LIVE REPORT
"JACK IN THE BOX 2021"
2021.12.27 @日本武道館
Writer オザキケイト Photo by 河本悠貴、西槇太一、Hiroshi Tsuchida
MAVERICK DC GROUPを語るうえで欠かせない原点こそ44MAGNUMである。さらにこの日はPaul(Vo)、Jimmy(Gt)、Joe(Dr)という往年のメンバーに加え、MAVERICK DC GROUPの代表でもあるjackがベーシストを務めるスペシャルな陣容。「Flying Theme」(映画"E.T"のテーマ曲)に合わせてステージインするやいなや、Paulの愛息であるStevie(Vo)が"忘年会始めようか!"と叫び、「I'm On Fire」からライヴをスタートさせると武道館にロックの風が吹き荒れる。この迸るロックの熱さはPaulが呼び込んだゲスト・ギタリスト、高崎 晃(LOUDNESS)の登場でさらに急上昇。挨拶と言わんばかりにとびきりの爆音でギターを掻き鳴らせば、「Street Rock'n Roller」でJimmyとギター・バトルを繰り広げる。80年代のヘヴィ・メタル・ブームを牽引した44MAGNUMとLOUDNESSの夢の競演にオーディエンスは大興奮だ。そしてこの日のラスト・ナンバーでもあった「No Standing Still」でも、速弾きの応酬をこれでもかと喰らわせると、最後は高崎とJimmyが手を繋いでステージを去ったのも微笑ましいシーンであった。
イベントも終盤戦に差し掛かり、満を持して登場したのは新体制となったMUCC。無音の日本武道館にゆっくりと現れる逹瑯、ミヤ、YUKKE(Ba)はもはや貫禄充分だ。そんな静寂を切り裂くように「惡 -JUSTICE-」、「KILLEЯ」といったラウドなナンバーを立て続けにお見舞いし、さらに新体制になってからの初めての楽曲でもある「GONER」で会場のボルテージを上げたら、さぁ場は整った。逹瑯がGRANRODEOのふたりを呼び込みMUCC feat.GRANRODEOのスタートだ。"名前だけでも覚えて帰ってください"とKISHOW(Vo)が謙遜すれば、"今日しか見れないからよろしくね!"と逹瑯が叫び、「ニルヴァーナ」をコラボレーション。何を隠そうこの曲はGRANRODEOがMUCCのトリビュート・アルバムに参加したときにカバーした楽曲なのだ。演奏後に逹瑯も"めっちゃ良くない!?"とご満悦の様子。しかし、このコラボレーションはこれだけでは終わらない。過去にMUCCもGRANRODEOのトリビュート・アルバムに参加したことがあり、そのときにカバーした「メズマライズ」もプレイ。仲睦まじく演奏する姿にはお互いがこれまでに積み上げた関係値を感じることができた。そして、最後にはおなじみである「蘭鋳」で武道館に死刑を宣告するとともに、MAVERICK DC GROUPの未来に思いを馳せて去っていった。
フロントマンであるkyoの肺に腫瘍が見つかり、治療に専念するとの報せを受けたのが昨年の9月。D'ERLANGERはそんななかでもこのイベントへの出演を決断し、絶対的な存在であるkyoに代わり、この日は逹瑯とHYDE(L'Arc~en~Ciel)がヴォーカルを務めることとなった。雷鳴轟く武道館にCIPHER(Gt)、SEELA(Ba)、Tetsu(Dr)が登場すると、逹瑯のステージインを待ち、「CRAZY4YOU」をプレイ。kyoへのリスペクトを込め"Come on! CIPHER!!"と叫ぶ逹瑯がどこか嬉しそうだったのが印象的だった。続いて呼び込まれたINORAN(LUNA SEA/Gt)は敬愛するCIPHERに跪き握手を求め、HYDEは"こんなにドキドキするのは久しぶりかも。でも、ワクワクします。kyoさんのポジションを温めさせていただきに来ました!"と挨拶。"行くぞ武道館!"とHYDEが吼えるとINORANと向き合ったCIPHERが切れ味鋭いリフを刻み、「SADISTIC EMOTION」を投下する。こちらもこの日しか観ることのできない"JACK IN THE BOX 2021"らしいコラボレーションだ。演奏を終えたHYDEが"きっとkyoさんに届いたと思います"と言い残すと、オーディエンスからは拍手が巻き起こった。
残すところはD'ERLANGERのTetsuがオーガナイズしたMDC 40th Anniversary SUPER ALL STARSのみ。こちらのセッションは"DANGER CRUE、MAVERICKに所属したメンバーで固め、40年の歴史を一気に描き出す"というテーマのもとチームが編成されたという。まず先陣を切ったのは44MAGNUMとD'ERLANGERによる混合チーム。何を隠そうCIPHERとTetsuは44MAGNUMのローディだったため、いわゆる師弟関係なのだ。そんなレジェンド・チームによる「Baby, Come Together」(44MAGNUM)でオーディエンスを熱狂させたかと思えば、続いて登場したREACTIONとNOCTURNAL BLOODLUSTのMAVERICK 新旧メタル混合チームでは、「JOY RIDE」(REACTION)を通じて、MAVERICK DC GROUPの源流であるメタルが、脈々と受け継がれていることを示してくれた。
また、MDC 40th Anniversary SUPER ALL STARSの3番手は、Tetsu直々にこのメンバーでこの曲を聴きたいというリクエストを受けたというMUCCの3人に、SORAを加えたラインナップで「ニルヴァーナ」を披露した。MUCCとは切っても切れない関係性であるDEZERT。中でもSORAは脱退したSATOち(Dr)を慕っていたということもあり、ここでもMAVERICK DC GROUPの絆を感じることができた。続いて武道館のステージに現れたのはShinji、明希(Ba)、ゆうやのシドの楽器隊。療養中のマオに変わりヴォーカリストが招かれることも予想されたが、この日ヴォーカルを担ったのは明希だった。"今日は僕たち3人だけですけど、僕らに託された40周年のセッションのバトンをしっかり次に繋げ
たいと思います"と「Dear Tokyo」を演奏し、シドのバンドとしての底力を感じると同時に、MAVERICK DC GROUPへの愛も感じることができる一幕だった。
場内のスクリーンに映し出されるD'ERLANGERのロゴ。予定ではフィーチャリング・ヴォーカリストを招いての演奏だったはずだが、ステージ中央に立っていたのはハットを被り、スカーフを靡かせた金髪の男。そう、まごうことなきD'ERLANGERのヴォーカリスト、kyoその人だった。まさかの展開にオーディエンスのボルテージは急上昇し、ド派手な特効とともに「LA VIE EN ROSE」へとなだれ込む。妖艶な声とけたたましいシャウトは完全復活と呼ぶに相応しいそれで、本家本元の"Come on! CIPHER!!"に応えるように、日本武道館の中央で両手を広げ、ハウリングのみでギター・ソロを成立させてしまえるCIPHERは、ギタリストとして稀有な存在であることを改めて示した。MAVERICK DC GROUPの40周年を祝う武道館の舞台で、復活の狼煙とも言える姿を見せてくれたD'ERLANGERが、完全復活する日を楽しみに待っていたい。
そんな奇跡を目の当たりにして、逹瑯が"最高だったね!"と感嘆の声を漏らせば、HYDEは"涙が出てきた。喋ったら泣いちゃう"と目の前で起きた想像もしなかった復活劇に目頭を押さえた。そして、この日のラストを飾るセッションが彼らに千秋を加えたトリプル・ヴォーカル、ミヤとShinjiによるツイン・ギター、YUKKEと明希によるツイン・ベース、そしてTetsuとyukihiroによるツイン・ドラムというスペシャル・セッションだ。登場するなりyukihiroとHYDEが握手をしたシーンに会場は一気に沸き立ち、この日のラスト・ナンバーとなる「HONEY」(L'Arc~en~Ciel)へ。まさにMAVERICK DC GROUPという固い絆で結ばれたバンドたちが世代を超え、ひとつになった瞬間だった。そして、最後は出演者を呼び込み記念撮影と、HYDE提案の一本締めをもって6時間半におよぶ宴は大団円を迎えた。
40年という歳月は夫婦で言えば"ルビー婚"に値する年月であり、これは年数を重ねるにつれて夫婦の絆が深く、固くなっていくことに由来すると言われている。これは夫婦以外に長く続いていくものにもあてはまることであり、まさしくこの日のMAVERICK DC GROUPからもルビー婚同様に固い絆で結ばれたシーンや、深い愛情を感じる場面が多々見ることができた。そして、絆がこの先いつまでも続いていくことを心から願っている。
[Setlist]
■Petit Brabancon
1. 刻
2. OBEY
3. 渇き
■NOCTURNAL BLOODLUST
1. Punch me if you can
2. Life is Once
3. REM feat. 宮田大作(a crowd of rebellion) / Kaito(Paledusk)
4. Reviver
■魅音
1. 誓い
2. トリカブト
■逹瑯
1. CRASH MAN
2. New Chaotic Paradise
3. door
4. 赤い糸
■DEZERT
1. 神経と重力
2.「君の子宮を触る」
3.「殺意」 feat.暁(アルルカン) / 来夢(キズ)
4. ミザリィレインボウ
■fuzzy knot
1. こころさがし
2. Joker & Joker
3. Set The Fire !
4. Before Daybreak
■44MAGNUM
1. I'm On Fire
2. The Wild Beast
3. I Just Can't Take Anymore
4. Street Rock'n Roller feat. 高崎 晃
5. No Standing Still feat. 高崎 晃
■MUCC
1. 惡-JUSTICE-
2. KILLEЯ
3. GONER
4. ニルヴァーナ feat. GRANRODEO
5. メズマライズ feat. GRANRODEO
6. 蘭鋳
■D'ERLANGER
1. CRAZY4YOU feat. 逹瑯
2. SADISTIC EMOTION feat. HYDE / INORAN
■MDC 40th Anniversary SUPER ALL STARS
1. Baby, Come Together
Vocal:Paul(44MAGNUM)、Stevie(44MAGNUM)、Guitar:Jimmy(44MAGNUM)、CIPHER(D'ERLANGER)、Bass:jack、Drum:Tetsu(D'ERLANGER)
2. JOY RIDE
Vocal:NAOKI(REACTION)、Guitar:Valtz(NOCTURNAL BLOODLUST)、Bass:YUKI(REACTION)、Drum:Natsu(NOCTURNAL BLOODLUST)
3. ニルヴァーナ
Vocal:逹瑯(MUCC)、Guitar:ミヤ(MUCC)、Bass:YUKKE(MUCC)、Drum:SORA(DEZERT)
4. Dear Tokyo
Guitar&Chorus:Shinji(シド)、Vocal&Bass:明希(シド)、Drum&Chorus:ゆうや(シド)
5. LA VIE EN ROSE
D'ERLANGER[Vocal:kyo / Gitar:CIPHER / Bass:SEELA / Drum:Tetsu]
6. HONEY
Vocal:HYDE(L'Arc~en~Ciel)、Guitar:ミヤ(MUCC)、Shinji(シド)、Bass:明希(シド)、YUKKE(MUCC)、Drum:Tetsu(D'ERLANGER)、yukihiro(L'Arc~en~Ciel)