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INTERVIEW

the GazettE

2022.12.16UPDATE

2022年12月号掲載

the GazettE

Member:麗(Gt) 戒(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

時は巡り、20年という歳月の中でthe GazettEはここまでに幾度もの変化を経てきたことになるのだろう。このたび発表されることになった『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』は、そのタイトル通りに3つのコンセプト"SINGLES"、"ABYSS"、"LUCY"でカテゴライズされたベスト盤だ。彼らは12月21日まで続くツアー[the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 02-"The Unknown"]でも過去のアルバムと対峙する場を設けているが、ここではthe GazettEの過去を改めて統括することになった経緯をギタリスト 麗とドラマー 戒に問うてみることとしよう。

-the GazettEはこの取材時点で全国ツアー[the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 02-"The Unknown"]の只中にありますが、今回は結成20周年という節目を迎えていることもあり、各地にて最新アルバム『MASS』(2021年リリース)の収録曲たちとともに、アルバム単位で過去の楽曲たちも演奏しているそうですね。そうしたライヴを経てきているなか、今麗さんと戒さんが実感されているのはどのようなことでしょうか。

戒:今回のツアー内容が自分たちの過去も辿っていくようなものになったのは、今年が20周年だからというよりもアルバム『MASS』が10枚目のアルバムである点がむしろ大きくて、それと過去の作品を掛け合わせていくライヴを各地でやってきているわけなんですよ。こういうコンセプト性のあるツアーは実を言うと今までやったことがなかったのもあり、面白そうだねということで始めましたけど、やっぱり過去のアルバム曲については久しぶりにライヴでやるものも出てくるので、演奏面では思っていた以上になかなか大変なところがあるのは事実ですね(笑)。ただ、やってみたら反響も結構いいですし、自分たち自身でも毎回セットリストの違いがとても面白くて、一本一本をかなり楽しんでやれてます。

麗:自分たちにとって一番新しい『MASS』の曲たちと、昔のアルバムの曲たちを1本のライヴでやっていくにあたっては、当然それぞれのアルバムの色というのが違うので、そこをいかに打ち出していくかが今回のツアーではとても大事になってますね。とはいえ、これまでに出してきたアルバムの枚数自体もそれなりにあるし、その収録曲をすべてやっていくのは現実的に難しいので、だいたい1コンセプトごとに5曲くらいやっていく感じではあるんですけど、その5曲をそれぞれのライヴの中でやっていくことで、今までにはなかった空気感や、今回ならではの空間をツアーの中で作れている手応えはかなりあります。『MASS』の曲たちとそれぞれの過去のアルバム曲たちが、すごくいい相乗効果を生んでいるんじゃないかと思いますね。

-ちなみに、各ライヴでやる過去アルバムの"5曲"を選出する際の選択基準というのは、何かバンド内で決まっているのですか?

戒:そこはメンバーみんなで話し合ったとき、今年5月から7月にかけての[the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"]でやった曲たちは外そうっていう意見が出ました。要は、あれは『MASS』の曲たちを初披露していったツアーだったので、それにプラスしてライヴを成立させていくための"わりと普段からやっている曲たち"は、あえて外そうということになったんです。あと、各アルバムの持っている特性を打ち出す意味ではそこがより色濃く出ている曲をやっていこう、という話も出ました。そして、流れ的に今年はFCのほうのイベント・ライヴもあったんで、そこもすべて曲が被らないようにということは意識してました。

麗:曲調の面で言えば、歌モノばかりを選ばないっていうことも考えたところではありましたね。激しいトーンの曲は必要だし、セットリストの中のブロックごとに、それぞれまんべんなく曲たちを当てはめていくというか。バランスを見ながら1本ごとのライヴを構成していく、ということも重視しながらやってます。

-そうしたなか、このたびはバンドの20周年を記念した『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』が世に出ることとなりまして、こちらはタイトルからもわかる通り、3枚組というボリューム感のある作品に仕上がっております。なお、ここでの"3 CONCEPTS"とは"SINGLES"、"ABYSS"、"LUCY"というカテゴライズで楽曲たちが3枚に振り分けられていることを意味するようですが、20年の月日をベストとして凝縮していくうえでなぜこのようなまとめ方に至ったのか、改めて解説をいただけますと幸いです。

戒:ベスト盤となると、まずは自ずとシングル曲たちが選ばれていくというのが普通だとは思うんですよ。ただ、自分たちの場合はそれだけだとどうもピンと来なくて、the GazettEの持っている色をいろんなかたちで表現してこそベストなんじゃないか? という意見もあり今回は"SINGLES"、"ABYSS"、"LUCY"という3枚に曲たちを分けて収録していくことにしたんです。特に"ABYSS"、"LUCY"に関しては我々からすると非常に耳馴染みのある言葉で、それぞれ両極端なテイストを意味してます。

麗:the GazettEにとって"ABYSS"、"LUCY"というのは、昔から確たる部分として持っている二面性ですからね。

-思い返せば、2011年にはFC限定の2デイズ・ライヴ・ツアー"LIVE TOUR 2011 TWO CONCEPT NIGHTS ABYSS/LUCY~異なる二つの顔 退廃と本能 両極の二夜~"や、2017年にハロウィン・ライヴとして"HALLOWEEN NIGHT 17 THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス-ABYSS- LUCY-ルーシー-"が行われたこともありましたし、"ABYSS"と"LUCY"が静と動を意味するキーワードであるということは、すでにthe GazettEのファンの方々にはよく知られていることでしょうね。

麗:サウンド的な違いという意味で言えば、基本的に"ABYSS"はthe GazettEの生み出す暗い世界観が中心となっているものですし、一方の"LUCY"のほうは激しい部分が強く出ているものなんですよね。その両面はthe GazettEにとっての重要な主軸になっているので、そこをこのベストでも伝えたいという気持ちはやはりありました。

-the GazettEの真髄に根づく暗さと激しさが交錯するところに、シングル曲たちの持つキャッチーさやポップ・センスまでが重なってくるわけですから、まさに今作『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』は、まるで隙なしの選曲になっていると言えましょう。

麗:うん、たしかに(笑)。

戒:なるべくして"隙のないもの"になった、ということなんですかね(笑)。

-もっとも、この"ABYSS"と"LUCY"の中にどの曲をエントリーしていくのか、という点では選考に悩まれたところもあったのではないですか。

麗:そのへんは、メンバーとオンラインでミーティングしてスプレッドシートに曲をはめこんでいきながらああでしょ、こうでしょって、いろいろ意見を交わしつつ決めていきました。感覚としては、ライヴのセットリストを決めていくときにちょっと近かったかもしれないです。

戒:中には、自分たちで改めて聴いてみても"これって本当に激しい曲=LUCYのカテゴリに入るの?"とか、そういう曲もあったりしたんですよ。ABYSSのほうにしても、バラードだから必ず入るのかっていうとそこも実は違いますしね。ある曲に関しては、具体的に"ABYSSに入れるには曲としてきれいすぎない?"って意見が出たこともあったし、単純に曲調としてこうだからというだけではなく、今回のベストではそれぞれの曲が持っている深いところの意味や特性なんかも考慮しながら、みんなで選曲していくことになりました。

-なお、今回のベストでは全曲をリマスタリングしていくことになったそうですが、それぞれ制作した年代も違えば、作品コンセプトも違う楽曲たちを1枚に仕上げていくという点もふまえつつ、何かバンド側からオーダーしたことはありましたか。

麗:主に重視したのは曲間の長さの点でしたね。今回の場合だと音質の変化というものは特に求めていなくて、1枚ごとに全曲を並べたときの音のレベルについて今の感覚で多少の調整をしたくらいです。昔の曲だから意識して変えました、みたいなことは一切やってません。

戒:そこはたぶんメンバー全員が同じように考えていたところで、俺としても特に何か言うということはありませんでした。単純に、1枚ごとに聴いたときの違和感をなくすために音圧を揃えたりした程度です。

-では、そのリマスタリングが終わってから今作『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』を聴いてみたときに、おふたりそれぞれで、"今の自分は当時よりも成長or変化している"と自覚されたような部分というのは何かありました?

麗:なんだろうなぁ。それこそ、今やってるツアーで過去の曲を弾いてても、"音の作り方が今とこの時代では違うな"って思ったりはするので、当時と比べれば今のほうがあらゆる面でのクオリティが上がっているのは間違いないですね。もちろん、その当時はそれが自分たちにとっての最善ではあったんですけど、そういう変化は自分でも感じます。

戒:俺も、聴いてて"あぁ、この頃の自分にとってはこういうフレーズが旬だったんだな"とか"そういえば、あのときはこういう音の作り方してたな"って感じるところはありますよ。結局、その時々で前の作品を超えたいという気持ちでいつも制作に取り組んできているから、改めて振り返ってみるとその軌跡が明確に音からわかります。

麗:曲にもよりますけど、ギターに関しては昔のほうがガチャガチャと音を詰め込んでたなと感じるところはありますね(笑)。時代が進むにつれて、音の面でバンドとしての調和がとれていくようになってるなって感じますよ。

戒:ほんとに初期の頃は、レコーディング前のプリプロなんかもやってなかったですしね。昔は、ドラム録りの段階だと、他のメンバーが何を弾くかわかんないっていうこともよくありましたから(笑)。作曲者の意図もちゃんと汲み取りつつ、みんなのやってることも把握しながら自分としての音を出すことを、ある時期からはちゃんとできるようになったっていうのが、わりと大きい変化だったかもしれないです。

麗:個々がどうしたいかもあるにせよ、どれだけリスナー側に一体感のあるバンドの音を届けられるか? という視点で、複合的に全体を見渡しながら音を作っていくのが今のthe GazettEのスタイルですからね。そのためには必要ないものを削っていくことも時には大事だということを、この20年間でthe GazettEはだんだんと身につけてきたんじゃないかと思います。

-わかりやすいところで言えば、音の密度がことさらに高かった『DIM』(2009年リリースのアルバム)と最新作『MASS』を比べただけでも、サウンドのつくりはだいぶ違いますものね。

麗:さらに『NIL』(2006年リリースのアルバム)とか『STACKED RUBBISH』(2007年リリースのアルバム)までさかのぼると、今度はギター間のコンビネーションが、今になってみると"見えにくいな"って感じるところもありますよ。ソロとかの掛け合いはいいとしても、細かい裏の部分でぶつかってるところが意外と多かったなと感じます。