし、今なら自分たちが持ってるものの中で一番最強のカード、仲間内で持っている最強のカードを出しても面白いんじゃないの? という話を、ツアー中になんとなくしていたんです。
SUGA:そうですね。
HATANO:そういう話を2バンドでしていたので、locofrankにも連絡をしたんですよね。"こんな話あるんだけど、どう?"って。みんな、まぁやりましょうかっていうことで、そんな感じになりました。
-それが2022年くらいの話ですか。
HATANO:2021年の終わりくらいか、2022年の始まりくらいかのタイミングだったと思います。
SUGA:結構前から、そろそろやろうかという話はしてましたよね。
HATANO:どのタイミングかわからないけど、"もう1回くらいはやってもいいんじゃない?"というのは、この11年間で打ち上げの席でちらっと話題を出したりとかはありましたね。ただ具体的にやろうという話にはなってなかったんです。
-振り返ってみて、当時この3バンドでスプリット『THE ANTHEMS』を出したときの手応えはどういう感じだったんですか。
木下:手応えか(笑)。locofrankからしたら11年前というと31歳とかだったんですけど。そのときのHAWAIIAN6とdustboxっていうのは、"ザ・先輩の背中"でしたから。今でこそこの関係性が作り上げられていますけど、そのときはただの先輩で、言わば憧れている最中というものでもあったので。言うたら、なんで俺らこういうことになったんだろう? みたいなところもあったし。でもやっぱね、HAWAIIAN6とdustboxに交じっての4曲(収録曲)というところで、ガチガチやったと思うんですよね。でもチャンスというか、すごくいい機会だったので、一矢報いるみたいな気持ちももちろんありましたし。
-そういう関係値だったんですね。
木下:だけどもう開き直って作った4曲の結果だったので。それで蓋を開けたら全12曲で、それぞれHAWAIIAN6、dustbox、locofrankの色がちゃんと分かれたものになったので。手応えというよりは、自分がオーディエンスやったとしてもワクワクできるアイテムにはなったと思いますね。それからのツアー("locofrank HAWAIIAN6 dustbox ZEPP TOUR 2013")も、すごくいい武者修行でしたし。
-当時のツアーのことって覚えていますか。
SUGA:まず作品が今言ったような感じで、自分らでとりあえず4曲作ってやれるだけやって、いい曲できたなと思って。みんなの曲が合わさってマスタリングでバーっと聴いたときに、もちろん自分らの曲は自信あったんだけど、全部合わさったときに本当、すごい力を放っている作品になったので。どんなツアーになるのかなってすごい楽しみだったんです。蓋を開けてみたら、意外と3バンドとも緊張して1日目がめちゃくちゃ硬かったという思い出がありますけど(笑)。
-この3バンドでも、そういう感じはあるんですね(笑)。
SUGA:前回はZeppツアーだったんですよね。
HATANO:そう、全部Zepp。
SUGA:全部をZeppで切るって、しかも3バンドでというのは初めての経験だったので。それで硬くなったのもあったと思うんですけど。でもファイナルまでやってみて、すごくいい経験ができたし。刺激もあったし、悔しさもあったし、最終的には超ハッピーで、めちゃくちゃいいツアーだったなというのはすごく覚えてますね。
-そのツアーをやって、またやろうよっていう話にはならなかった感じですか。
HATANO:いや、ツアーをやっているときは正直、俺たちはバンドの状態もあまりいい状態ではなかったので、そういう話もできるような感じではなかったんです。ただもともと、俺はこの3バンドでやるという以前に、こういうスプリットを作ると決めたのは、メロコアのバンドが固まって活動をすることがすごく嫌だったんです。その当時──11年前よりももっと前、14~15年前に、メロコアっていうもののブームがやってきて、メロコア・ビジネスみたいな感じになったときに、自分が思うバンドってこんなもんじゃなかった気がするなと違和感があって。だから自分たちHAWAIIAN6は、メロコアだけを集めてイベントをやるとかは全然やってこなかったし、むしろ逆のことをずっとやってきて。で、言い方は悪いですが、こういうものに寄せれば人が入るとか、寄せればこんなことができるというのを、ひと通り世の中がやり終わったような空気があったんですよね。そのときに、じゃあ寄せてやってみようかという。だったら俺たちは違うぞっというのを、この3バンドでやれたらいいんじゃないかっていう。それで、わざとらしくZeppツアーっていうのを切ってみて(笑)。
木下:(笑)
HATANO:世の中がどういう反応をするんだろうっていう。正直この3バンドでZeppツアーをやるって、キャパオーバーしてるんですよね。Zeppという箱がデカすぎて、自分たちがすごく背伸びしているような状態だったんですけど。だから面白い。やれるっていう保険があることをやるんじゃなくて、やれなくて届かないかもっていうことを、3バンドだったら届くかもっていうことでやった結果、ガッチガチに緊張していたっていう(笑)。
SUGA:面白かったですけどね。みんな本番前にソワソワ、ソワソワしちゃって。でもそれって、負けたくないとかもあったりして。
-それはこの3バンド内でお互いにということですね。
SUGA:ぶっちゃけた話、あのくらいのときってすごい仲良かったわけじゃないよね?
木下:うん、俺らはそうね。
SUGA:俺らとHAWAIIAN6も、お互いのイベントに誘い合ったりするようになったのが、2010年とか2011年くらいなので。
-スプリットがリリースされる数年前ですね。
SUGA:locofrankとも知り合ったのはすごく昔だけど。
木下:そうそうそう。
SUGA:お互いを呼び合うようになったのって、ずっとあとのことだったので。
HATANO:そもそも当時に何かの取材のときにlocofrankがたまたま一緒の日があって。何かの話をしてたときに、"こんなことやったら面白いと思うんだよね"っていう話をしたら、"それ面白そうですね"って話になって。それで"こんなことやりたいからやろうと思うんだけど、やらない?"ってまず話をしたのが、locofrankだったんです。じゃあもう1バンドを誰にするかとなったときに、その当時一緒にいたようなバンドの名前も出ていたんですけど、でもなんか違和感がほしかったんですよね。dustboxは、当時はまだ距離があるバンドだったんですけど、この3バンドなんだっていう違和感がちゃんとあったし、思っていることは一緒だというのは、出会ってしばらくしてわかったので。それでこの3バンドがいいだろうっていうのが、スタートだったんです。
SUGA:同じメロディック・パンクというところにいながらも、個々に活動をしていたというか。みんな自分らのやっているイベントみたいなものが違うし、対バンのやり方とかも違ったんですよね。たまーに一緒にやるけどっていう。
HATANO:うん、予想できないことが良かったんです。きっと"3バンドでスプリット出すんだけど、その3バンドを当ててみて?"って近い存在の人に聞いても、当時は絶対に当てられなかったと思うんです。それが1個の作品になるのが面白くて。今はね、周りから見たらもうこの3バンドだって見えるかもしれないですけど、あの当時はまったく見えなかったから。
-それがスプリットの始まりだったというのが面白いですし、でも同じ3ピースではありながら、それぞれスタイルはまったく違いますしね。
HATANO:当時スプリットをリリースしたときに、(the)原爆オナニーズのTAYLOW(Vo)さんとライヴが一緒のときがあって。TAYLOWさんが、"メロディック・シーンにとどめを刺したね"って笑って言ってくれたのは嬉しかったな。
-それだけインパクトもありました。そこから時間を経て、じゃあ第2弾をという今回は、みんなの期待値がかなり上がっているところからのスタートになりますよね。
HATANO:そうですね。今回、パンデミックというものがあって正直みんなバンドが嫌いになりそうになった瞬間もあると思うんですよ。見ている側もやっている側も、バンドが嫌いになりそうで。辞めていくやつも当然出てきたし、ライヴハウスから去っていくお客さんも結構いたし、本当にこの世から去ってしまったバンドマンだって何人もいるじゃないですか。あれを見たときに、いつまでやれるのかわからないなと思ったんですね。思っていることを思っているときにやるべきだと思って。年齢がそうさせている部分はありますね。そういうのが、今は自然に話せることなんじゃないかなという気がします。