LIVE REPORT
KNOTFEST JAPAN 2016 -DAY2-
2016.11.06 @幕張メッセ
Crossfaith
「System X」が流れるなか、波打つ大きなバックドロップを背景に堂々とメンバーが登場。Koie(Vo)の手には、モチーフの赤い旗が握られている。大きく膨れ上がった観衆から沸き起こる大歓声をかき消すように、「Monolith」でライヴはスタート。
"叫べ、幕張―!"とKoieが叫ぶと、フロアには瞬く間にいくつものサークル・モッシュが発生。会場には異様なほどの熱気が立ち込める。そこから「Rx Overdrive」へと流れ、序盤からクライマックスな盛り上がりだ。続く「Kill 'Em All」で会場は大きくバウンス。Koieはステージを降りて客席へと掴みかかるなど、もはやハチャメチャな盛り上がりだ。
持ち前のエネルギッシュなパフォーマンスはそのままに、サポート・メンバーのTama(ex-NEW BREED)を加えた6人編成となったことで、音の密度がさらに増している。それがとんでもなく分厚いグルーヴとなって幕張メッセを覆い尽くしているのだ。まさに、圧巻のライヴである。そして、KNOTFEST JAPANには、昔から愛して止まないバンドたちがたくさん出演していると語るKoie。
"今日ここで、あいつらからもらったパッション、エナジー、フィーリング、すべてをあいつらに、お釣りがくるくらいの勢いで返したい! ついてこれるか、幕張ー!"
それに応える観客の大声援を受けて、人気曲「Devil's Party」を投下。会場の気温がさらに上昇した。
"Made in Japanのヤバさ。お前らのカオスをもっと見せてくれ! 俺たちが日本代表のCrossfaithだ! 死ぬ気でかかってこいよ! いけんだろ! KNOTFEST!"とさらに煽る。「Countdown To Hell」ではドラミングを始め、その音像に魂が揺さぶられる感じだ。"LAMB OF GODにヤバいの見せてやろうぜ!"と放たれたラスト・ナンバーは「Xeno」。桁違いのスケールをまざまざと見せつけられた。(MAY-E)
LAMB OF GOD
IN FLAMESと同じく、KNOTFEST JAPAN 2014でも来日したLAMB OF GOD。IN FLAMESが終わり、反対側のステージでCrossfaithのライヴが始まろうとしているときから、ステージ上に現れたLAMB OF GODパネルだけで歓声が上がっていたほど、観客の期待値は異様に高く、エクストリーム・メタル帝王の君臨を待ち望んでいた。
爆発音に近いSEとともにメンバーが登場し、「Walk With Me In Hell」のイントロを奏で始める。"これぞ帝王"と言わんばかりの圧巻のスタートにオーディエンスはその興奮を抑えきれない。Randy Blythe(Vo)の登場とともに興奮は最高潮に達し、凄まじい轟音のなか全員がジャンプ(前方から後方までぎっしりと人がひしめき合い、身動きがとれないほどフロアは埋まっていたので、もはやモッシュすら起こせない状況であった)! EYEHATEGODのTシャツと迷彩柄短パン姿のRandyはドレッドヘアを振り乱し、間奏では大ジャンプをキメ、フロアに降り立ち観客を煽りに行くなどアグレッシヴなパフォーマンスで大いに盛り上げる。そのまま「Ruin」になだれ込み、オーディエンスも大きく波打つようにその場で動く。そして、長髪が顔にかかり表情が見えない状態でソロを弾くMark Morton(Gt)、長い白髪をなびかせつつ堂々とした出で立ちのJohn Campbell(Ba)、淡々と重たいリフを刻み続けるWillie Adler(Gt)、細かなフィルを効かせたテクニカルなドラミングでバンドを支えるChris Adler(Dr)。この最強布陣はやはり演奏に対して1ミリも妥協がない。
鳴り止まない歓声のなか、"ジャパーン!!!"、"オス!!"、"乾杯マザファッカーズ!!"、"ドウモアリガトゴザイマス"などと親日家のRandyが日本語も交えて挨拶。そしてRandy逮捕事件後、初めてリリースされた最新作『VII: Sturm Und Drang』より「512」、「Engage The Fear Machine」、「Still Echoes」と続けざまに披露。"凄まじくダークで、多様なサウンド"と自ら評する最新作の生演奏が日本で聴けるのは今回が初めてということになるわけで、我々はその熱量の凄まじさにただただ感銘を受けることしかできなかったように思う。そしてラストに披露されたライヴ・アンセム「Laid To Rest」から「Redneck」へと続く流れにもはや鳥肌が止まらない。モッシュ&ダイブの嵐で、完璧なまでのLAMB OF GODワールドを堪能させてもらったあっという間の40分だった。(今谷 重治)
MAN WITH A MISSION
ライヴ前にフロアからなぜかMARILYN MANSONコールが沸きどっと笑いが起きる。確か、2014年のKNOTFEST初開催時も同じようなことがあったように記憶しているのだが、これもMWAM(MAN WITH A MISSION)のお家芸と言っていいのかもしれない。彼らもSiMと一緒にカリフォルニアの"Ozzfest Meets Knotfest"に参加し、日本のラウドロック代表といえる人気を誇っているバンドだ。お馴染みのBAD RELIGIONの「Man With A Mission」のSEに乗って手を上げながら元気よく登場。お揃いのボーダーのTシャツに身を包み、「Emotions」からライヴをスタート。ダンサブルなリズムとドラマチックなメロディが爽快に響き、アッパーなミクスチャー・チューン「database」でオーディエンスのボルテージが一気に高まった。細かいスクラッチ音も大きく鳴り響き、パーティー感満載だ。"アリガトウゴザイマス! 残ストコロ2アーティストデスケドシッカリ温マッテキマシタネ。全員マトメテカカッテコイ!"のMCから、スピーディなナンバー「Give it Away」をプレイ。「Take What U Want」では曲中に"SLIPKNOT! SLIPKNOT! 幕張! 幕張!"というコール&レスポンスのあと、キメで一斉にジャンプさせ会場を大きく振動させた。感謝の言葉が述べられたあと、フロアから"シド!?"と声が上がると、"シド? シドハ準備運動デスヨ、出番控エテルンダカラ"と冷静に返して笑いが起きる。そして新曲「Hey Now」が披露された。四つ打ちのリズムとミニマルなループ、エモーショナルなサビのメロディが印象的な曲で、彼らのルーツであるグランジ的な音色のギターが長い残響を残した。アンセム「FLY AGAIN」が始まると狼のメンバーの目がビームのように光り、オーディエンスはシンガロングしながら手をガウガウさせる。ラストの「Raise your flag」では縦ノリなリズムに合わせてまたも会場が振動し、ダイバーも続出! 本質的なミクスチャー感とパワフルなプレイでオーディエンスを一体化させ、KNOTFESTのトリ前に相応しい多幸感に溢れたライヴを見せてくれた。これからもMWAMの快進撃は長く続いていくだろう。(KAORU)
MARILYN MANSON
2015年の"SUMMER SONIC"でも来日を果たし、その規格外のパフォーマンスに幅広いリスナーから大きな反響を得て話題となったが、今日のライヴはこれまでに見たなかで、最も"Freak Show"の要素が強く鮮烈な記憶を残した。荘厳なSEに乗ってメンバーが登場しTwiggy Ramirez(Ba/Gt)は暗黒のKKK(※アメリカの白人至上主義団体Ku Klux Klanの略)というような衣装で異彩を放っている。そのあと顔に奇妙なペイントを施したMarilyn Manson(Vo)がステージに登場し、マイク・スタンドをくるくると回している。「Angel With The Scabbed Wings」が始まるとステージにスモークが焚かれ、四つ打ちのリズムが軍隊の行進を彷彿させ、おどろおどろしい旋律が会場に広がる。
「Disposable Teens」ではオーディエンスと、"Yeah! Yeah!"とコーラスの掛け合いがありとても盛り上がっているのだが、Mansonはつらそうな歌い方で、途中で座り込んだり、遠くを見ているような表情はどうにもフツーじゃない。最新作『The Pale Emperor』に収録されている「Deep Six」ではステージ後方にMansonの顔が施された"666"の巨大な札がフラッグとして掲げられ、スタジアム感満載のダイナミックな演奏と腰をくねらせながら歌うMansonの姿を見ていると、自分がまるで見世物小屋にいるかのような背徳感を味わった。David Bowieの「Moonage Daydream」をワンフレーズ歌ったあとに「mOBSCENE」へとなだれ込み、客席に降りてきたMansonに狂喜したファンの表情がモニター・スクリーンに大きく映し出された。Mansonは松明を持って再びステージに登場し、デジタルな同期音とソリッドでヘヴィなサウンドが凄まじい迫力をもたらす「Irresponsible Hate Anthem」を包丁のようなマイクで歌い、シャウトの力強さがだんだんと増していく。しばし間が空き、ベースからノイズが奏でられて「The Dope Show」が始まると、Mansonは豪華な白いジャケットに衣装をチェンジして再び登場。Twiggyに絡んだり顔にマンソン札を貼り付けたりと様々な魅せ方を駆使し、「Sweet Dreams(Are Made Of This)」ではお馴染みの高い竹馬に乗って歌うというフリーキーなパフォーマンスを繰り広げた。ダークなロック・エンターテイメントの極みともいえる演出、痛々しささえ感じるシャウトも相まって、何もかもがシュールで異様。MARILYN MANSONの世界観を体現していたというより、あ、Mansonってガチでヤバい人なんだ......という本質的な異常性が浮き彫りになっていたように感じられ呆然としてしまった。アンコールの声が鳴り止まず、ラストに「The Beautiful People」がプレイされ、オーディエンスは狂乱の渦となった。(KAORU)
SLIPKNOT
開演からすでに9時間以上が経っていたが、この壮絶且つヘヴィなダーク・カーニバルはまだまだ終焉を迎えない。それどころか、本当に始まるのはこれからだと言わんばかりに期待に胸を膨らませた観客が、ずっと後ろの方までひしめき合ってモンスターたちの出現を待ち侘びていた。
左右にSLIPKNOTのロゴを配した真紅のカーテンを前にステージの方を注視していると、David Bowieの「Fashion」が流れ始める。今年1月に逝去した偉大な先達への敬意を表しているのだろうか......とそんなことを考えていたら場内が暗転してすっと幕が上がり、早くもオーディエンスの興奮はマックスへと引き上げられた。イントロダクションの「Be Prepared For Hell」が流れるなか、マネキンが激しく燃える映像がステージ後方に映し出され、その怪しげな雰囲気に呑み込まれる。ふとステージの手前の方に目を向けると、昨日同様、上手側のパーカッション・セットにClown(Per)のマスクが突き刺さっている。わかってはいたことだが、彼の出演キャンセルが知らされたのは開催前日の夜。突然すぎてなかなか受け入れられない事実はどうしようもないことだ(プロモーション来日までしていたことを考えると出演できなかった彼の方がつらかったことだろう)。メンバーが登場し、喚声が大きなうねりとなって会場全体に響くなか「The Negative One」がスタート! "トーキョー!!!!"というCorey Taylor(Vo)の絶叫でフロアを一気に焚きつけていく。前回のKNOTFESTが、最新アルバム『.5: The Gray Chapter』が発売されてまだ間もなかった時期の開催となったことを考えると、今回は確実にこの最新作が浸透しつつあるため、この曲で大いに盛り上がることが必然と言えば必然だったのだ。倒れそうになるほどの音圧がのしかかるも、すべてのわだかまりを捨てたかのように全力の声援で応えるオーディエンス。Clown不在を感じさせない......と言いたいところだが、やはり彼はいつもその存在感を異様なまでに発揮していただけあって、下手側に位置しているChris Fehn(Per)のみではカバーしきれていないところは否めなかった。しかし、その後も繰り出される「Disasterpiece」、「Eyeless」、「Liberate」といった初期の曲を全身で受け止めていくと、いつしかそんな思いはどこかへと去ってしまった。
そして前回から謎に包まれながらもその姿を現していたベースとドラムも実に安定感のある演奏で、バンドの核となるリズムをしっかりと担っていることが「Killpop」、「Vermillion」などのスロー・テンポな曲からも窺える。もちろん2013年に脱退したJoey Jordison(Dr)のプレイには到底......といった声も未だに聞かれるが、今のSLIPKNOTには今の音があるのだと改めて実感させられた。
CoreyがMCでClown不在についてオーディエンスに丁寧な説明をし、Clownのマスクが高々と掲げられて始まったのは、2ndアルバム『Iowa』からの往年のアンセム「The Heretic Anthem」! "If you're 555, then I'm 666"というキャッチーなサビを全員で大合唱し、フロアの観客もまだまだ暴れていくぞという意思を表明していく。加えてこの日唯一、4thアルバム『All Hope Is Gone』から「Psychosocial」も披露された。
さらに、前日は演奏されなかった「People = Shit」が4カウントでスタート! これは2日間参戦した人にとっては嬉しいセットリストになったのではないだろうか。待ってましたとばかりにフロアも大歓声で盛り上がり、ジャンプとともに大きなうねりを見せていく。Sid Wilson(DJ)のスクラッチも絶妙に冴えていたところは次に披露された「Custer」にも言えた。最新作の中でも初期曲を彷彿させるナンバーに、ダイバーが続出してサークル・ピットも発生するなど疲れ知らずのオーディエンスが暴れ回る。
フロアを大きくバウンスさせた「The Devil In I」、Coreyが何かに取り憑かれたかのようにまくしたてて叫びまくる「Everything Ends」と立て続けに披露したあと、いよいよ本編の終焉へと向かうべく1stアルバム『Slipknot』より名曲「Wait And Bleed」と「(Sic)」をドロップ! 大歓声のなか、"ドウモアリガト、トーキョー"と言い残してバンドはステージをあとにした。
そして迎えた2日間を締めくくる最後の最後のアンコール。まるで遊園地にいるかのような音楽が怪しく楽しげに会場全体に鳴り響き、これからさらに危険なショーが始まるぞと予感させる。と、Coreyがスキップしながら登場(!)し、ギターのノイズから「Surfacing」がスタートした。恒例の"ナカユビタテロー"のパフォーマンスもなんだか実に楽しい。ここまで来て疲れを一切見せないSLIPKNOTのメンバーは続く「Duality」でフロアをさらに煽っていくが、ここでオーディエンスに若干の疲れが見えた気がする(このときSLIPKNOTのパフォーマンス時間は余裕で90分を超えていた)。ワンマン・ライヴ並みの贅沢な長尺ライヴの最後を飾るのは「Spit It Out」。昨日とまったく同じアンコール曲ではあるが、本当の本当に最後だという彼らのこの曲に対する意気込みは尋常じゃないものだった。そして"ゲット・ダウン"とその場にいた全員を座らせる圧巻のパフォーマンス。疲れを見せたと思ったフロアはその次の一斉ジャンプで一気にもみくちゃになっていた。曲終わりにCoreyが広い会場を誇り高く見渡し、深々と頭を下げて観客に敬意を表した姿はとにかく眩しかった。
今回は直前になってA DAY TO REMEMBERとClownの出演キャンセルが発表され、ファンも落胆の色を隠せなかったが、それでもこれだけ大きな規模のフェスを開催してくれたSLIPKNOTには称賛と感謝の意を伝えたい。日本でここまでのレベルのラウド・バンドを国内外含めて一気に観ることができるのは、きっとKNOTFEST JAPANくらいだろう。相対する形で開催されている"OZZFEST"と共に来年以降の開催も期待したい。(今谷 重治)