INTERVIEW
Dizzy Sunfist
2021.10.27UPDATE
2021年11月号掲載
Member:あやぺた(Vo/Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
Dizzy Sunfist待望のフル・アルバム『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』が完成した。いやまが卒業し、あやぺたとmoAiの体制による今作だが、そこには変わらずポジティヴで、全力の心震わせるメッセージがあり、磨き上げたブライトなメロディとアグレッシヴでキャッチーなメロディック・パンクが1ダース分、詰まっている。スカあり哀愁もあればユーモラスな曲もありと、粒ぞろいとはまさにこのことかというそれぞれが良質な曲で、また"アルバム"というドラマの中でも1曲も外せない内容になっていて、バンドの充実感を味わえる内容だ。結婚、出産、コロナ禍での活動、メンバーの卒業とジェットコースターのようにめまぐるしい出来事が続いたが、あやぺたは"起こること全部楽しもうと思ってる"と言う。その痛快さが、高鳴る。
-ニュー・アルバム『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』は前作『DREAMS NEVER END』から3年9ヶ月ぶりのフル・アルバムになりますが、この間はDizzy Sunfistにとっては激動とも言える時間でしたね。
激動でしたね(笑)。約4年という時間ですけど、もう1年くらいのことにしか感じられないので、ビビりますね。4年って早っ! っていう。
-コロナ禍となったこともバンドにとっては大きかったでしょうし、何よりあやぺたさん自身も母になるという変化がありましたしね。
はい(笑)。
-そして、今年7月にいやま(Ba/Vo)さんが10月のツアーを最後に卒業することが発表されました。急だったこともあって驚きましたが、どのような感じで話が出たのでしょうか。
5月にシングル『ANDY』を出して、そのツアー[Dizzy Sunfist Looking for "ANDY" Tour 2021]を回っているときですね。いやまから、ちょっと気持ち的にしんどくなってきたというか、自分の人生を考えたときにこのままDizzy Sunfistとしてやっていくのかわからなくなってきた、という話があったんです。
-そこはコロナの影響、思う活動ができない影響もあったんでしょうかね。
産休でツアーが延期になって、2020年の4月に活動再開を予定していたんですけど、今度はコロナで活動ができなくなったというか。そこでダメージを食らったんやと思いますね。活動がなくなれば収入もなくなるし、やっぱり金銭的にも不安になってくるじゃないですか。そこでたぶん、自分の人生を──人生1回しかないものだし、そこでバンドが自分に必要なのか必要じゃないのかというところで、今の結果に至ったんやと思いますね。3人で話し合いもしたし、マネージャーや社長を入れて何回も話し合いをした結果、抜けると決まって。それで今回のアルバム・ツアーを終えてから抜けるのかというのも話したんですけど。でもバンドとしては、大事なアルバムのツアーで、このあと抜けると決まっているメンバーと来年まで続いていくツアーを一緒に回るというメンタルがなくて。それやったらサポートなり、機会がある人や未来のある人と一緒にツアーを回りたいなと思ったので、10月の東名阪ツアー"【Happy Graduation to IYM!!!】Tour"を卒業ツアーにしようかとなりました。
-バンドは止まらずに走り続けるというのは大前提としてあったということですね。
そうですね。止まる気はまったくなかったです。もしmoAiがやめると言っても続けようと思っていたくらいで。
-そういうバンドの流れもそうですけど、世の中的にもコロナ禍で停滞感があるとか、多くのバンドがツアーができない、ライヴハウスにもなかなかいけないという状況のなか、めちゃくちゃ力のあるアルバムができたなと感じていて。ポジティヴなDizzy Sunfistが貫かれているのが何より良かったし、安心したんですよね。
ありがとうございます(笑)。
-アルバムの制作へというのはどんなふうに向かっていったんですか。
今回も難産やったというか。曲は結構できたんですけど、どの曲がいいのか自分であまりわからなくなってきて。ずっとライヴにも行っていなかったし、感覚も鈍っていて、曲を第三者の耳で聴くということができなくなってきていたんです。どの曲がライヴで映えるかとか、いい曲になるんやろうっていうのがすごく難しかったです。でもみんなで相談しながら、何曲もボツにしたうえでのこの生き残った12曲で。こんなにボツにしたの初めてなくらいでしたね。
-ライヴがないことは、曲への感度にも影響があるんですね。
ライヴをやってないし、対バンも観れてないし、ほかのバンドのライヴも観に行けてないし。そういう感覚がすごく鈍っていたというか。やっぱり自分にとって、ライヴをすることはもちろんですけど、ライヴを観ることもすごく大事だったんだなと。
-その、どういう曲がいいかわからなくなっていたところで、突破口になった曲の存在はありますか。
今年6月にデジタルで緊急リリースした「Never Again」ですね。こういう曲ってこれまでDizzy Sunfistにはなかったんですよ。明るくてツービートの曲じゃなくてもいけるんやっていうのがありました。
-「Never Again」は現状を憂いたり、たくさんの情報に惑わされたり、一歩を踏み出せない不安があることを汲みながらも、自分の心の声を聞こう、今が変わるときだと力強く呼び掛ける曲ですね。今回のアルバムの歌詞は、よりリアリティがあって力強いものが揃いましたが、歌詞については難産というのはなかったんですか。
歌詞は1枚を通してわりとサクサクと書けていたんです。普段からスマホのメモ帳にも、ストックを溜めていたので、思っていることがすぐに出てきて。最終的には、考えすぎんと気楽にいこうぜみたいな感じなので(笑)。ほんまそのままっていう感じで。
-活動がうまいこと進んでいかない時期っていうのもあったと思いますが、そのあやぺたさんのメモに残る言葉などでどういうものが多かったんでしょう。
うーん......でもネガティヴなことを書いていても、結局歌詞になるとポジティヴなんですよね。あまりネガティヴすぎる歌は作りたくないので。最終的には、自分で聴いていて、自分で歌っていてもテンションが上がる意味にはしたいなと思っているんです。あとはバンド的にもポジティヴなイメージがあるじゃないですか。そこは変えたくないんですよね。
-1曲目の「The Proof」から、変わらずバンドが前進していくことが軽やかに描かれていて、説得力がありました。曲作りは大変だったということですが、アルバムを通しても曲の構成や聴かせ方、曲の成長というのを感じますよ。
そこはもう3枚目なので、1枚目、2枚目でしたことはできるだけしたくないなっていうのがあって。新しいこと、新しいことと探していって、研ぎ澄まされた感はありますね。
-新しいことをという意識が強かったからこそ、作ってもなかなかしっくりこなかったんでしょうね。
それもありましたね。この曲、前の曲にめっちゃ似てるやんとか。そういうのは今まではそんなになかったんですけど、やっぱり3枚目ともなると段々と出てくるんですよね。
-ライヴ・バンドとしてのリアリティが込められたのが、「Our House」。いつものライヴハウスを取り戻そう、自由を取り戻そうと歌う曲は、作らねばならなかったという思いもありますか。
作らなきゃっていうよりも、歌いたかったんですよね。こういうことを大声で。"こうしたいんだ!"っていうのは、ちゃんと大きな声で言っていかないとわからないなと思ったんです。「Our House」はすぐに歌詞が書けました。
-いろんなことを乗り越えていくパワーをダイナミックに伝える曲の中で「Little More」などは、母親になったからこそできた曲という感じですね。
そうですね。それで書けた歌詞ですね。子どもとは一番ずっと一緒にいるので。伝えたいことはたくさんあります。
-無条件に愛を注ぐ存在、何があっても守りたいものができたというのは、初めてできたという感覚ですか。
今までになかった感情でしたね、やっぱり。
-母になったことは、ソングライティングに影響してますか。
影響するし、時間も限られてくるんですよね。今まで1日のうちでいつでも書こうと思えば書けたけど、どうしてもそういうわけにもいかなくて。でも逆に集中する時間ができましたね。今まではダラダラやっていることが多かったですけど、今はこの時間は集中してやると決めてやっているぶん、効率がいいというか。今まで何してたんやろうって思いましたけどね、こんなに時間あったのにって(笑)。
-そこは実際にその状況にならないとなかなかわからないものですよね(笑)。特にバンド、パンク・バンドでは母になってバンドを続けていくといういわばロール・モデルとなるような人があまりいないじゃないですか。
近いところでいうとマキシマム ザ ホルモンのナヲ(ドラムと女声と姉)さんですかね。やっていて思うんですけど、おかんやりながらバンドやるのめっちゃ大変ですよ。めちゃくちゃ大変です(笑)。Dizzy Sunfistの場合、ツアーの本数も他のバンドより多いし。
-そうですね、今回のツアー([Dizzy Sunfist "Welcome to DIZZYLAND" TOUR 2021-22])のスケジュールを見て驚いたんですよね、以前と変わらないくらい回るんだって思って。
ほんまに周りの助けがないと、大変です。でもアルバムを出して、ツアー回れへんとか意味わからないじゃないですか(笑)。
-大変さはファンもわかってくれると思いますけどね(笑)。
いや、やりたいことなので。やりたいことなので、別に苦にもならないし。
-そういうことで、若いバンド、女性の場合は特に出産などのタイミングで活動をやめてしまったり、諦めてしまったりする方もいると思うんです。そこであやぺたさんが先駆者としてバリバリ活動していく姿は希望にもなるんじゃないでしょうかね。
そうなれればいいですけどね。駆け出しの頃、ライヴハウスの店長に、"女はどうせ結婚してバンドやめるから"みたいなことを言われたんです。すごく印象に残っていたし、ムカついて。今、"ざまぁ!"と思ってます(笑)。