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INTERVIEW

D'ERLANGER

2019.05.22UPDATE

2019年05月号掲載

D'ERLANGER

Member:kyo(Vo)

Interviewer:杉江 由紀

悪魔的なほどに聴く者を蠱惑する、美学の貫かれた音。芳醇な色気とロマンチシズムが濃厚に漂う、艶やかな歌詩世界。その揺るぎなき姿勢が、多くのミュージシャンたちからも信奉されているD'ERLANGERが、この新時代の始めに約2年ぶりに発表する新作は、悪魔の名前をタイトルに冠した9thアルバム『roneve』だ。遡れば1983年から1990年にかけ一時代を築き上げたのち、2007年に復活してからも現在に至るまでアグレッシヴな活動を続けてきた彼らが、いよいよ50代に入って完成させたという攻めの作品は、聴けば聴くほどに奥深くも鮮烈でなんとも生々しい。まさに現在進行形そのもののロック・レジェンドの今がここにはある。

-約2年ぶりのアルバム『roneve』がついに完成しましたが、今作からは特に歌詩の面でアルバム・タイトルとシンクロするような、コンセプチュアルな匂いも感じます。制作を始めていく段階では、まずバンド内でどのようなやりとりがあったのでしょうか。

いや、それがコンセプトを立てて始めたわけではなかったんですよ(笑)。そこは相変わらずなところで、テーマについては特に話し合うこともなく制作が進んでいった感じでしたね。ただ、アルバム・タイトルは、わりと早い段階から仮タイトルとして"roneve"という言葉が挙がっていたので、たしかに詩を書いていくうえではそこを軸にしていったところもありました。でも、楽曲に関しては、CIPHER(Gt)から出てきたものを、1曲ずつバンドで形作っていくというやり方だったんです。

-この『roneve』を聴かせていだいて最も強く感じるのは、D'ERLANGERがバンドとしてここまで貫き続けてきている美意識と、研ぎ澄まされたグルーヴや音像の濃密さです。個々の楽曲には新しいアプローチなどが織り込まれておりますが、やはり根底の部分においては、確固たるD'ERLANGERらしさが全編に溢れている印象を受けます。

きっとそこは、自分たち自身であまり意識しなくても出てくる部分なんでしょうね。もちろん作り手側としての細かいルールみたいなものは作品ごとだったり、楽曲ごとだったりに生かしているんですけど、それ以上に一番の強みが何かといったら、僕らメンバーはCIPHERの作る曲が好きだし、それをこの4人で演奏していきながら、D'ERLANGERの楽曲として仕上げていくことが大好きなんですよ。そのうえで、できた音に自分の好きな世界観を詩として当てはめていくことも、僕はやっぱりすごく好きですしね。その結果として、"らしさ"というものが生まれていればいいなと思っているところはあります。

-そんな揺るぎなきD'ERLANGERの個性が音に凝縮されている一方で、この音の中には、"今作『roneve』ならでは"な要素も多々詰め込まれているのではないかと思います。kyoさんご自身の感覚として、"こんなところが画期的だな"と感じていらっしゃる楽曲がありましたらぜひ教えてください。

現レーベルに移ってからは歌のディレクションをCIPHERがしてくれるようになって、歌録りはいつもふたりで膝を突き合わせながらやっていくんですけど、このアルバムの中だと特に「die fast and Quiet...」は、レコーディングのときに声のトーンや言葉の響きにこだわっていったので、それによって、曲の中にいいコントラストを生み出していくことができたんじゃないかと思いますね。録り終わった日にラフ・ミックスを送ってもらって改めて聴いてみたときに、"あ、俺こんな歌い方してるんだ!"ってちょっと自分でも新鮮に感じたんですよ。これまでだったら、サビとかではもっと弾けるように力を入れて歌うことが多かったんですけれども、この曲では少しだけ抑えるような感じというか、余裕をもった歌い方をしているんです。そもそもの歌のテイクをあげたのは僕自身だとはいえ、そこまでの細かいニュアンスを出せたのは、CIPHERが楽曲の中における歌の位置や色彩感を、しっかりと捉えながら導いてくれた結果でしょうね。それだけに、案外いろいろとうるさいので歌っていくときは難しいんですけど(笑)、とてもやり甲斐がありました。

-ちなみに、今回のレコーディングにおいて、楽器隊の方々がどのような様子でレコーディングを進めていらしたのかも知りたいです。

Tetsuのドラム録りのときは、ほぼ終わる頃に仮歌を乗せに行ったんですけど、その時点で無事に終わったみたいな雰囲気はありましたよ。いつも通りに細かいところにもこだわりながら音を作っていっていたし、曲によっては、アウトロのテイクが何パターンかある中から、バンドの音に最も合うものを選び直したりもしていて、全体のイメージを大事にしながらの作業をしていたように見えました。SEELAは、これまでだとブースの中でベース録りをしていることがわりと多かったんですよ。でも、今回はコンソールで録るやり方をしていたのが大きな違いだったのかな。あれはきっと彼なりの新しいトライだったんだろうなと感じました。

-もしかすると、コンソールで録った方が、より客観視しながらディテールにまで気を配ることができるという利点があるのかもしれませんね。

たぶんそうなんでしょうね。かなり細かいところまで、リアルタイムで確認しながらレコーディングしていたように見えましたから。CIPHERはいつも通りコンソールで録っていて、僕はその横の部屋でブースから漏れてくる音を聴きながら歌詩を手直ししたりして、やりとりを聴いていたんですよ。そこから察するには、結構いろんなパターンを試しながらアンサンブル然り、ソロ然りをそれぞれ録っていたみたいでした。ひとつの音を基準にしてグラテーションを描いていくというよりは、まったく違う色合いのものを絶妙にチョイスしつつ、積み重ねていくようなやり方をしている曲があったりで、聴いていて非常に面白かったです。"そんなんちゃうわ!"って言われちゃうかもだけど(笑)。

-各プレイヤーが熟練の技を持っていらっしゃるD'ERLANGERだけに、このアルバム『roneve』をリスナーのみなさんに聴いていただくうえでは、随所でキラリと光る演奏にもしっかりと耳を傾けていただきたいところですね。

実は、今回のアルバムってメンバー全員が50代になってから初めての作品なんですよ。そういう意味でも、"若いときだったらこうはなっていなかっただろうな"と思えるような音が、ここではいろいろと形になっているので、それが味や深みに繋がっていたらいいなと思います。シンプルなんだけど、よりロックのダイナミズムを感じられる音になったなと自分でも感じてますし。普遍的なものと新しいものが、うまく合わさった作品になりましたね。

-この『roneve』は、フルーティであると同時に芳醇さも持つワインのように、複雑な味わいを持つ作品だと感じます。

あぁ、それはとても嬉しい言葉です(笑)。