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LIVE REPORT

"山人音楽祭2018" -DAY1-

2018.09.22 @ヤマダグリーンドーム前橋

Writer 林 なな

赤城ステージ:BRAHMAN

オーディエンスが天へと掲げた掌がゆっくりと下ろされることとなったのは、ライヴが「今夜」で始まったからだ。中盤には、細美武士がTOSHI-LOWの隣に歩みを進めた。続いて、抱擁するふたりの横で始まったのは「ナミノウタゲ」。オンステージしたのは茂木である。"しっかり掴まれよ"と差し出されたTOSHI-LOWの手に、茂木がガッチリと返すと、歓声と拍手が巻き起こる。すかさず、"海の歌を一緒に歌ったのは、海のねぇ県出身。雨が山に降って川に流れて、それが海に流れる。あの街へ、「山人音楽祭」から傷ついた街へ。さぁ、BRAHMAN始めます!"とTOSHI-LOW。そして、そのまま「賽の河原」へとなだれ込む。「怒涛の彼方」で現れたのは、先ほどステージを終えたばかりのHEY-SMITHのイイカワケン、かなす、満の3人。TOSHI-LOWが"せっかく来たんだからもう1曲! ハジけてマザっていけよ!"と叫び、「BEYOND THE MOUNTAIN」もヘイスミ(HEY-SMITH)ホーン隊と共にドロップ。「警醒」でステージからオーディエンスの頭上へと羽ばたいたTOSHI-LOWは、"西日本は水に浸かっちまって、北海道はあんなに揺れちまって。自分の故郷になんかあったときは誰がやるんだ、その誰かになんのは誰なんだ"、そう言うと「鼎の問」を投げ掛けた。"断ったのさ、今年は"。曲を終え、はにかみながらTOSHI-LOWはそう言う。でも、"茂木の熱意に折れた"と。そして"G-FREAK、来年はニューアコ(「New Acoustic Camp」)に来い。一緒に酒を飲みながら、きれいなお月様を見て、去年は大変だったなって言おう"とも。そのあとの「満月の夕」を、4人はすごく優しい音で奏でる。ラスト「真善美」のイントロが始まっても、しばらくの間、フロアからステージをまっすぐ見つめていたTOSHI-LOW。その後ろ姿に、ほんのちょっとだけ泣きそうになった。


榛名ステージ:OVER ARM THROW

1発目は「The dancing rain」。菊池信也(Vo/Gt)の超絶的ギター・サウンドと歌を真ん中に突き通したロックが巻き起こす渦は、いつも強くて大きい。「Lamplight」、「Dessert Window」で泣かせにかかるメロディのおかげか、そのあとの「Spiral」で押し寄せるクラウドサーフの波。曲を終えてピース・サインを掲げた鈴野洋平(Ba/Cho)は、"ひろあき、としゆき、のぶゆき、ひろゆき! 一番韻を踏んでるG-FREAK FACTORY、今日は呼んでくれてありがとう!"と爆笑の渦へと誘う。"俺たちを知らない人! ここに入ったんだったら、一緒に遊びませんか。俺たち遊び方とか決めてないから、自由にしていってください"。そう言って「Dreaming of you」に突入した。が、セットリストを間違えて仕切り直し(鈴野いわく、"バンドを15年やり続けていると、曲を間違えてもカッコつけることを諦めることが多い"らしい)。ここから、バンドとフロアの滾りようが凄まじかった。「Dear my songs」でみんなが放つ大合唱と、突き上げられる拳、泣きながら飛んでいくダイバー。最初からラストの「All right, all wrong」まで、ものすごいスピードで目まぐるしく変わっていく光景が、ただただ愛おしかった。


榛名ステージ:打首獄門同好会

OVER ARM THROWから打首獄門同好会という榛名ステージのタイムテーブル。予想はしていたが、場内が異様な熱気を放っている。やがてメンバーが登場し始まったのは「デリシャスティック」。フロアでは無数のうまい棒が掲げられる。Junko(Ba)と河本あす香(Dr)の生み落とすゴリゴリのグルーヴの上に乗った、会長こと大澤敦史(Gt/Vo)の歌が耳を劈く。うまい棒の歌が終わったかと思えば、「島国DNA」ではマグロが宙を舞い、続く「ニクタベイコウ!」で今度は肉が宙を舞う。ここまで食べものの曲オンリー。しかも中身は圧巻なまでにエンターテイメントに溢れているもので、一気に会場を自分たちの世界観へと引き込んでいく。"相変わらずこの儀式の会場は暑く、空気が薄い"と会長が言う。たしかに目の前のオーディエンスたちから湯気でも出てきそうなほどに暑くなっている。「はたらきたくない」で嘆きまくる会長。女性陣による合いの手がこれまた癖のあるアクセントとなっていて、中毒性の高いサウンドだ。ラストは、もちろん「日本の米は世界一」でフィニッシュ! 濃厚すぎる30分間にクラクラした。


赤城ステージ:MONOEYES

細美武士(Vo/Gt)が"よっしゃー、行こうかー!"と叫び、「My Instant Song」でライヴスタート。曲に合わせぴょんぴょんジャンプする戸高賢史(Gt)とScott Murphy(Ba/Cho)、そしてフロアを視界に捉えた細美は、満悦そうな表情を浮かべる。「Run Run」、「Like We've Never Lost」を畳み掛けると、細美はビール片手に喋り出した。"今、日本中が大変だけど、順番でつらいことは巡ってきます。だから、楽しめるときは、順番こで楽しまなきゃいけない"と。その言葉のおかげか、より一層、いや十層くらい、汗と笑顔まみれでめちゃくちゃ楽しそうなフロアとステージが目の前に広がる。「Two Little Fishes」中盤、バックステージのカーテンから現れたのは大きなダルマを持ったTOSHI-LOW! ふたりが向き合って見つめ合いながら歌う姿もなんだかおかしいが、この曲はきっとこれが完成形だ。"「山人」(「山人音楽祭」)初めて来たけど、すごいあったかいねぇ。これは群馬の人の気質なのかな?"(細美)と、この最高の褒め言葉を受けてからの「When I Was a King」の盛り上がりようと言ったら! オーラス「グラニート」で、"ちょっとはストレス発散できた? 明日からまたそれぞれの持ち場で頑張っていきましょう"と細美はフロアへ言う。どうして私たちが生まれた世界はずっとこうじゃないのかと、寂しい気持ちになった。でも、重たい扉を開けた先にあるクソったれの現実の世界と闘えるのは、こんなにも素晴らしい時間が待っているから。この人たちがバンドを続けてくれるかぎり、きっと当分私たちの世界は大丈夫だ。


赤城ステージ:G-FREAK FACTORY

MONOEYESからバトンを受け取ったのは、言うまでもない。G-FREAK FACTORYだ。静かに吉橋 "yossy" 伸之(Ba)が音を鳴らす。「Too oLD To KNoW」だ。中盤でフロアへと降り立った茂木に当たるひと筋の光。茂木は呟く。"大成功まであと少し"と。それぞれが弾き出す強き音が「SOMATO」、「FOUNDATION」で会場いっぱいに響いたかと思えば、次の「カモメトサカナ」で壮麗なサウンドスケープをなぞっていく。そして「ダディ・ダーリン」の中盤にはTOSHI-LOWが登場し、茂木とふたりで歌い合い、しっかりと抱擁を交わす。"ありがとう"という言葉を合図に「らしくあれと」を終え、静かに会場は暗くなった。

アンコールを求める声、そしてだんだんと点いていく白い光。光の正体はオーディエンスの掲げた携帯のライトなのだけれど、数が増えていくとそれはもう明るくて明るくて。再び戻ってきたメンバーはその光景に目を見張る。"照明さん、明かり点けないで。このままで行こうや"と茂木。そうして始まった「EVEN」がすごく良かった。G-FREAK FACTORYは、とことん熱意を持って音楽を、ライヴを、"山人音楽祭"を作り上げる人たちだ。事実、彼らは一生懸命に歌い、一生懸命に音を奏でていた。一生懸命に、なんて言葉は軽く聞こえてしまうかもしれないが、いつだってG-FREAK FACTORYは自分たちの命を燃やして私たちに問い掛けてくれる。だからだろうか、ステージから聞こえてくる音は、なんだか祈りのように聴こえた。残るは1日――愛おしき今日をしっかりと両手で抱えて、明日を迎えに行くだけだ。