DISC REVIEW
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滴るような色気と危険な香りは芳醇で、そこにはギラつくような刺々しさも見え隠れする。つまり、彼らが長きにわたり放ってきたロック・バンドとしてのセンセーショナリズムは、今も鮮烈なまま健在なのだ。メンバー全員が50代に入って制作された今作の随所からは、プレイやアプローチの面で熟練の技がたっぷりと感じられるものの、D'ERLANGERが老成してしまうことは決してない。ロックへの愛と遊び心が生かされた「SEX」、上質なグルーヴと伸びやかなメロディが交錯する「die fast and Quiet...」、モダンにして艶っぽい「You are Killing me」と、悪魔的なまでの魅力を孕んだこの揺るぎなき美学を湛えた音と詩世界に、今宵はただひたすら深く酔おうではないか。 杉江 由紀