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FEATURE

MARILYN MANSON

2015.01.14UPDATE

2015年01月号掲載

アメリカ社会の闇を体現し あらゆる悪徳にまみれた反逆のスターが提示する、新たなアート、その最新形

Writer 井上 光一

おそらく、前作『Born Villain』で展開していた、初期のサウンドを彷彿させるへヴィネスに歓喜したファンにとっては、またも賛否両論となる作品ではないかと思う。アメリカが生んだ悪夢、異形のカリスマMARILYN MANSONによる、約3年振りとなるニュー・アルバムである。
 
ダークなスロー・ブギー調の「Killing Strangers」で幕を開ける本作の全編を通して感じられるのは、ギターの音作りが明らかに変わったということ。バンド復帰後は主にギタリストとして活動していたTwiggy Ramirezが、クレジットを見る限りでは本作においてはベーシストに戻ったようで、新たにギタリスト兼プロデューサーとして作曲も手掛け、ツアーも共にするTyler Batesの参加による影響だと想像する。「Deep Six」はメタリックなギター・リフが導入された、言ってしまえば典型的なMARILYN MANSON印のナンバーであるのと同時に、音の感触が前作とは違うことに注目したい。Aメロのグランジ風のラフなギターにせよ、サビにおける裏メロ的なフレーズにせよ、インダストリアル・メタル特有の無機質さは感じられない。「The Mephistopheles Of Los Angeles」や「Slave Only Dreams To Be King」といった、彼らが得意とするシャッフルのビートで進行していく楽曲に関しても、公衆をアジテートするようなへヴィネスではなく、ルーズでダーティなロックの匂いが濃厚なのである。シンプルなベース・ラインで引っ張っていく「The Devil Beneath My Feet」の哀愁すら漂う妖艶なメロディも、決して派手ではないながらも印象深く、シンガーとしてのMARILYN MANSONの多彩な表現力が、改めて浮き彫りになっているということは、特筆すべき点と言える。
 
過去の作品で最も本作に近い質感を持ったアルバムを挙げるとすれば、オーセンティックな泣きのギターやメロディを前面に押し出して、内省的な作風で物議を醸しだした『Eat Me, Drink Me』であろう。もちろん単純に同じ路線というわけではないが、MARILYN MANSONが持つ強烈なイメージ、いわゆる『Antichrist Superstar』のようなショック・ロックを求めている聴き手からすれば、肩透かしを食らいかねないサウンドであることは、正直なところ否定はできない。本稿の冒頭で賛否両論と書いたのは、つまりそういうことであるが、安易に変わってしまったとか落ち着いてしまったとか、そういう表面的な印象で切り捨ててしまうには惜しい魅力が、本作にはあると思う。あえて言うなら、私自身も90年代当時、『Antichrist Superstar』に大いなる衝撃を受けた人間であり、あのころのMARILYN MANSONが持っていた、世界に対する徹底的な反逆精神、悪趣味なユーモア、過剰なまでの破壊的な演出......そういった要素を求めてしまう思いは少なからずある。同時に、アーティストとしての、ミュージシャンとしてのMARILYN MANSONは、そのようなファンが熱狂的に求めるイメージ像だけでは語れない、複雑で多面性を持った存在である、ということも承知しているつもりだ。
 
本作のタイトルは、直訳すれば"蒼ざめた皇帝"となるが、ジャケット・カバーのMARILYN MANSONの表情はぼやけている。そこにどのような意味があるのか。誰かが用意してくれた結果のみを、検索するだけで手に入れることができる時代において、インスタントな解答などは用意せず、聴き手のイマジネーションを広げていくのが、MARILYN MANSON流のアートである。サウンドの変化はあっても、危険な毒の如きその作用は未だに健在であると言えよう。

 

国内最強ラウドロック・バンドたちからMARILYN MANSONへ捧げるコメントが到着!

日高 央 (THE STARBEMS)

大人になったMARILYN MANSONは更にやっかいだ......アメリカの表層的な栄光をひっくり返し、次々と闇を暴露してきたモンスターたちは、ついに我々リスナーの化けの皮を剥がしにかかってきた! 相変わらず皮膚の裏側にまとわりつくような声とサウンドは、時としてロカビリーっぽい50's感や、カントリーのような荒涼感をまとって俺たちのノスタルジアを刺激する......心の中の砂漠に鮮血を垂らし続けるような、破滅の中にも救いを感じるサウンドは流石重鎮のヘヴィさ!

ミヤ (MUCC)

初めて触れたのは19の頃、『Smells Like Children』。バンドのSE用のジャケ買いで出会う。最高にグロテスクな世界観の中のポップネス。相当な影響を受けた。初めてのLIVEはSWEDENのFesで。盛り上がりすぎて、広大な野外の会場が地鳴りを起こしてた。『THE PALE EMPEROR』ではシンプルに骨太なサウンドで良質な、グロテスクな、ロックの優しさで3年ぶりにまたマンソンが地球を揺らす。

ネロ (MERRY)

俺がMARILYN MANSONのあの衝撃的な音楽とパフォーマンスに出会ったのは、紛れもなく1996年発表のアルバム『Antichrist Superstar』だった!! X JAPANのhideさんの口からMARILYN MANSONの名が出てきたのがきっかけ。あれから19年、今作『THE PALE EMPEROR』でもやっぱりアナタはみんなのスーパー・スターでキチ〇イです!

Tatsuya (Crossfaith)

歌詞、曲、ルックスの全てがドギツくインパクトがあって印象に残る! 彼らを知ったのはまだ俺が小学生の頃。兄の部屋から爆音であのパンチの効いたサウンドとクセのあるヴォーカルが聴こえてきたのがキッカケでした。そこから自分も好きになって色々調べてみたらバンド全体のヴィジュアル・イメージの強いこと!ただ実際にライヴで観たことないので凄く観てみたいです! 彼自身の頭の中で描いている独特なヴィジョンが気になるし、特に独自のスタイルを確立したところは尊敬できますね。

ナオミチ (KNOCK OUT MONKEY)

バンドを始めたばかりのときにマンソンの海賊版? DVDで「Sweet Dreams」を初めて観て聴いて、気持ち悪いし苦手だなーって思ったんだけど、それから家でも学校でもずっと頭から離れなくて1週間後にはCDが家にありました(笑)。誰も言えないことを平気で言えるマンソンは僕の中で永遠のロック・スターです。今回の新譜でまた中毒者が増えるのは間違いないですね。

JUNE M (THREE LIGHTS DOWN KINGS)

僕がMARILYN MANSONに出会ったのは高校生の時。当時『Mechanical Animals』というアルバムにとんでもない衝撃を受けました。そして今回の『THE PALE EMPEROR』。変わらない世界観があって、聴いてると"マンソンの世界に入り込んでいく"そんなアルバムだと思いました。



MARILYN MANSON
9thスタジオ・アルバム
『THE PALE EMPEROR』
[Victor Entertainment]
2015.1.21 ON SALE!!
 
【デラックス・エディション】 SHM-CD
VICP-70200 ¥2,900(税別)
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※ボーナス・トラック3曲追加
※超豪華特殊パッケージ
※SHM-CD採用
 
【通常盤】 CD
VICP-65261 ¥2,500(税別)
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1. Killing Strangers
2. Deep Six
3. Third Day Of A Seven Day Binge
4. The Mephistopheles Of Los Angeles
5. Warship My Wreck
6. Slave Only Dreams To Be King
7. The Devil Beneath My Feet
8. Birds Of Hell Awaiting
9. Cupid Carries A Gun
10. Odds Of Even
11. Day 3 ※デラックス・エディションのみ
12. Fated, Faithful, Fatal ※デラックス・エディションのみ
13. Fall Of The House Of Death ※デラックス・エディションのみ

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