DISC REVIEW
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アルバムとしては3年ぶり9枚目となる『TYCOON』。映画主題歌なども含む全18曲78分59秒、どの曲も心ゆくまでアイディアを詰め込んだフル・ボリュームの内容だ。巨頭といった意味合いのタイトルからも、6人にとって満足度が高い作品だということがわかる。ジャンルをボーダレスに行き交い、様々なエッセンスを呑み込んでカテゴライズ不能のUVERworldサウンドが完成し、洗練された作品だ。そのプログレッシヴなサウンドに、思いの丈や感情がドキュメント的に綴られた歌詞が、メロディアスにも字余りにも載せられる。夢を掴むとか、ベタな言葉のぶつけ方にしても、クールぶらず、1ミリも言葉の体温を下げることのない不敵さだ。情報過多な塊とならず、絶妙な計算がさえた耳心地のよさがあるのは肝。「PRAYING RUN」(Track.8)では、そんな制作のカオスや何かを掴んでいく過程までも歌にしてしまっている。このある種の傍若無人さも、バンドとしての自信があるゆえだろう。 吉羽 さおり