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INTERVIEW

打首獄門同好会

2017.01.25UPDATE

2017年01月号掲載

打首獄門同好会

Member:大澤 敦史(Gt/Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

「日本の米は世界一」(2015年発表のミニ・アルバム『まだまだ新米』収録)で文字どおり日本の米、米愛について歌い、2016年8月にはシングル『島国DNA』をリリースし、重厚なメタリック・サウンドに乗せ魚好きな日本の食文化を歌にした打首獄門同好会。最新作『やんごとなき世界』では、食にまつわる曲からふとした独り言、日常のあるあるまでが極上のメタル・サウンドやシンガロング・チューンへと昇華されていく。3ピースで力づくで納得させるエネルギーと、滲み出る笑いや悲哀、そして圧倒的パワーが呼ぶ感動すらもある。この、やんごとなきパワーの源はなんなのか。

-今回の『やんごとなき世界』では作品として何かテーマは掲げていたんですか。

1枚に込められた主だったテーマは特にないんです。相変わらずという感じで。この中で一番古いのは、8月に出したシングルの「島国DNA」(Track.4)とカップリングで収録した「Natto Never Dies」(Track.5)で、「Natto Never Dies」はアレンジを変えてます。あとの曲は、自分の中で起こったことが次々曲になっていった感じですね。お菓子を食べたり虫歯になったりとか。

-そして「歯痛くて feat.Dr.COYASS」(Track.3)ができたと。

これは実話です。2016年の前半に、歯にいつの間にか穴が開いてしまいまして。詰め物でも取れたかなと思って歯医者に行ったら、虫歯だよと。おまけにこっちとこっちにも虫歯があるよって話になってできたのが、この曲です。

-この曲は打首初のフィーチャリング曲で、ラッパーのCOYASS氏(ex-デブパレード)が参加していますね。

ラップをやってもらったのは、実はそのときの主治医なんです(笑)。この主治医がもともとラッパーとしてメジャーでCDも出している人で。知り合ったのも、音楽を通してだったんですよ。虫歯になったとき、前に治療したばかりのところが虫歯になったから、違う歯医者を探したいなと思っていたら、知り合いにひとりいたなと。それで診てもらいに行ったら、そういう状況だったので"じゃあ、曲にしますわ"、"それなら俺、ラップやるわ"っていう。治療されながら決まった歌ですね。

-そのときは、どんなサウンドにするかも浮かんでいたんですか。

ラッパーと一緒にやるという時点でイメージしたのは、ラウドロックにラップが入るといえば、往年のミクスチャーだろうと。でも曲を作っていくうちに、ただのミクスチャーじゃ物足りないなといろいろといじくりまわした挙句、わけのわからない曲になったのがこれです。

-途中には、"いま歯痛くて いま歯痛くて"とまるでJ-POPのラヴ・ソング的なフレーズも入ってますね。

ラヴの要素は一切ないんですけどね(笑)。"会いたくて"みたいに歌わないで、っていういいツッコミが入ってますしね。だいたいそういう感じで、普通の形から、前後がおかしな方向に逸れていくというのが実際のところなんです。

-何かひねりがないと面白くないんですね。

天邪鬼だから、普通にまとまるとそれはそれで嫌なんですよね。俺が飽きるみたいな。ちょっと捻くれたところが好きなんです。リズムがコロコロ切り替わったり、ノリがコロコロ切り替わったりするのがもともと好きで。そこは、歌詞と連動してもしなくても、展開が読めない方がいいんですよね。

-アルバムの幕開けを飾る「やんごとなき世界へ」(Track.1)はラテン調の曲ですね。

これは成り行きでサンバをやっただけなんです(笑)。フレーズ先行型というのがたまにありまして。"やんごとなきなき なっきなきー"とただ言いたかっただけなんですよ。ところが、そこから3分、4分の曲に広がらなくて、"やんごとないこと、なんかない?"、"やんごとないことはないな"、"ですよね"って。でもどうしても言いたいから、ワンフレーズもののショート・ナンバーでオープニングにしよう、じゃあアレンジはどうしようかという話になったときに、俺とドラム(河本あす香)が以前から"サンバやりたいね"と言っていたので、バッキングはサンバにしようと。だから、いたずらみたいなものなんですよ。

-その、"やんごとなき"というフレーズはなんだったんですかね。

なんだったか覚えてないんですよね(笑)。きっと言っていて気持ち良かったんでしょうね。

-(笑)そして「きのこたけのこ戦争」(Track.2)。重厚なメタルコア・サウンドとなってますが、歌われているのは某お菓子のことですね。

これはテーマとして魅力的だったんですよ。1970年代から続く日本最大の内戦として知られるやつで(笑)。我々は普段、そんなにデストロイなテーマは曲に入ってこないんですけど。これは戦争だということで、久しぶりにデス声を使ってます。最近自分の中で、"ウォーウォー"言いたい願望があるんです。ライヴ・バンドとしていろいろなバンドと対バンしていくと、フロアが"ウォー"っていうので一体化するわけですよね。"ウォー"だから盛り上がるみたいな。「島国DNA」のイントロにもちょっと入ってるんですけどね──それは"ウォー"じゃなくて"魚(うお)"ですが。で、サビでもっと"ウォーウォー"いきたいなと思ったら"WAR"、戦争だと思って(笑)。"きのこたけのこ WAR"ってフレーズが出てきたときに、これならいけるなと。

-これまでそういうシンガロングや一体感を生み出すような曲とか、ワードって意識してなかったんですか。

「日本の米は世界一」という曲で、米と書いて"マイ"とか、食と書いて"ショック"と歌うパートを作ったら、まぁフロアが盛り上がる、盛り上がる。

-これは、いいぞと?

そのころから、ライヴ・バンドとしてもお客さんが増えてきて。お客さんが一緒に歌いたいという姿勢を出してくれるようになって、こちらから提示したくなってきたんですよね。"じゃあ、こんなのどう?"って。その"こんなのどう?"がわりと好評だったんですよ。サビを一緒に歌うのは、やっぱり歌詞を覚えているのが前提になってくると思うんです。でも、初見でも歌えてしまう曲を持ってるバンドはいるじゃないですか。シンプルな歌詞を繰り返すとか。それで究極、"ウォー"かなと思って、願望を満たした感じですね。