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FEATURE

MARILYN MANSON

2020.09.09UPDATE

2020年09月号掲載

アメリカの光と闇を象徴するロック・アイコン"MARILYN MANSON"の新たな挑戦! ディープな混沌の世界へ誘う、ニュー・アルバム『WE ARE CHAOS』ついにリリース!

Writer 山本 真由

MARILYN MANSON、その名を聞いてみなさんはどんな印象を挙げるだろうか。スキャンダラスなロック・スター? アンチ・キリストのカリスマ? インダストリアル・ロック・シーンの革命児? どれも当てはまるようで、しかしどこにも収まっていない、そんな存在がMARILYN MANSONだ。
そして、もしもあなたがまだMARILYN MANSONの音楽に出会っていないとしたら、このタイミングで出会えることは、とてもラッキーかもしれない。今回のニュー・アルバム『WE ARE CHAOS』は、その名の通り混沌と深い闇を内包したセンセーショナルな作品でありつつも、普遍的なロックと根源的な音楽の喜びに満ちた、MARILYN MANSON史上最高に美しいアルバムだからだ。

Marilyn Manson=Brian Hugh Warnerの音楽にはもともと、激しい怒りというモチベーションがあった。幼いころに受けた、厳格なカトリック教育による絞めつけは、少年をここではないどこかへ、という欲求に駆り立てるのに十分だったろう。MARILYN MANSONは、しばしば反キリスト教の象徴的な存在として認識されているが、実際は神や信仰そのものに対する批判ではなく、アメリカのキリスト教社会や保守派に対する反抗という意味が大きい。

そんな鬱屈した少年時代から逃れるようにロックに目覚め、大学でジャーナリズムと劇文学を学ぶ傍らバンドを始めた彼は、自らを"Marilyn Manson"(アメリカの光と闇を象徴する存在、マリリン・モンローとチャールズ・マンソンからとった名前)と名乗るようになった。
そして、誰もが彼を知るよりも以前から確信的に自己の象徴化を徹底していたMARILYN MANSONの存在は、インダストリアル・ロックの先駆的存在 NINE INCH NAILSのTrent Reznor(Vo/Electronics/Gt)に見いだされ、彼が主宰するレーベル Nothing Recordsよりデビュー・アルバム『Portrait Of An American Family』(1994年)をリリースすることとなる。

さらに、シーンに衝撃を与えたデビュー作からわずか2年、『Antichrist Superstar』(1996年)をリリースすると、一部のカルト的人気にとどまらず、商業的な成功も収め、バンドの地位は確固たるものとなり、時代の寵児となった。
その後も、コンスタントにリリースを続け、毎回ファンを驚かせるような音楽的変化と、新しい試みを取り入れつつ、その才能を遺憾なく発揮してきたMarilynだが、そのアウトプットは、もちろん音源にとどまらない。キリスト教団体から抗議を受けるのはもちろん、時にはマスコミからも批判されるような、少々やりすぎとも言えるくらいの激しいライヴ・パフォーマンスは、それを嫌悪する人々と比べ物にならないほどの熱狂的なファンを生み出した。

そんなMARILYN MANSONが、今この時代に新作を発表する。今作は、コロナ禍でまさに世界が混沌を極めるより以前に制作されたものだ。しかし、見えない敵との闘いにより、抑圧されストレスを抱えた今の社会にこそ、必要なアルバムとなるだろう。

今作は、第61回グラミー賞で6部門にノミネートされたBrandi Carlileの作品をプロデュースしたことでも知られる、ミュージシャンのShooter Jenningsと共に制作。6thアルバム『Eat Me, Drink Me』(2007年)以降、アメリカのルーツ・ミュージックであるカントリーやブルースなどを表現に取り入れてきたMarilynだが、カントリー・ミュージシャンのShooterを共同制作に選んだのには、ハードなだけでない生身の感触のあるロック・アルバムを作りたいという意図があったのかもしれない。
実際、MarilynとShooterが共に影響を受けているアーティスト、David Bowieを彷彿とさせる70年代風なグラム・ロック・テイストの楽曲もあり、耽美で背徳感溢れる世界観が構築されている。かと思えば、陰鬱で攻撃的なスタイルのインダストリアル・ロックにもしっかりと存在感があり、さらには突如現れるポップな旋律に踊らされるなど、まさにカオスな音楽性だ。だが聴いていると、その世界にのめり込み、不思議と怒りや憎しみが浄化されているような感覚がある。

一見して不穏でどこか感情の読めない表情だが、まっすぐにこちらを見据えたMarilynが描かれたジャケット・アートワークは、Marilyn自身によるものだ。90年代後半から、絵画や工芸といったアートも発表しているが、彼の音楽を彼のアート以上に表現できるものはないだろう。美しさと醜さ、相反するものが混在するこの混沌の世界に、音楽でアートで生き方でそれを象徴してきたMARILYN MANSONのすべてがここにある。


▼リリース情報
MARILYN MANSON
ニュー・アルバム
『WE ARE CHAOS』

2020.9.11 ON SALE!!
[Caroline International]
※解説/歌詞/対訳付
UICB-10001/¥2,500(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV

1. RED BLACK AND BLUE
2. WE ARE CHAOS
3. DON'T CHASE THE DEAD
4. PAINT YOU WITH MY LOVE
5. HALF-WAY & ONE STEP FORWARD
6. INFINITE DARKNESS
7. PERFUME
8. KEEP MY HEAD TOGETHER
9. SOLVE COAGULA
10. BROKEN NEEDLE
11. WE ARE CHAOS [ACOUSTIC] ※ボーナス・トラック
12. BROKEN NEEDLE [ACOUSTIC] ※ボーナス・トラック

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