COLUMN
NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第47回
巨星墜つ。
2025年7月22日、オジー・オズボーンが亡くなった。
イギリスにて自身の引退ライヴを盛大に行った僅か17日後のことだった。
読者の諸君もBLACK SABBATHというバンド名は聞いたことがあるだろうし、オジーの見た目を思い浮かべることもできるだろう。
しかし何故彼が「ヘヴィ・メタルの帝王」と呼ばれるに至ったのかを知る者は少ないのではないだろうか。
今回はそのあたりを自分なりに綴りたいと思う。
Master Of Reality / BLACK SABBATH
1960年代後半、ロックから派生したハード・ロックがムーヴメントを起こしつつあった。
初期のLED ZEPPELINやDEEP PURPLE等が自身のルーツを自分達なりにハードに昇華していく中、BLACK SABBATHは「より悍ましく、よりダークに、よりヘヴィに」をアイデンティティとしたようなサウンドで1970年2月、13日の金曜日に「Black Sabbath」でデビュー。
当時クラシック等でその不協和音から「悪魔の音程」として禁忌とされていたトライトーンと呼ばれるコードを全面に押し出し、ヘヴィなギター・リフや地を這うようなベース、黒魔術的な内容の歌詞、何より従来のロックヴォーカリストとは一線を画すオジーの特殊な歌声が相まって、当時の若者達に多大なる衝撃を与えた。
この頃のBLACK SABBATHの勢いは凄まじく、同年リリースの「Paranoid」は世界的なヒットを記録。翌年リリースの「Master Of Reality」は予約の段階でゴールドディスクを獲得という異例の事態に。
個人的にこの「Master Of Reality」が初期BLACK SABBATHの到達点ではないかと思っている。おどろおどろしさはそのままに、よりヘヴィで尚且つポップに昇華させた傑作である。もちろん音楽のジャンルで言うと所謂「ヘヴィ・メタル」サウンドではない。なら何故「ヘヴィ・メタルの帝王」と呼ばれるのか?
それは彼等の影響を受けたアーティスト達が「ヘヴィ・メタル」を形成したからに他ならない。
70年代後半のN.W.O.B.H.M.(New Wave Of British Heavy Metal)ムーヴメントを起こしたIRON MAIDEN、DEF LEPPARD等がヘヴィ・メタルの様式美を作り上げた。そこからMETALLICAやSLAYER等が速く激しいスラッシュ・メタルを切り開き、逆に遅く重いドゥーム・メタル、より悪魔的なブラック・メタル等様々な派生メタルが生まれていった。
BLACK SABBATHを離れたオジーはソロでも成功を収め、ランディ・ローズやジェイク・E・リー、ザック・ワイルド等ギター・ヒーローを次々と発掘。
更には1996年から主催フェス「オズフェスト」を開催。ヘヴィ・メタルが下火となった時代でも後進等と共にその灯を守り続けた。
当のオジー本人は自身のことをヘヴィ・メタルだとは一度も認めておらず、あくまでロック・ミュージシャンだと常々明言していた。
だがしかし、彼がヘヴィ・メタルの源流を作り、育み、繋いだ事実は間違いないのだ。
故に「ヘヴィ・メタルの帝王」と慕われ、引退ライヴにはMETALLICA、SLAYER、ANTHRAX、GUNS N' ROSES、PANTERA、AEROSMITHのスティーヴン・タイラー等、レジェンド達が集まった。
そして今、彼の死を世界中が哀悼している。
これまでオジーの音楽に触れたことが無かったとしても、あなたの好きな激ロックの音楽には少なからずオジーの血が流れていることをどうか忘れないで欲しい。
R.I.P. Ozzy Osbourne
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