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LIVE REPORT

HYDE

2021.01.31 @東京国際フォーラム ホールA

Writer 荒金 良介 Photo by 岡田貴之 / 田中和子

ソロ活動20周年の幕開けを告げるツアー"HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE"。その東京国際フォーラム公演2デイズの最終日に足を運んだ。開演前BGMにはHYDE自身が高校時代に聴いていた楽曲をセレクトしたプレイリストが流れ、JUDAS PRIEST、FLATBACKER、S.O.D.、GASTUNK、MÖTLEY CRÜE、METALLICA、SLAYERなどメタルに傾倒した選曲に気分は高ぶるばかり。 今回のライヴ自体はアコースティック編成で挑んでおり、バンド・メンバーはアコースティック・ギター、ベース、ドラム、キーボードというラインナップ。そこから放たれる音色は時に柔らかく、時に通常のバンド・セットにも負けないパワーで、新しいスタイルとサウンドを提示したチャレンジングな試みが成されていた。

1曲目から目を奪われたのはステージ・セットである。妖しげな夜の繁華街が浮かび上がるなか、ステージ上にはバイク、金網、ガードレールなどが設置され、さながらストリートに迷い込んだような豪華なセットの数々。そのステージ中央にHYDEはドカッと腰を下ろし、"カモン、東京!"、"楽しもうぜ、東京!"と曲間に何度も煽り、序盤から観客との距離を詰めていく。

昨年12月にデジタル・リリースした新曲「DEFEAT」も披露されるやいなや、セクシー且つメロウに歌い上げ、ジャジーな鍵盤のアレンジも秀逸であった。そう、いい意味で原曲を裏切る大人びた雰囲気を醸し出す一方、荒ぶるシャウトを炸裂させるなど、自由度を高めた表現力にただただ圧倒された。それはこの曲だけに限った話ではない。他の楽曲に関してもアコースティックならではの繊細さと、ふとした瞬間にタガが外れたヘヴィネスを叩きつけ、観客の意識を釘づけにしていた。

"会いたかったよ。みんなに会えるのは本当に嬉しい"とHYDEは胸中を吐露。しかも今回はコロナ禍を踏まえ、楽器や声援を吹き込んだヴォイス・レコーダーが持ち込み可能になっていた。タンバリンやラッパに加えて、"大好きー!"、"HYDEさーん!"とレコーダーに録音した歓声が飛び交う。声が出せない状況を逆手に取り、新しい形でファンと繋がろうとするアイディアにも頭が下がる思いだった。

"20年って長いよね。時代も変わったし......ブレないという考えはできない、ブレまくり。僕自身はそれでいいかなって"とソロ活動20周年の歩みを振り返るHYDE。そして、静謐な曲を挟んだあと、「LION」を皮切りに後半に向け、急勾配を駆け上がるように歌と演奏は熱を帯びていく。この日はABEMA PPV ONLINE LIVEで独占生配信していることもあり、HYDEはカメラの前でヘドバンを決めたり、ステージ上を激しく動き回ったりと、アクティヴなパフォーマンスでも惹きつける。曲の途中で立ち上がり、感情の丈を爆発させるエモーショナル極まりない歌声に何度もゾクッとした。静と動の振れ幅という意味では、普段のバンド以上のダイナミズムを見せつけていたのではないか。

曲に入る前に"ハァ、ハァ......"と息切れするHYDEの声もマイクは拾い、魂を投げ打つ感情移入ぶりに多くの観客が興奮したに違いない。"安全にやれるなら、ライヴをやるべきだと思う。誰も救ってくれないからさ。コロナ禍の社会に負けたくない"とHYDEは語り掛け、感染対策などガイドラインをしっかり守りつつ、今、音楽でやれることを最大限に追求したステージングに心底感動した。今回のツアーはまだまだ続く。今しか観れない貴重な瞬間(ライヴ)をその目と耳でぜひ確認してほしい。

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