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INTERVIEW

the GazettE

2020.03.02UPDATE

2020年03月号掲載

the GazettE

Member:URUHA(Gt) AOI(Gt)

Interviewer:杉江 由紀

長き旅路の中で、the GazettEは自らの本質をさらに奥深くまで掘り下げていったことになるだろう。2018年7月より2019年9月に至るまで、約1年2ヶ月にもわたって日本国内はおろか北米、南米、EU、アジアなど全世界61公演を成功させてきた彼らのツアー・ファイナル公演の模様を収めたこの映像作品『LIVE TOUR18-19 THE NINTH / FINAL「第九」LIVE AT 09.23 YOKOHAMA ARENA』から感じられるのは、熟練したライヴ・バンド、the GazettEの持つ甚大な底力と圧倒的な熱量にほかならない。今春の結成18周年を目前に発表されるこの作品は、間違いなく彼らにとってひとつの重要なメモリアルとなるはずだ。

-今回の映像作品『LIVE TOUR18-19 THE NINTH / FINAL「第九」LIVE AT 09.23 YOKOHAMA ARENA』は、ツアー・ファイナルのライヴ映像を軸としながら、初回生産限定盤には、ワールド・ツアー("WORLD TOUR 19 THE NINTH PHASE #04 -99.999-")でのオフショットを含めたドキュメントも含まれた大作となっております。そして、今作品は2018年6月に発表されたアルバム『NINTH』からの流れを総括するものにもなっているように感じるのですが、URUHAさんとAOIさんからしてみると、すでにアルバムの制作の段階で、ライヴに対する理想的なヴィジョンというのもある程度は見えていたことになるのでしょうか。

URUHA:それはなかなか難しい質問ですけど、基本的なところでは、自分たちの理想通りにライヴをやっていくことができたんじゃないかと思ってます。もちろん細かいところで言ったら予想外なこともいろいろあったんですけど、当初バンドとして目指していたことはツアー・ファイナルまでにやり遂げられましたし、もともと目指していた方向自体も間違ってはいなかったと感じてますね。

AOI:過去にやった『DIVISION』(2012年リリースのアルバム)のツアー("the Ga-zettE LIVE TOUR 12-13[DIVISION]")のときにはステージ上に象徴的なオブジェがあったり、『DOGMA』(2015年リリースのアルバム)のとき("the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC")はメンバーがステージ上のいろんなところから出てきたり、ツアー・ファイナルっていうと、これまでは何かと演出の面で凝ったこともやってきていたなかで、今回の場合はあえて舞台装置なんかもベーシックな感じで臨んだところがありましたからね。バンドが持っている力そのもので、どこまでライヴを成立させられるのか? という点に挑戦することができたので、そこはまさに自分たちの描いていたイメージ通りにステージを展開していけました。

-これは『NINTH』がリリースされた当時の激ロックで、ディスク・レビューをさせていただいた際にも記したことなのですが、そもそも、あのアルバムはthe GazettEが自らの持つ本質を改めて掘り下げたものでもありました。この点については今作中でRUKI(Vo)さんもコメントされておりますが、当然バンドとしての本質を突き詰めていくという姿勢は、そのあとのツアーでも一貫していたということなのでしょうね。

URUHA:そうだと思います。『DOGMA』なんかはイメージ先行で音を作っていって、その世界をバンドが表現していくっていう方法で作った作品でしたけど、『NINTH』の場合は、あくまでもthe GazettEっていうものが作品のイメージの中心にある作品でしたから。ライヴにおいても、バンドの姿そのものを強く打ち出していくことになりましたね。

AOI:ライヴって、ショーとしての側面もあるじゃないですか。でも、強いて言うなら、今回の場合は僕らのバンド感がより色濃く感じられるんじゃないかと思います。

-ライヴ本編はもちろんのこと、楽屋の様子やリハの模様を収めたドキュメント映像、各メンバーのコメントなどが収録されている点も今作は非常に興味深いです。個人的にはURUHAさんが海外ツアーの際のオフショットで発言されていた、"どれだけ準備や練習をしていたとしても、本番でパニックになったら終わりだ"という言葉が特に印象的でしたね。これだけのキャリアを積んできていても、そう感じるのか......と思いまして。

URUHA:いや、むしろそこは経験を積んできているからこそですよ。いざ何かが起きたときにはいきなりパニックになりがちというか。綿密に考えていたはずなのに、意外と気持ちが空回ってしまうなんていうこともたまに起こったりしますし。ライヴの場で常に自然体でいたいなら、どんな状況でもパニックにならないということがすごく大事なんです。あれは完全に、自分に対して言い聞かせてる言葉ですね。

-では、この質問もさせてください。国内、海外も含めて、今回おふたりが実際にツアー中"パニクった"場面というのはあったりしたのですか?

AOI:今回はあんまりなかったかなぁ。海外ではちょっと慣れないこともあったので、そこに戸惑ったっていうのは多少ありましたけど。向こうって、バラードのセクションでも歓声がすごく大きいんですよ。

-たしかに。日本のオーディエンスがバラードでは静かに聴き入ることが多いのに対し、欧米では感情露わに盛り上がるというのがひとつの傾向ですものね。

AOI:そうそう。繊細な音で弾かなきゃいけない場面で、自分の音が歓声にかき消されちゃったことがあったから、あれはパニックというか、びっくりしましたね。ある程度は予測もしてたものの、まさかあれほどくるとは......! っていう(笑)。

-それだけファンの方々の熱量がすごかったというのは嬉しいことでしょうけれども。

URUHA:嬉しいことではあるんですけど、客席の熱に呑み込まれちゃうと......っていうことなんですよね。どんなときも自分の気持ちはしっかり持ち続ける必要があるんです。

AOI:昔はね、海外でライヴをするなんていうと"すみません、お邪魔します。もし良かったら聴いてください"的なモードだったりもしたんですけど(笑)、さすがに今は、なかなかそうもいかなくなってきました。たいしたアプローチもしてないはずなのに、行くと普通に2,000人とか、3,000人とか入ってくれてるんですよ。

-10年ほど前にはたくさんのバンドが集客規模の大小にかかわらず、欧米でもよくツアーをやっていたものですが......今やその流れもずいぶんと下火になってしまいました。それなのに、the GazettEが現在もそれだけ歓待されているというのはかなりすごいことかと。

AOI:不思議ですよね? なんでそんなに入ってくれるのか、よくわかんないんですよ。

URUHA:しかも、それこそ2回くらい前にやったワールド・ツアーのときまでは、興味本位って言うとあれですけど、ちょっとしたもの珍しさみたいなところで来てくれていた人たちも多かった印象なんですけど(笑)、今回の海外公演は、ほんとにthe Ga-zettEのことが心から好きで来てくれてるんだなっていう感じが、強く伝わってきたのも嬉しかったです。

-それから、今回の映像作品中では、おふたりがツアー用機材についてのお話をされているシーンもありますが、ライヴ・バンド、the GazettEにおけるギター隊の音が今回のツアーを経て変化していったのは、具体的にどのようなところでだったのでしょうか。

AOI:その点については映像のコメントの中でも言ってますけど、今回のツアーを始める時点で僕の音は大きく変わりました。要は、デジタル系の機材を中心にシステムを組むようになったんですけど、それは海外でやることや、Zeppクラスとは違う、高田馬場AREAくらいの小さいハコでもやることが決まってたからなんですよね。身軽なほうがいいし、どこでやってもなるべく音が変わらないようにしたかったし、結果的にそういう体制でやったことで、無駄なストレスを感じることなくやることができました。ただ、アナログの良さっていうのもわかってるぶん、だんだんやっていくうちに物足りなさが出てきたのも事実かな。やっぱりアンプを通したアナログな音の太さとか力強さとかもいいもんだな! と再確認したところもあるんです。そういう意味で、今回のツアーを終えたことで、今後は両方を交ぜながら使っていくというやり方も、新しく作っていきたいなと考えるようになりました。

URUHA:自分の場合も、『NINTH』を出す前後では、振り返ってみると"前はこんなセッティングでやってたんだ!?"と思うくらいに変化しました。『NINTH』を出す前はライヴでもパソコンでプラグインを立ち上げて音を出していて、相当デジタル寄りになってたんですけどね。それは音の選択肢を増やしたかったし、各曲でいろんなことをやれるようにしたかったからなんですよ。でも、その体制だとどうもトラブルが多くなりがちで。だから、『NINTH』が出て以降はフット・スイッチ系のマルチ・エフェクターを使って、安定性を保っていくようになったんです。音色的にやれることを増やすよりも、まずは、ライヴの流れを大切にできるようにしたのは正解でした。

-生モノとしてのライヴのクオリティを保つことも大事ですものね。

URUHA:ええ。ただ、AOIも言っていたみたいに、デジタルの機材ばっかりを使っていると音が単調になりがちなので、そこは細かいタッチのニュアンスや、空気感で醸し出していくようにも心掛けました。そのあたりの大切さは、ワールド・ツアーを回ることで身に染みてわかったことでもあったので、機材的にも、自分のプレイに対して素直に応えてくれるアナログなものを段階的に取り入れるようにしていって、最終的にファイナルではヘッド・アンプも使うようになってましたね。

-長期間にわたったツアーだけに収穫も多かったということでしょうか。

AOI:ほんとそうですね。幸い得たものはいっぱいありました。

URUHA:いろいろと試せる場があったのは良かったです。