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LIVE REPORT

NOCTURNAL BLOODLUST

2021.09.04 @shibuya CYCLONE

Writer 米沢 彰 Photo by Seijiro Nishimi

緊急事態宣言が続く東京。緊急事態じゃない期間のほうが長いんじゃ、という話はさておき、この世情でライヴを開催する裏側でどれだけの努力が払われ、また入念な準備が行われているかは想像に難くない。事前の対談(※2021年8月号掲載)で"一緒に盛り上げていきたい"と尋(Vo)が語ったこのイベントは、向かい風だらけの今のミュージック・シーンに対し、ノクブラ(NOCTURNAL BLOODLUST)からのアンサーとして企画され、6日間にわたって行われる異色の長期公演となった。対バンを務める全12バンドは、今の国内ラウド・シーンの旬な中堅、若手が勢ぞろいし、ラインナップだけでもノクブラのシーンへの影響力が窺える。

トップ・バッターを務めたのは、ノクブラの初期メンバーでもある田浦 楽がプロデュース&サポートを務めるC-GATE。3ピースとは思えない音圧を引き出しながら、持ち前の極悪ハードコア・チューンでフロアを自分たちの色に染めていく。機材のトラブルも途中あったが、それもうまくパフォーマンスの緩急に変え、フロアを引き込んでいく。MCに呼応して挙がるオーディエンスの手の数が徐々に増えていく様子は彼らがしっかりとオーディエンスを掴んでいった証左でもあった。

会場の雰囲気がしっかりとできあがったところでSailing Before The Windが登場。アンダーグラウンドの匂いをぷんぷんさせるC-GATEとはうって変わって、ラウド&ヘヴィながらもオーバーグラウンド的なサウンドをも取り込んだSBTW(Sailing Before The Wind)がここで入ってくる流れは、ニュー・シングル『THE ONE』をつい先日リリースしたばかりのノクブラとの相性も良く、公演全体がいい形に締まる。フロアとの一体感は数曲進行するなかですぐにできあがり、タイトな演奏と畳み掛けるようなブレイクダウンがしっかりと盛り上がりを作っていく。

満を持して登場したノクブラは初っ端から「Pleasure of Torture」、「銃創」、「Malice against」とライヴの定番曲を圧巻のパフォーマンスと極限の音圧でたたきつけてくる。手を伸ばせば届きそうなキャパ感で繰り広げられる極限のパフォーマンス。shibuya CYCLONEの空間全体にノクブラのパワーが充満し、とてもこの空間には収まりきっていない。少なくとも音源に収まっている彼らのサウンドはほんの一部に過ぎない。極限まで音圧を引き出しながらも、全員のパフォーマンスが細部まで表現されたノクブラのステージはこれを観ないで日本のエクストリーム・ミュージックの何を語るのか、というレベルにすでに到達していた。

MCでは尋が"みんな信じてるからな"とフロアに投げかけ「THE ONE」で後半戦がスタート。楽曲が持つ絶好のシンガロング・パートでは尋がマイクをフロアに向け、オーディエンスは手を挙げてそれに応える応酬が続く。ここまでの信頼関係を築けているからこそ今の環境下でも開催に踏み切れるのだろう。

終盤は新体制以降の楽曲「REM」、「PROPAGANDA」で今のノクブラをしっかりとアピールしたうえで「Punch me if you can」で締めくくる。感染予防対策は十分すぎるほどに行われ、入り口では布マスクなどの来場者のために不織布マスクを配布するほどの徹底ぶり。フロアは観客間の距離が確保され、むしろ快適なヘドバン空間となっていたが、入場数を制限することはすなわち経済的なダメージを意味する。それでも届けたいライヴが彼らにはあり、守りたいライヴハウスがあった。そんな彼らのメッセージは来場者に十二分に伝わったはずだ。

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