INTERVIEW
打首獄門同好会
2017.01.25UPDATE
2017年01月号掲載
Member:大澤 敦史(Gt/Vo)
Interviewer:吉羽 さおり
-アルバム前半3曲だけでも、かなり濃厚でお腹いっぱいになりますね。そこからさらに「島国DNA」で魚をおいしくいただいて、という流れになりますが。「日本の米は世界一」で米が来て、今度は魚が来てとフルコースでいけそうですね。
ファンのみなさんは、次は肉か野菜かと思っていたら、いつの間にか虫歯になっていた(「歯痛くて feat.Dr.COYASS」)という感じですけどね(笑)。説得力はあると言われましたけど。
-(笑)シングル『島国DNA』のカップリングだった、「Natto Never Dies」が今作では"Strings Edition"としてリアレンジされました。アレンジとしてストリングスを導入したのはなぜですか?
もともとメタルっ子だったので、こういうアレンジはところどころで使われていたし、聴いていたんです。うちは3ピースで、ライヴで再現できるサウンドを10年以上こだわってきたんですけど、今回シングル2曲をそのまま入れるのもあれかなっていうのもあって。そろそろ新しいことをやってみたいなっていうのと、幸いにも予算的にOKが出たので、知り合いのヴァイオリニストにお願いしたんです。イメージではフワーッと後ろで鳴ってるような、きれいなストリングスを入れてほしいなと思っていたら、依頼した人がわりと濃い人で、その人も捻くれているんですね。だからそれじゃつまらないと、かなりエグいストリングスを入れてくれて。
-ギター並みに入っていますよね。
ギター・ソロにハモってきたっていう。でも、聴き応えのあるものになったなと思います。打首を愛してくれてる人で、"普通じゃつまらないでしょ?"と、面白いものを入れてくれたんです。
-新しくストリングスを入れたり、ゲストでラッパーを入れたりと、今回はそれが可能だったのはなんなんでしょう?
歯医者に関してはそこにラッパーがいたというのが大きいので、偶然なところはあるんですけど。あとはやっぱり、ありがたいことにバンドが少しずつ階段を上っていくことで、予算というものがクリアできるようになりました(笑)。これまでは良くも悪くも縛りみたいなものがあったのが、今はやりたいなと思ったことができるようになってきたんです。サンバ然り、ストリングス然り、それならやった方が面白いなっていうので入れました。
日常を歌って、その中に結果的に哀愁があったということは、日常ってそういうものかもしれないですね
-「もつ鍋が呼んでいる」(Track.7)はこれまでと雰囲気が違う、ポスト・ロック風な雰囲気で面白いなと思いました。
アレンジ面で、ギタリスト的に一番気に入ってるのがこの曲ですね。アルバムにひとつくらい、こういうプレイヤー側の好き勝手を出す曲があるんです。あまりシングルや推し曲でそれをやると、ライヴでノりづらかったり、キャッチーさが欠けてしまったりするので、アルバムにひっそり入れる枠で。といってもそんなにエグいことはしてないんですけど。この曲は"サラリーマン"というテーマがあるので、歌に哀愁を込めようぜというイメージはありました。
-そうですね。サウンド面や楽器のアンサンブル部分はおしゃれな感じがしますが、歌は演歌的な、やるせなさたっぷりです。
哀愁、エモ系で。どっちかっていうと、新橋とかのああいう風景が背景にあるようなイメージで作った歌なので、歌的にも昭和を意識していこうぜっていう感じでしたね。もつ鍋が好きだっていうところから、もつ鍋自体を歌うのか、もつ鍋とは人にとって何なのかを歌うのかで悩んでいたら、いつの間にかサラリーマン応援歌みたいになっていたんですよ。もつ鍋食べたいなと思う心情が、なんとなくエモかったのかなと。
-今回はアルバム全体にも、どことなく悲哀というか、哀愁感が乗ってる気がします。
哀愁はありますね。なんでしょうかねぇ。言われてみれば、ちょこちょこと変な哀愁がありますね。日常を歌って、その中に結果的に哀愁があったということは、日常ってそういうものかもしれないですね──ってなんだ、このまとめ(笑)。
-打首では、日常のことがなんでもネタになっていきますよね。いろんなバンドがいて、それぞれなんとか心の内を歌にしようとしていると思うんですけど。それとはまた違った視点で、こんなことも、あんなことも曲になっていく。
よく作曲で"降りてくるのを待つ"みたいなのがあるじゃないですか。メロディやコードが降りてくるのを待つっていうのはわかるんですけど、俺の場合はテーマが降りてくるという感じで、それを自然体で受け入れる構えっていうか。自然な流れで、虫歯になったから曲ができたとか。"生活密着型ラウドロック"と言ってますけど、生活をやめない限りは歌が尽きないだろうと、楽観視してますね。
-曲としてもいろんなタイプのサウンドが出てきますが、今はこれが面白いとか、自分の中でこれはきてるというのはありますか。
ライヴ・バンドとして活動していると、"こういうアレンジするとフロアが楽しい"とかが、実体験としてあって。よそのバンドを見て、"ああいうアプローチいいな"とか。だから今は、誰か有名なバンドから影響を受けるというよりも、ライヴハウスで対バンしてるバンドから影響を受けることが大きいかもしれないですね。ライヴ・バンドとして活動してるからこういうフレーズができた、こういう曲ができたっていうのは、年々増えていると思います。
-ちゃんと相手が見えてきたということですかね。自分の面白さを追求するのももちろんですが、いかにしてそれを面白いと思ってもらえるか。
バンドは誰しも、フロアに観客が5、6人しかいないという時代を経ていると思うんですけど。そのときはぶつけるしかないんですよね。それが、だんだんとフロアの力が強くなってきて、お前らがそうくるのかっていう掛け合いや駆け引きが生まれて。じゃあ、面白いことを考えてきたから一緒にやろうぜっていう提案を曲に盛り込めるようになったんです。今回も実際にライヴでやってみたら、どうなるかなっていうのはある。CDを出して、それをみんなが聴いて、ライヴに来てもらって、初めてその答えがわかるんですよ。CDのリリースが年に1回だったら、年に1回、そういう実験や遊びができるというか。それは、昔とは違うことができるようになったなということですね。