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LIVE REPORT

the GazettE

2017.08.19 @富士急ハイランド・コニファーフォレスト

Writer KAORU

the GazettEによる9年ぶり3回目の開催となる大型野外ライヴ"LIVE IN SUMMER 17「BURST INTO A BLAZE 3」"が、8月19日に富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われた。そのレポートをお届けする。

前回のインタビューでもメンバーは天候の心配をしており、これまでに行われた2回はどちらも小雨だったとのこと。今回は晴天祈願企画"BRING GOOD WEATHER!"と題し、SNSではファン手作りのてるてる坊主の画像が数多くアップされ、前日には公式Twitterアカウントにも5つの個性的なてるてる坊主の姿が。当日会場には展示スペースが設けられた。その想いが伝わったのだろう。日本各所が雷雨に見舞われた1日だったものの、コニファーフォレストは奇跡的な晴天......とはいかなかったものの、雨は降らずに快適な曇天の中でライヴが行われた。

アーカイヴ・ギャラリー"EXUVIA"や、メンバー・プロデュースのフードなど、祭り感満載の企画が用意され、RAD MARKETのマーチも一新。バックに"JAMMIN JAMMIN"と描かれた、IRON MAIDENを彷彿させるフォントとカラーにレゲエ用語を組み合わせた秀逸なデザインのTシャツが目立っていた。

開演までのBGMを楽しんでいたところ、ライヴにおける注意事項において"アタマを振るときに椅子にアタマをぶつけるなどといったことが多発しております"という言葉選びに、少しクスっとしてしまった。

"ヴィジュアル・ロックの最高峰が富士山に帰ってきたぞ!"というテンションの高いアナウンスから歓声が沸きメンバーが登場すると、金髪ボブというRUKI(Vo)の姿や、この真夏の野外で全員が黒装束というヴィジュアルにただならぬこだわりが感じられる。

ファンからの投票によって決定されたセットリストの1曲目に演奏された「Nausea&Shudder」では、"羽を見て~"という歌詞に合わせて両腕をひらひらと動かしたり、曲の最後に手をかざしたりと、この日のRUKIは動きやMCひとつを取っても、いつにも増してヴィジュアル系然としていたように思う。「INSIDE BEAST」ではキメのタイミングでステージから16本の煙柱が噴射され、メンバーの動きも激しくなっていく。「Filth in the beauty」までの3曲が終わると、"今日雨が降ると思った奴......?"とRUKIが問い掛け、ちらほら上がる"はーい"という答えに"だまれ"と一蹴(!)。そして"今日はサイコーの夜になる。約束するぜ"と、かっこつけた感がたまらなく素敵に感じる。

「ATTITUDE」、「GABRIEL ON THE GALLOWS」、「VORTEX」という、まさにthe GazettEを代表するラウド曲のセクションでは、メンバーのテンションの高さがパフォーマンスにありありと表れる。花道の中央では麗(Gt)がアームを駆使したソロを弾く姿をたっぷりと見せてくれた。

ブルージーなギターをかき鳴らす葵の姿に目を奪われる「GENTLE LIE」では、じっと聴き入るファンの姿も印象に残るものだった。ツイン・ギターによって構成される和音が特徴的な「REGRET」、テンポ遅めでブラック・ミュージックの横ノリを際立たせた「FADELESS」といった中盤のセクションを終えると、戒(Dr)が叩く前のめりなビートがパンキッシュなノリを加速させた「赤いワンピース」、「Psychedelic Heroine」では、ばっちりなキメに鳥肌が立ってしまう。REITAのベースの重い響きが快感な「SLUDGY CULT」では、ファンの高いジャンプが会場全体を大きく揺らす。

"声が風に飛ばされちゃうんすよ。俺の声も聞こえないでしょ? だからめちゃめちゃ腹から声出さないと、消えちゃうんですぅ"といったかわいらしい言い方、"今日はお前らの声を聴きに来たと言っても過言ではないわけですよ。だから明日のことは考えずに、ワタクシたちに......"と、言葉途中で自分で言ったことに自分で笑うといったRUKIの姿にたくさんの笑みがこぼれた。

本編のラスト・セクションは「IN THE MIDDLE OF CHAOS」から始まり、そこからはベスト・オブ・暴れ曲攻め。the GazettE流デジタル×ラウドの醍醐味がたっぷり詰まった「VERMIN」と「UGLY」を改めて聴いていると、海外のラウドロックにはない音像だなということに気づかされる。ヴィジュアル系のサウンドならではと言えるヴォーカルの節回しはもちろん、裏で入るハットの音の大きさが特に顕著で、この音があるからこそ表のリズムが際立ち、ノリやすくなるのだ。また、ドラムのフレーズが少し足されていたよう。「HEADACHE MAN」では、この日一番の熱量がステージから後方まで波のように伝わり、重低音の快楽の中毒症状のようなものが身体にガツンと込み上げてきた。「関東土下座組合」で華々しいラストを終えると同時に日が落ちてきた。

アンコールは「LAST HEAVEN」でしっとりと始まり、少し暗くなった風景をキラキラとした青いライト、「ガンジスに紅い薔薇」ではステージ全体がカーニバルのようなカラフルな装いに彩られる。毎回the GazettEのライヴでは演出のこだわりや豪華さに感動するのだが、この夜も野外というステージをふんだんに生かした素晴らしい光景を何度も見せてくれた。

RUKIが"あまりにも気持ち良くてさ、今日帰りたくないな。雨降らなかったね。絶対に晴れると思ってみんなでてるてる坊主を作ったんですけど......"というと拍手が沸く。"お前らも作った? え、作ってない? え、殴るよ?"というお叱りにまた笑みが沸き、"まだまだひとつになってないんじゃないか?"と、端から端まで気合たっぷりの喝が入る。「BLEMISH」、「Ruder」、「LINDA ~candydive Pinky heaven~」の3曲を演奏したあと、"ここにいる全員サイコーだった。愛してます。ありがと"と気持ちが込められたひと言に、会場の全員が愛おしさを感じたのではないだろうか。

「Knockin' On Heaven's Door」が流れ、再度メンバーがステージに登場すると、バンドを代表してRUKIがファンに感謝の気持ちを伝えた。

"いろんなことに挑戦していろんな景色を作ってきました。どんなにつらいときも、このメンバーで立ち止まらずに乗り越えてこられた。9年前より確実に成長してこのステージに立つことができました。みんなも乗り越えてきてここに来てくれたと思うと、感謝の気持ちでいっぱいです"

"15周年イヤーという区切りの年にみんなと夏らしい祭りができたことを幸せに思います。マジでありがとね"

the GazettEは、たくさんのヴィジュアル系バンドの中で、極めてファンの幸福指数が高いバンドではないかと感じている。最も、と言っても過言ではないんじゃないか。激ロックに掲載されているラウド系バンドと比べると、ヴィジュアル系には"良くも悪くもクローズド"な印象がつきものだと思うが、彼らの場合は"良くも"の比重が大きく、置いてけぼりにしないという気持ちを感じるファンとの距離感も絶妙。そして何よりも重要なことは、作品とライヴのクオリティが極めて高いということ。そうでなければ、"一生卒業できないバンド"と形容されることはないだろう。

「TOMORROW NEVER DIES」の演奏と共に打ち上げられた花火の美しさは一生忘れない。

終演後、スクリーンには10月に行われるハロウィン・ライヴ"アビス"と"LUCY"の予告映像が流れた。毎回凝ったトレイラーで我々を楽しませてくれるが、今回の映像の完成度たるや、トレイラーというものに対する価値観を覆すようなクオリティで、れっきとした"作品"と呼ぶべきものだろう。こんなにワクワクするトレイラーは初めてと言っていいくらいの衝撃だった。

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