INTERVIEW
KISHOW from GRANRODEO
2024.07.26UPDATE
2024年07月号掲載
Interviewer:フジジュン
2025年に控えたデビュー20周年に向けて、"Road to G20th"を掲げた20周年プロジェクトを進行中のGRANRODEO。4月にリリースされたe-ZUKA from GRANRODEOのソロ・アルバム『LET'S GET STARTED』に続く、3部作の第2弾となるKISHOW from GRANRODEOのソロ・アルバム『深夜零時』が完成! 今作には、グラミー賞を受賞した宅見将典、80年代から数多くのヒット曲を生み続けてきた松井五郎、シティ・ポップの巨匠である林 哲司、最強ヒット・ソングメーカーの佐伯youthK、BUCK-TICKの今井 寿など、超豪華クリエイターによる提供曲が全11曲収録。変幻自在の歌声とヴォーカル・ワークで、ポップス、R&B、ファンク、バラードと色鮮やかな楽曲たちを自分色に染め上げる、KISHOW from GRANRODEO初となるソロ・アルバムは聴き応え抜群! 完成した渾身のソロ作品について、たっぷり話を訊いた。
-1stソロ・アルバム『深夜零時』を完成させたKISHOWさんですが、アルバムを聴かせてもらって驚きました! これはちょっと事件ですね。めちゃくちゃ良かったです。
本当ですか? ありがとうございます。
-作品としての完成度もすごく高いですし、楽曲の振り幅の広さからKISHOWさんのヴォーカリストとしてのすごさを知らしめる、素晴らしいアルバムになったと思いますが、ご本人的には、完成しての感想はいかがですか?
もう素晴らしいクリエイターのみなさまに集っていただいて、いろいろ楽曲提供してもらったので、僕は"歌い手として、やれることはやろう"ってだけで。意図的にやったわけではないんですけど、ヴォーカル・ワークとしてGRANRODEOではないところを目指すなか、結果としてこういう形で走り切ったのかな? と思ってます。
-GRANRODEOとはまったく印象の異なる作品に仕上がりました。
そうですね。最後の曲を録り終わったときも、"これでいいのかな?"とどこか思いながら、"あとは然るべき筋に任せよう。よろしく!"って感じで。トラック・ダウンやマスタリングを経て、みなさんにお聴かせできる段階まで来てストレートなお褒めの言葉をいただいて、"そうか、良かったんだ"という初の体験を今まさにしています(笑)。
-あはは(笑)、良かったです。たしかに豪華制作陣が集って、すごくいい楽曲が揃ったというのもありますが、各クリエイターさんが"KISHOWにこれを歌わせたい"、"KISHOWならこれを歌いこなすだろう"と、期待して面白がってくれていたのだろうと思いました。
特に佐伯君(佐伯youthK)ですね(笑)。佐伯君に関しては言いたいことがひとつやふたつあるんですけど、それはあとにして、僕という歌手を面白がってくれるというのは望むところでもあって。"なんでも歌わせていただきますんで!"というスタンスはGRANRODEOもそうですし、常にありますし、それが結果、いいものに繋がるだろうとは思っていました。なので本当に手を替え品を替え、クリエイターのみなさんがいろんなジャンルの曲を作ってくださったのは、ありがたかったです。
-申し合わせたかのように似た曲がないです。
そうですね(笑)。そこは、プロデュースやサウンド面でのディレクションを支えてくれた福井(健吾)さんが、バランスを取ってくださったのかな? というところもあって。いろんな方の力でこのアルバムに向かった部分がありましたね。
-改めてですが今回、GRANRODEO 20周年に向けた"Road to G20th"ということで、e-ZUKA(Gt)さんに続いてKISHOWさんがソロ・アルバムを出して、最後にGRANRODEOでニュー・シングルを出す3部作のプロジェクトが進行中ですけど、この企画が立ち上がったときは、どんな感想でしたか?
20周年ってどんなバンドにとっても結構大きい出来事だと思うんですが、それに近づいてきたとき、どういう企画やアイディアが出てくるだろう? というところで、僕たちから何かを提示するのでなくて、チームでGRANRODEOをどうしていきたいのか話していくなかで、ソロの企画が生まれて。"それぞれがソロで活動をやって、それを経てパワーアップしていこう"という周囲の熱意や期待が伝わってきたので、非常にいい試みだなと思ってありがたかったですし、僕だけじゃなくて、e-ZUKAさんとかただのギターバカなので(笑)、特に喜んでました。e-ZUKAさんの『LET'S GET STARTED』を聴いて、"この人はヴォーカルより、ギターのほうが偉いと本当に思ってるんだな"というのを再確認できたことも面白かったし(笑)。僕も"GRANRODEOという看板を外したとき、いちヴォーカリストとしてどれくらいやれるか?"という、腕試ししてみたい気持ちが個人的にあったので、非常に良いタイミングでありがたい話をいただいたと思いますし、"よくぞ、スタッフよ!"って気持ちがありました。
-KISHOWさんの中でも、歌い手として腕試ししてみたいという気持ちもどこかあったし。
はい。で、いざやってみたら、「Every Single Night」とかまさに佐伯君の曲ですけど、大苦戦しましたね。久々に"歌って難しいな!"と思って、すごく嫌なスパイラルに陥りました(笑)。"難しいな"と思って歌ってたらいい歌にならないことはわかってるけど、これはやむを得なかったし、越えるべき壁だったと考えていて。全体を通して振り返っても、自分の中で強烈に残ってるのは、「Every Single Night」で苦戦したことだったりします。
-この作品をひとつ象徴する、R&B調のポップで爽やかな曲ですが、苦戦した甲斐あってといいますか、ちょっと見たことのないKISHOWさんが見える、ソロをやる意義をひとつ感じさせる曲になっていて。佐伯さんにも、"新しいKISHOWさんを引き出してやろう"って気持ちがあったのかも知れないですね。
いい体験にはなりましたね、本当に。
-ソロをやるとなったとき、KISHOWさんの中では、漠然としたイメージってありました?
作る前にイメージするのでなく、できてからの後づけになるのかな? と思ってました。そこは自分の本業が声優ってところが大きいかも知れないんですけど、キャラクターありきでそこに色づけをしていくという作業を、GRANRODEOより10年ほど長くやってるもんですから、その方法論は自分の中にたぶんありましたね。GRANRODEOのヴォーカル、KISHOWはこんなスタイルというのはできてますけど、ソロとなって、多くのクリエイターのみなさんにご協力いただくなかでは、"自分は何色にも染まろう"って気持ちが強かったかも知れないです。GRANRODEOはこう、ソロはこうって確固たるイメージはなくて......そこまで考えるのがめんどくさいんですよね(笑)。何せ、めんどくさがりなもんですから。
-わはは(笑)。"自分とは? GRANRODEOらしさとは?"とか考えると、頭で動かなきゃいけなくなってしまうところもありますしね。僕がすごく面白いなと感じたのは、KISHOWさんのソロが大前提として、ロックという概念にとらわれていないところで。それと同時にe-ZUKAさんらしさ全開のロックなソロを聴くことで、"こうやってGRANRODEOはできてるんだ"とわかるし、"GRANRODEOってロック・バンドなんだな!"と改めて思いました。
GRANRODEO周りは基本e-ZUKAさんがやってますから。ソロではより自分のやりたいことをやれたでしょうしね。僕は僕でそうじゃない、様々な人に色を塗ってもらってという感じですから。