INTERVIEW
the GazettE
2022.12.16UPDATE
2022年12月号掲載
Member:麗(Gt) 戒(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
強靭なメンタルがなかったら、何回でも砕け散っててもおかしくなかった
-では、ここで戒さんに"the GazettEのドラマーであるご自身にとって、現状での最大の武器とは?"という質問を投げ掛けさせていただいてもよろしいでしょうか。
戒:言葉で説明するのは難しいけど、まずは、バンドの音の中にダイナミクス感を出していくポジションであるというところですかね。そこは自分が負うべき役割だと思ってます。曲の中のメロディだったり歌詞だったり、いわゆる感情表現的な部分は他のパートに任せているところもあって、自分はその後ろに回って支えながらダイナミクスの部分を出していく、というのが今の根本的なスタイルになってるんですよね。逆に、変に自分が前に出ようとしたりすると"そこ、違うから"ってメンバーに言われて失敗することが前はたまにありました(笑)。
-麗さんにも"the GazettEのギタリストであるご自身にとって、現状での最大の武器とは?"という質問を投げ掛けさせていただいてもよろしいでしょうか。
麗:物理的な機材の使い方とか、奏法とか技法とかは追求していけばいくほど面白みが出てくるし、スキルが増えていくのも楽しいんですけど、本当に大事なのはそこではない気がするんですよ。自分が最も磨いていきたいのは感性の部分で、そこを武器としていけるのが理想だなって思ってます。
-つまり、メンバーのみなさんが常に研鑽を重ねてきたのが、この20年の日々だったということなのでしょうね。そして、そうしたなかで"あの局面を乗り切るのは難しかったな"と、今だから言えるようなこともあったりはしませんでしたか?
麗:自分の場合はツアーが長かったときですね。長くなればなるほど、どうしてもマンネリ化していく部分が出てきてしまうんですよ。そうなったときには途中で曲を増やしたり、もちろんその時々で必死に対策はしていくんですけど、その対策がファンにとって納得できるものかどうかは、また別の話だったりする可能性もあるわけで、ロング・ツアーのときの試行錯誤は結構難しいなって思います。
-そのロング・ツアーというのは、何本以上からがロングとなるのですかね?
麗:過去には"PHASE#03"とか、そこから番外編までやったこともあったんで、そうなってくるとロングですよね(笑)。ステージ上でのメンバー間のやりとりなんかも含めて、常に新鮮さを求めてやっていくことが大切になってくるんでそこが大変です。
-戒さんにとっても、何かしら"あの局面を乗り切るのは難しかったな"と感じたくだりはこれまでありました?
戒:一番新しいところで言えば、18周年のライヴ( "18TH ANNIVERSARY DAY/6576")がなくなったときだったかなぁ。自分で思ってる以上にダメージをくらってる自分に気づいて、ちょっとそこが意外でしたね。別にこれまで積み上げてきたものがすべてひっくり返ったとかではなく、誰が悪いわけでもないコロナによる不可抗力で、"18周年のお祝いができなくなっちゃったね"となっただけの話ではあったんですけど、その事実を受け入れるのに時間がかかって、しばらくはちょっと虚無な状態になっちゃってました。
-そこから、今年に入って全国ツアーにこぎつけるまでには時間もかかりましたしね。
戒:まぁ、20年もやってればいろんなことが起きるってことなんでしょう(笑)。
-逆に、the GazettEとして経てきた20年の中で、"手に入れることができたもの"があるとしたらそれはなんですか。たくさんあるとは思いますが、ここではひとつだけに絞って挙げていただければと思います。
麗:強靭なメンタル、だと思います。20年やってきたからこそ手に入れられたもの、という意味ではこれに尽きます。だいたい、それがなかったら何回でも砕け散っててもおかしくなかった(笑)。よく諦めなかったなっていうのはありますよ。
戒:正直、そこはメンバー同士でちゃんと話し合いができるバンドで良かったよね。そうじゃなかったら、とっくに終わってたと思います。
-何かと不穏な空気になってきた時に、心のドアを閉めてしまうようなメンバーはいなかったわけですか。
麗:うちは完全に逆ですね。何かが起きた場合は、これは話し合わないとマズくない? って絶対なります。
戒:問題に対しての対策を話し合うっていうのもそうだけど、うちらの場合は嫌なことが起きたときに5人で愚痴り合うじゃないですけど(笑)、それを共有しあって立ち向かっていけるのも強みなんじゃないかと思いますよ。
-ケースによっては、フラストレーションを曲に転化することで昇華したこともあったのでしょうしね。
戒:実際そういうこともありました。それこそ強靭な精神力を持って、という(笑)。
麗:ある意味、そこはロック・バンドだからこそなところでもありますよね。何かぶつけたいものがあればそれを音にしていく、というか。それはthe GazettEの根底にずっとあるものだと思います。
-つくづく、そんなthe GazettEの20周年を祝う『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』が今こうして世に出るというのは実に感慨深いことですね。
戒:このベストを聴くことで、the GazettEの過去も現在もひと通り網羅することができると思いますよ。
麗:ここまで20年かけて歩んできたthe GazettEがどんなバンドなのか、ということがいろんな人に伝わるようなパッケージになったのは間違いないです。
-承知いたしました。それでは、最後にここからthe GazettEの迎えていく2023年、そして未来に向けたヴィジョンについてもお聞かせくださいませ。
戒:このところは10枚目のアルバム『MASS』が出て、20周年があってといろいろ節目が重なってたし、コロナっていう部分でもイレギュラーな面がありましたけど、2023年からはいろいろな面で特別なトピックスはなくなっていくと思うんですよ。the GazettEとしては"通常営業"に戻っていくのが2023年であり、ファンのみんなからすれば"20周年を超えてそこからどうするの?"ってところも一番気になってるはずなので、ここはバンドとしての底力をより見せていかなきゃいけない時期に入っていくんだろうなというつもりでいます。自分たちの守ってきたものを大切にしながら、新しいことにも挑戦したうえで、"それでこそthe GazettEだよね"ってみんなに感じてもらえるような活動をしていきたいですね。
麗:おそらく、20周年の節目で過去の曲たちをライヴでやったり、ベストを出したりしたプロセスは来年以降にこそ生きてくるんじゃないかと思います。自分たちの過去と改めて向き合ったときに、the GazettEとは何者なのかということを再確認してより深く理解できたぶん、ここから次の新しいものを作っていくうえでの心構えは、今もうかなり整った状態にあるんですよ。自分としてもまた次に向けて動き出すのがすごく楽しみです。