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INTERVIEW

KISHOW from GRANRODEO

2024.07.26UPDATE

2024年07月号掲載

KISHOW from GRANRODEO

Interviewer:フジジュン

曲ができてくるたびに毎回違った面白さがあって、テンション爆アゲでした


-楽曲提供をお願いする際、KISHOWさんのほうから"こういう曲が欲しい"といったリクエストってあったんですか? それともあえてしなかった?

いや、特になかったですね。最初にサウンド周りをやってくれた福井さんと、GLEANのプロデューサー陣と食事会があって、基本的には"なんでも歌いますよ"というスタンスなので、"例えば演歌とか来ても、本気だったらやりますよ"とか話しました(笑)。福井さんはGRANRODEOをしっかり理解してくださってるし、"Rodeo Note"([GRANRODEO Live Session "Rodeo Note"])って、いろんな曲のカバーをジャジーな感じで崩して歌う感じも聴いてもらってるから、"このへんまではできるんだ"というのをわかってもらえてると思うので、ここからここまでって、『深夜零時』の幅も決まったと感じてて。"こういうのも歌えると思うんで、面白がっていろんなパターンを持ってきてもらっていいですよ"くらいのことは言ったんじゃないかなと。

-お願いするクリエイターさんのラインナップはどう決めていったんですか?

そこはプロデューサー同士でやってくださった感じでした。だからあとで聞いて"この曲、あの方が書いてくれたの!?"って(笑)。"え、林 哲司先生が作ってくれたの!?"とか、"うわ、松井五郎さんやん!"みたいな。

-え、そんな感じでできていったんですか!? めちゃくちゃ楽しいじゃないですか(笑)。

めちゃくちゃ楽しいですよ! だから、曲ができてくるたびにテンション爆アゲでした。そこに"歌ってみたらこういう癖があるな"とか、"ヴォーカルはこんなふうにハメていったほうが気持ちいいんだろうな"とか、毎回違った面白さがあって。しかも僕は今回、歌詞もほぼ書いてないですから! GRANRODEOで歌詞を書くときは、自分の歌唱用に歌い癖とかを当てはめてるから、書きながら歌をイメージできるんですけど、今回は実際に歌ってみないとわかんないし。これまで多くのキャラクター・ソングを歌わせていただいてて、その経験は生きてるかも知れないけど、あくまでも今回は自分なので。自分というキャラクターって言うとカッコ良すぎるかも知れないけど、キャラソンでやってきた経験や方法論はプラスに生かしながら、自分として歌えました。

-歌詞は最初から、クリエイターの方にお任せするつもりだったんですか?

"俺は書かない。書いても1曲!"と言ってました。自分で書くと、どうしても自分の色になってしまうというのもあるんですけど(笑)、今回はあくまでもヴォーカリストに徹して、曲だけじゃなく、歌詞もお任せするほうが相応しいんじゃないか? と思ったんです。じゃないと、こんなアルバムにならないですからね。同じ楽曲で同じ仮歌をいただいたとしても、「Lucky for you」とか「Game」みたいな英詞の曲とか絶対できないし。そのやり方でやってみて、やっぱり面白かったですよ。当たり前ですけど、自分からは絶対出て来ない言葉がたくさんありますからね。あとは自分の曲だけど、女性視点の歌詞とか。ヴォーカリストとしては、"この曲を一番生かすにはどう歌うか!?"しか考えてないですけどね。

-でも結果として、作詞もお任せして正解だった?

そうだと思います。「Flower Tambourine Dance」という曲を1曲だけ書かせてもらったんですけど、それはBUCK-TICKの今井 寿(Gt)さんに作曲していただいた曲で、BUCK-TICKはカバーをさせてもらった(『PARADE III ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』収録曲「天使は誰だ」)ご縁もあって、提供いただいたことがすごく嬉しかったですし。

-この曲はe-ZUKAさんが編曲を手掛けていて、BUCK-TICK × GRANRODEOのコラボ曲みたいになりました(笑)。

そうなんです。e-ZUKAさん以外の曲に歌詞をつけるのも、たぶん始めてのことだったから非常に興味深かったし、意欲的に取り組んだんですけど、この曲に関してはいい意味であっという間にできましたね。

-できあがりは80年代のサイケデリック・ロックといった印象で、BUCK-TICKでもGRANRODEOでもないものになっていて、すごくカッコ良かったし、面白かったです。

今井さんの曲ってすごくシンプルなんだけど、やっぱり今井さん節というか、他の人には書けない曲で、サビだけ聴いたら、化粧品のCMに使いたいくらいキャッチーだし、大好きな曲になって。アレンジをe-ZUKAさんにお願いしたんで、仮歌がe-ZUKAさんの歌声で来たから、"いつも聴く仮歌の声の人だ!"って感じで、歌詞はつけやすかったですし(笑)。聞いたら今井さんのデモがあって、それをe-ZUKAさんがそっくりそのまま歌ったらしくて。"I like to do"って歌詞は今井さんの仮歌がそう聴こえたのをそのまま歌ってて、使わせてもらってるんです。

-そんないいエピソードもあるなか、収録曲についてお話を聞きたいのですが、今作の制作で最初にできあがってきて、レコーディングに臨んだ曲はどの曲だったんですか?

最初が「Every Single Night」だったんです。だからもう、初っ端から今まで歌ってきたことのないような曲で。こぶしとかフェイクみたいなのとか、自分の癖を存分にまぶして、自分の歌いやすいようにやったらできたんだろうけど、"この楽曲の正解はそこじゃない"っていうのをなんとなく感じていたので、この曲に関しては全部引き算の作業になると思いながらまっさらで挑みました。現場に行ったら、福井さんがいて、歌唱指導で佐伯youthK本人がいて、バンバン肩振り回してて(笑)。いざ歌ってみたら、自分が覚悟してた倍くらい削ぎ落としの作業になったので、"あ~、これは大変だぞ"みたいな。つまり自分が良かれと思って使っていた武器は全部使えなくて。丸腰になって、"そこはしゃくらないでください。もっとストレートに"みたいな感じで油抜きをしていく作業だったので、非常にフラストレーションもあったし。

-丸腰にさせられて、ソロ・アルバムを作るうえでの最初の洗礼を受けたんですね。

もともと佐伯youthKの仮歌が100点だったので、佐伯君の仮歌に近づける作業だとは思っていて、始まる前から覚悟はしていたんですけど、求めてくるハードルもものすごく高かったし、自分でもそこまで届いてる実感がないくらい難しい楽曲だったんです。なんとか繋いで繋いで及第点まで持っていきました。耳心地もとてもいい曲だし、聴くものとしては大好きなんですが、プロレベルとして世に出さなきゃいけないってなったとき、こんな苦戦した曲は過去にもなかったです。

-でも、最初に丸腰にさせられたことで、そのあとは曲に合わせた衣装を着ていく作業になっていくわけで。順番としては良かったかも知れないですね。

他の曲は全編英語詞とか、別の意味で苦戦したんですが、純粋にヴォーカル・ワークってところでは、こんなに苦戦した曲はなかったです。

-佐伯さんの曲だと、ファンク・テイストの「Lucky for you」も難しそうです。

そっちはまだ自分の色を出してもいい部分があったんで、少し楽でした。仮歌とはまた違ったベクトルで、俺のいいところを出して超えなきゃいけないなと感じたし、遊び心もいっぱいで、歌詞も人を食ったようで、そういうのって僕も得意でやってきてるから、面白いなと思ってやれて。この2曲で、クリエイター 佐伯youthKの魅力をまざまざと見せつけられました。

-1曲目「Midnight circus」でゴージャスにアルバムが始まって、2曲目「Every Single Night」で、"あれ? このアルバム、ヤバいぞ"と思わせてくれます。

ど頭の並びはすごくいいですよね。1曲目「Midnight circus」はブラスも入ってゴージャスな曲になって、わりと得意な楽曲でしたね。非常にのびのびと歌えて、ディレクション的にも"そののびのびした感じでいいんじゃない?"と言ってもらえて。ディレクターの想定を超えられたんじゃないか? と思います。