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INTERVIEW

キズ

2024.05.13UPDATE

2024年05月号掲載

キズ

Member:来夢(Vo/Gt)

Interviewer:杉江 由紀

鬼が出るか蛇が出るか。キズがこのたび発表する15thシングル「鬼」 は、リアルな観点から生と死について描いた6分超の劇的な楽曲へと仕上がった。国内での活動はもちろん、年始のアジア・ツアーでも今を生き抜く"VISUAL ROCK"のかたちをバンドとして体現してきた彼らが、ここに来て提示するのは核心であり確信でもあるだろう。5月には2本のフェスに参戦したうえで、6月1日には国立代々木競技場 第二体育館での"キズ 単独公演「星を踠く天邪鬼」"も控えている今、キズがヒリつくような緊張感と灼けつくような熱さをもって表現する命と魂を凝縮したこの歌は、彼らにとっての存在証明そのものであるに違いない。

-今年に入ってからのキズは1月にZepp Haneda(TOKYO)で"キズ ASIA TOUR『Bee-autiful World』"を行ったうえ、その直後にはシングル『人間失格』(2024年1月)もリリースされていました。そして、このたびは新たに15thシングル「鬼」が発表されることになりましたが、この作品の制作にはいつごろから着手されていたのでしょうか。

そもそもは、去年の11月19日に大阪で珍しく自分の誕生日ライヴをやったんですけど、それが"キズ 単独公演「鬼」"っていうタイトルだったんですよ。できれば、そのときに新曲として「鬼」を披露したかったなというのはあったんですけどね。そこからちょっと時間はかかっちゃいましたが、今回は新しいシングルとしてこの曲を出すことになりました。まぁ、前からちょいちょい歌詞で無意識的にではあるものの"鬼"という単語は使ってましたしね。「Bee-autiful days」(2023年リリースの13thシングル)の中にも鬼は出て来てたんで、ここにきて意識的にそこをピック・アップしたっていうのはあります。

-来夢さんからすると、改めて"鬼"という言葉にフォーカスを当てたいと思ったきっかけが何かあったのでしょうか。

鬼に追っかけられる夢を見るようになっちゃったんですよ。それも、同じ夢を何度も見るんです。時期的に言うと、あれは"V系って知ってる?(V系って知ってる?powered by MAVERICK DC GROUP)"に出る前くらいからだったかなぁ。

-あの日の来夢さんは、キズでのパフォーマンスとともにhide Respect Sessionでも活躍されていましたよね。

ちょうどその時期と変な夢を見だしたのが同じタイミングでしたからね。"俺、すげぇプレッシャーに襲われてんのかな?"とは思ってたんですよ。しかも、あのイベントではMUCCも一緒で、タイムテーブルがわかったときに、俺の大好きな「9月3日の刻印」で終わるっていうことも聞いてたんです。その曲で終わって次が自分たちの出番だったから、"あの曲で終わって、そこから俺らはどんなライヴをすればいいんやろう!?"って考え出したときにめっちゃ胃が痛くなってきちゃって(苦笑)、まさに鬼が夢に出てくるようになったのは、そのときからでした。

-昨今のタイパをやたらと重視する世相や、短い曲にニーズが集まりがちな音楽業界の流れからいくと、1曲6分とはかなりの長尺です。

俺、天邪鬼なんで(笑)。

-そこも"鬼"なのですね(笑)。ちなみに、この「鬼」を作曲される際にまず手をつけたのはリズム、コード、メロなどの区分で言うと、どこからだったのでしょう。

もともと原形としてあったのは、サビ歌詞の"ごめんね まだ愛してる"っていう部分でした。これは僕がキズのふたつ前にやってたバンドの曲から、2小節ぶんくらいをリサイクルさせてもらってるもので(笑)、というか、その昔作った曲に対しての未練っていうのが自分の中にずっとあったんでしょうね。今の俺が作ったらどのくらいのものを仕上げることができるんだろう? っていうことを、ここで試したかった気持ちもありました。

-その意味でも、来夢さんは「鬼」を作ることで成仏させたいものがあったのですね。なお、その昔に歌っていた"ごめんね まだ愛してる"と、この「鬼」での"ごめんね まだ愛してる"は、それぞれ歌い掛けている対象は一緒ですか? それとも違いますか?

全然違いますね。それ、すごくいい質問だと思います。ほんとに全っ然違うんですよ。わかりやすく言うと、昔は恋愛のことを歌ってひとりの女性に対して歌ってましたけど、今回の「鬼」で歌ってるのはそういうことじゃないです。じゃあ何について歌ってるのか? っていう点に関しては"どこまで言おうかな?"と思うところはあるんですけど。

-「鬼」で歌われていることの核は"生きる"ことについて、であるように感じます。

前の俺はいつ死んでもいいやくらいに思ってたけど、今の自分は"生きてたいな"って考えてたり、こういう詞を書いたり歌ったりするような人間になっちゃったな、ということなんですよね。

-それだけ詞として伝えたいことが明確であったとすると、来夢さんが、より楽曲の持つ伝達能力を高めるために重視されたのはどのようなことでしたか。

この曲に限らず詞は常に重視するので、曲に関しては全部が後回しなんですよね。この「鬼」では、冒頭の"この命もくれてやろう"っていうフレーズが何よりも最初に出てきました。自分としては、いつ死んでもいいくらいに命懸けで音楽をやってるつもりなんですけど、なかなか死なねぇなと思ってて(苦笑)。でも、自分が生きている限りは先輩たちからいただいた憧れだとか、素晴らしい音楽とか、そういうものは全力で自分なりのかたちで残して死にてぇなとずっと考えているので、この曲に対してもそこは全力を出して命削って作ったつもりです。

-では、それだけ純度の高い歌詞をより生かすためのサウンドメイク、という部分についてはどのような取り組みをされていくことになられたのでしょう。

キズの曲は僕が全部書いてるんですが、いつもだとレコーディングまでは集中力がもたないんで、あんまメンバーの録りには付き添わないんですよ。

-それは、各メンバーをそれだけ信頼しているということでもあるのでしょうね。

それもありますけど、ちょっと手を抜いてた部分もありました(笑)。でも、今回は前より我慢強くなったのか、レコーディングに付き合えるようになったんですよね。だから、今回はドラム録りから全部立ち合って、個人的にはいつもの5倍くらいレコーディングに時間をかけました。で、そうなって困ってるのはメンバーですよね。急にうるさいやつが来てワーワー言い出したもんだから、みんなの出す音もこれまでより気合が入った感じに仕上がったと思います。