DISC REVIEW
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コロナ禍での閉塞した環境、時間を使い作詞作曲からアレンジ、楽器演奏やリズム・トラックのプログラミングなどまで自身の手で行い、その内に広がるイマジネーションを音で立体化した前作『Libertine Dreams』に続く、14枚目のソロ・アルバム。今作も前作同様の制作スタイルとなったが、美しく情緒や叙情性に富んだ豊かな小宇宙のようなサウンドスケープを持った前作よりも、今回は攻撃的で"動"の力が強い。研いだ爪を立て、嗅覚鋭く咆哮を上げて道を切り開く、鼓動や温度の高さが迫ってくる。様々な音楽を織り込んだポスト・パンク的な香りがエッジィなサウンドは、自らが濃密に描いた物語にエンジンをかけ、動かしていくイメージだ。2作合わせて現在進行形のINORANの脳内や体感する世界をリアルに味わえる。 吉羽 さおり