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INTERVIEW

KISHOW from GRANRODEO

2024.07.26UPDATE

2024年07月号掲載

KISHOW from GRANRODEO

Interviewer:フジジュン

-そんなOPの2曲から続くミディアム・バラード「純度」が雰囲気を変えてくれて。

GRANRODEOでも、「月に抱かれて眠りたい」(2017年リリースのシングル『Glorious days』収録曲)とか、女性目線の切ないバラード系の歌詞も書いてきているんですが、やはり、こだまさおりさんの女性的な歌詞がすごく新鮮だったし、まず"純度"ってタイトルがすごく好きですね。もうちょっと違う歌い方があったかな? とも思うんですが、それはどの曲にも思うことなので、ここからツアー("KISHOW LIVE TOUR 2024 「MIDNIGHT CIRCUS」")に向けてリハをやって、実際ライヴで歌って、どんどん昇華していければと考えてます。

-やはり自分以外の方の書いた歌詞だと、1曲上がってくるごとに曲や歌詞と向き合って、世界観を理解して、咀嚼したうえでレコーディングに挑んでという感じでしたか?

あまりそこまでやらないですね。感覚でしかやってなくて、歌として捉えて耳に聴こえてくる感じで。歌詞つきの仮歌を楽曲として捉えてるから、耳心地としてどういう歌唱法でとか考えて歌って、細かく取っていくうちに言葉に感情がこもっていくんですけど、そういえば僕って全然歌詞を読み込むとかしないですね。それって問題なのかな(笑)?

-いや、でもそれがKISHOWさんのスタイルですもんね。最初はイメージで捉えるやり方や、歌っていくなかで気持ちが入っていくというやり方も理解できる気がします。バラードで言うとアルバム後半には「let me dream of you」も収録されています。

この曲はすごいですよ。僕、福井さんに"西城秀樹さんに似てるところあるよね"って言われるくらい、しゃくりあげるときの感じとか"秀樹歌唱"で歌ってますから(笑)。感情を露にするときの地声と裏声の合間みたいなところの"ホゥッ!"って感じも、名付けるなら"秀樹マナー"と言える発声法で、「傷だらけのローラ」の"ロォ~ラァ!♪"のつもりで歌ってはないけど(笑)。スタイリッシュに歌おうなんて思ってなくて、切ない男の情けなさと後悔と"戻ってきてくれよ!"みたいな、鼻水も出てるようなみっともない姿を――

-"叶うならば もう一度抱きしめたいよ"など、女々しいフレーズ満載です。

そう、"女々しい感じをもっと出して"ってディレクションされて、もっと出していったら秀樹さんっぽくなっていったという(笑)。どバラードなんで、ともすれば笑っちゃうほどエモーショナルにケレン味たっぷりで歌ってますから、これに関しては足し算足し算、もうゴテゴテのデコレートですよ。"そこ、ブレス取ったほうがいいんじゃない?"くらい、これ見よがしにロング・トーンを繋いで、"そこ、切らないんだ!"と福井さんに驚かれましたけど、楽曲のパワーがすごかったんで、オペラかミュージカルかってくらい気持ちを入れて、やりすぎなくらいやりました。

-結果、自分の中の秀樹が目覚めたという(笑)。そういった感じで、普段は開けない引き出しを開けてくれた曲も多かったですか?

同じ引き出しだけど、"まだ奥があるぞ"ってガッと開けた結果、引き出しが取れちゃったのが「let me dream of you」だったし、「Every Single Night」は、そもそも自分からはその歌唱法で歌わない感じだし。それくらいですかね?

-ではその他、レコーディングで印象的だった曲はありますか?

印象的だったという意味では、「Game」かな。全編英語歌詞なうえ、ドゥーワップって言うんですかね? 裏のスキャット部分も全部自分の音声を重ねて。結果、8人KISHOWだったかな(笑)。クリックと仮音だけでパーツごとに録っていくというのを繰り返して、4~5時間かかって。"今、どこの何を歌ってるんだろう?"ってわからなくなりながら歌ってたし、頭が変になりそうでした。そもそも英詞もチャレンジだったのに、その裏にあるほうがもっとチャレンジで。最終的にマスタリングを聴いたときは、苦労した甲斐があったなと思いましたけどね。

-そんなのKISHOWさんしかできないです! そして、そんな苦労もあって完成した、初のソロ・アルバムを"深夜零時"と名付けました。

「深夜零時(Interlude)」という曲も入ってるんですけど、この曲で拝借してるのが、e-ZUKAさんのソロ・アルバム『LET'S GET STARTED』に収録されている、「DD BLUES」って曲で。そこに自分が鼻歌をつけたり、口笛を吹いたりしただけの曲なんですが、e-ZUKAさんのアルバムと親和性を持たせようという、ちょっとした遊び心だと思うんです。これがGRANRODEO 20周年を迎えたとき、どう結実するか? というのは、ちょっと先の話ですけど、これが何かの布石になってるのかな? と匂わせつつ。アルバム・タイトルになったのは、"「深夜零時」のテンションって、こういうのもあるよね"って感じなんですかね? "まだ眠くないし、音楽でも聴いてお酒飲んで、眠くなったら寝よう"みたいな。

-できあがったアルバムは、リスナーにはそんな聴き方もしてほしい?

そうですね。深夜に聴くにはうるさいし、情報が多い気もしますが(笑)。そういう時間に自分の部屋で窓を開けて、夜空でも見ながら聴いてほしかったりもしますし、そんな時間のお供に11曲目まで通して聴いていただいて、"さぁ寝ようか"になってくれてもいいですし、また1曲目からループして聴いちゃって、"全然寝れねぇや"になってくれてもいいですし。せっかく"深夜零時"と謳ってるんで、まずはその時間帯に聴いていただくのがいいんじゃないでしょうか?

-8月には、今作を掲げたソロ・ライヴ・ツアーも控えています。ライヴではまた全然違った響きになりそうですが、ライヴへの期待や意気込みはいかがですか?

ライヴで化ける曲もあるでしょうし、レコーディングで苦労した曲がかせを外して"自分らしく歌おう"となったとき、どう変化するかは自分でもすごく興味があります。歌い慣れてくるなかで"こういう曲だったんだ"と気づくこともあるかも知れないですし、今歌い直したほうが絶対にいいのが録れる曲もありますし、ライヴでどう昇華して、どうクオリティを上げていけるか? っていうのが楽しみですね。

-ツアーの演奏は、KISHOWバンドを従えて臨むんですか?

そうなんです。初めましての方々と回ります。だから今までどんだけe-ZUKAさんの存在がデカかったか? っていうのも思い知るツアーになるんじゃないかなと(笑)。もう音方面は丸投げですから。"いいんじゃない? やりやすいようにやってね"って言うと思います。やり方として、そっちのほうが向いてると感じますしね。

-とはいえ、ライヴを3本やったらバンドの空気感やノリも生まれてきそうですね。

そうですね。(バンドは)自分よりは若いメンバーだって聞いてるので、僕にたっぷり気を使っていただいて(笑)、僕はそこにあぐらをかいて、結果的にいい音が届けられればいいなと思っていますけど、俺のほうがどうしても気ぃ使っちゃうんですよ。で、3本やって仲良くなれて、"次はいいライヴできそうだな!"ってところで終わっちゃうんです。そうなるのはもう、ハッキリ見えてます(笑)。

-あはは(笑)。そして最後に、"Road to G20th"第3弾に控えたGRANRODEOのシングルについて、今見えるヴィジョン、こんなシングルにしたいという希望を聞かせてください。

20年というのを見据えたテーマになりそうですけど、まだ道すがらだからわかんないですね。e-ZUKAさんのソロが終わって、僕のソロがリリースされてツアーがあって、それがどういう手応えで終わるのか? そのあとのことは、そこで見えたものや感じたものによると思いますけど、今新しい曲が2曲くらいできていて、歌入れを控えていて。おそらく20周年に向けてみたいなテーマになると思うので、そうやってちょっとずつ20周年に向かっていくんだろうなと感じますし、そのときにソロの経験が生かされるといいなと考えているんですが、ひとつ挙げるなら、ソロをやったことで"引き算の美学"には一瞬触れた気がしました。"バッキバキに力を入れるよりは多少、力が抜けてたほうがいいよな"っていうのは、最近気づいていて。スポーツでもなんでも達人の域に近づくほど余計な力を抜くって言いますから、個人的な目標として僕も少しでもその領域に近づければいいなというのは思います。