LIVE REPORT
KNOTFEST JAPAN 2016 -DAY2-
2016.11.06 @幕張メッセ
CRAZY N' SANE
ツイン・ヴォーカル、ツイン・ギター、ベース、ドラム、DJの7人編成による覆面バンドCRAZY N' SANE。その正体は謎に包まれているものの、KNOTFEST開催直前の11月2日にデビューEP『This Mess』をリリースした。DJが手でノイズを操り、その音がSEとなってメンバーが登場。1曲目にバンド名を冠した「CRAZY N' SANE」をプレイし、初期のLIMP BIZKITとスクリーモを掛け合わせたような独特のミクスチャー・サウンドを響かせる。ツイン・ヴォーカルのうち、黒いウサギがシャウター、白いウサギがラップとメロディ・パートを担当している。白ウサギは英語でMCをしているので、おそらく外人なのだろう。そしてRAGE AGAINST THE MACHINEの「Guerilla Radio」、LIMP BIZKITの「Take A Look Around」、LINKIN PARKの「Don't Stay」をワンフレーズずつ披露し、ミクスチャー愛を表す。「Rewind」はフロウに若干の無理が感じられるものの、秀逸なサビが印象に残った。そしてゲスト・ヴォーカルに元FACTのAdamが登場して参加した「Lifetime Death」では、曲中にSLIPKNOTスタイルで観客を座らせてから一斉にジャンプさせ、激しいステージングを繰り広げた。「This Mess」ではNOISEMAKERのAGが登場してメロディアスなサビを力強く歌い上げ、フロントの3人はステージ上で暴れまくる。ラストの「Break Free」ではギターのリフとDJのノイズが交互に攻めてくるという独特な音像、暗い雰囲気の曲ではあるものの、サビでキャッチーになるという構成に唸らされた。ミクスチャー・ロック愛に溢れ、遊び心を感じつつ、全曲において秀逸なサビが印象に残る。観る者を不思議な感覚に誘うパフォーマンスだった。(KAORU)
MUCC
真っ昼間にもかかわらず、すでに多くの観衆を集めていたMUCCのステージ。バンドを待つファンたちのコールが、暗転すると大きな手拍子に変わった。骸骨が描かれた大きなバックドロップを背景に、「睡蓮」でドラマチックにライヴはスタート。ひらひらと舞う逹瑯(Vo)の手も妖艶に、MUCCらしい和モダンなラウド・サウンドが会場を包み込む。
大きなコーラスが発生した「ENDER ENDER」で会場に一体感をもたらし、続いて「KILLEЯ」とKNOTFESTらしくラウドな選曲で攻め込んでくる。バンドの多様な音楽性に合わせて、フロアはモッシュにヘドバン、ダンスとなんでもありの盛り上がりようだ。
ここで"メタラーのお客さんの前でやるには心の傷があります!"と、逹瑯。かつてGUNS N' ROSESのオープニング・アクトを務めたときの苦労話が自虐的に語られて、会場は大ウケだった。
さらに"ヴィジュアル系あんま好きじゃないって奴、手上げて!"などとあえて言ってみちゃうあたり、ラウドロック・ファンとのコミュニケーションの取り方が上手くて感心してしまう。
「蘭鋳」では、3カウントでの一斉ジャンプもどデカくキマッた。MUCCのライヴでは恒例となっているこの演出は、なんでもミヤ(Gt)が観たSLIPKNOTのライヴにヒントを得てやり始めたものなのだとか。ラストは「TONIGHT」。ヘヴィなメタル・リフとキャッチーなメロディが、幕張メッセにダイナミックに冴え渡った。楽しくてあっという間だったが、終演するころには気持ちはすっかり高揚し切っていた。
"ヴィジュアル系、ちょっと好きになっちゃったって人、手上げてー!"なんて去り際のひと言に無数の観衆の手が上がっていたが、ここにいるみんながオープンなマインドでMUCCのライヴを楽しんでいたように感じた。ヴィジュアル系ながらラウドロック・フェスがこれほどまでにフィットするバンドは他にいないでしょう。ほんとかっこいいよ!(MAY-E)
BUTCHER BABIES
スタート前から"果たしてどのようなライヴを披露してくれるのだろう"という期待がフロア中に充満していたのが、今回のKNOTFESTが初来日公演となるロサンゼルス出身のアグレッシヴ・メタル・バンド、BUTCHER BABIESだ。その期待どおり、Heidi Shepherd(金髪)、Carla Harvey(黒髪)というふたりの女性ヴォーカリストが強烈な印象を残す圧巻のパフォーマンスで、彼女たちは観る者をステージに釘付けにさせた。
爆発するような「Monsters Ball」のイントロからフロントふたりが勢いよく飛び出し、艶やかなヘドバンとアグレッシヴな咆哮を交互に畳み掛けて、オーディエンスは一気に沸き立つ。ふたりともかわいらしい花柄の短いワンピースに身を包んでそのグラマラスな肉体を惜しげもなく披露しており、特に男性陣の盛り上がりはなかなかのものであった。そんな見た目なのに衝撃的なほど攻撃性の高いスクリームを全力でかましながら、縦横無尽にステージを飛び回るわ、ステージからフロアに降り立ち観客を煽るわ、サークル・ピットを作り出そうとするわ、と明らかにライヴ慣れしていることを示すその立ち回りに初っ端から魅了されてしまった。
"アー・ユー・レディー? トーキョー!"と軽く挨拶すると、ライヴはまだまだ始まったばかりだと言わんばかりのスピーディなナンバー「The Butcher」と「Gravemaker」を続けてスピット。中音域のシャウトをかますCarla、高音域で耳をつんざくHeidiのシャウトはもはや女性という域を大いに超えている。もちろんバックの屈強な男性陣のギター、ベース、ドラムも完璧な演奏力で彼女たちを支える。続く「Jesus Needs More Babies For His War Machine」では、"クラウド・サーファーズ?"と、オーディエンスへの挑戦的なアプローチからスラッシュ・ビート炸裂のイントロで予想どおりクラウド・サーファーたちが続出! そんな様子を見たHeidiは、してやったりと妖しく微笑む。そう、我々は彼女たちの世界に完全に掌握されてしまったのだ。
そこからは戦車のような音像でアメリカンなグルーヴをも呑み込んだ「Mr. Slowdeath」、フロアを騒乱状態に陥れた「Igniter」と畳み掛ける。ラストの「Magnolia Blvd」では、地鳴りのような演奏と地底から響くようなスクリームを血管がぶち切れそうなほどの強靭さで披露。日本のオーディエンスにBUTCHER BABIESの名を刻み込んだ最強のパフォーマンスだった。(今谷 重治)
HER NAME IN BLOOD
9月にリリースされたアルバム『BAKEMONO』を引っ提げ、今まさに脂の乗っているメタル・バンド HER NAME IN BLOODが登場。OZZFEST JAPAN 2015以来の二度目となる幕張メッセの舞台だが、本国アメリカのKNOTFEST 2015にも出演を果たした、シーンにおいて一目置かれているバンドである。
"見せてみろ、KNOTFEST!"
Ikepy(Vo)の煽りから、最新アルバムより「Free Me」でライヴはスタート。並々ならぬ気迫を感じるステージに、客席も早々に狂乱の渦へと変わった。畳み掛けるように「Redemption」をプレイ。メンバー5人の渾然一体となったエネルギッシュなライヴは、この広い会場を覆い尽くすほどの重厚なグルーヴを生んでいて、なんだかもう魂ごと持っていかれそうだ。
"幕張メッセをぶっ壊そうぜ!"
そういって放たれたのは、パリピたちのプール・パーティーに乱入するというユニークなMVで話題をかっさらった「BAKEMONO」だ。目を見張る観客を横目に、ウォール・オブ・デスを起こすほど熱狂するフロア。会場をつんざくIkepyのシャウトも凄まじく、思わず鳥肌が立った。まさに化け物クラスのパフォーマンスだ。続いて「White Lies」では、おしくらまんじゅう状態の客席からクラウド・サーフも発生。
"遊びは終わりだ、地獄を見せてみろ!"
そこはすでに地獄と化していたが、まだ足りない! とでもいうように、銃撃戦のような音塊をフロアに打ち込んでくる。なんだか今日のライヴはとりわけハード・モードだ。
"日本のロック・フェスが一番クレイジーだってのを、SLIPKNOTに見せてやろうぜ!"
短めのMCを挟んで、最後は「Last Day」を投下。最新アルバム『BAKEMONO』への自信が窺えるセットリストだ。パワー漲るライヴで、ANTHRAXに見事なバトンを繋いでくれた。
このレポートが公開されているころには、彼らはヨーロッパ・ツアーの真っ只中だろう。日本が生んだバケモノバンド HER NAME IN BLOODが、メタル・シーンのアイコンになる日もそう遠くない。(MAY-E)
ANTHRAX
スラッシュ・メタル四天王として君臨し続けるANTHRAX。SHADOWS FALLに籍を置くJonathan Donais(Gt)が2013年に加入して初となるアルバム『For All Kings』を今年2月にリリースしたばかりだ。Bステージ前には溢れんばかりのファンが詰めかけ、熱気でムンムン。BLACK SABBATHのBGMに乗ってメンバーが登場すると轟くような大歓声で迎えられ、ブルーのライトがステージを照らすなか、Scott Ian(Gt)のフライングVによって奏でられるギターのイントロが流れるとさらに大きく歓声が沸き、1曲目にスーパー・アンセム「Caught In A Mosh」がプレイされた。Joey Belladonna(Vo)は黒いつなぎに身を包み、勢いよくオーディエンスを煽りながらハイトーンを響かせる。Jonathanのギターによって厚みが増し、Frankie Belloが刻むソリッドなベースも迫力満点、特にCharlie Benanteの力強すぎるドラミングは化物だとしか思えない。そのまま「Got The Time」へとなだれこみ、ボルテージは高まり続け、オーディエンスの拳に一層の力が入る。重厚で鋭いリフとツーバスで畳み掛ける「Fight ´Em ´Til You Can´t」も圧倒的な演奏で、基礎体力の違いのようなものを感じてしまった。「Antisocial」ではヴィブラートを効かせた歌が見事で、オーディエンスのシンガロングの声も異常に大きくめちゃくちゃに盛り上がり、これぞメタルのライヴ! という応酬が繰り広げられた。壮大なロック・オペラを彷彿させる「Breathing Lightning」をグルーヴィにプレイし、ラストの「Indians」ではまたも大きなシンガロングが。まったくブレない歌唱力を見せるJoeyはフロアの花道で歌い続け、ダイバーも続出し、圧巻のヘヴィネス・グルーヴで畳み掛ける演奏には度肝を抜かれまくる。Joeyは雄叫びを轟かせ、Scottがメロイックサインを掲げながらステージを去っていった姿も印象的だった。短い時間ではあったが、レジェンドの風格、まったく衰えることのない演奏を余すことなく披露し、会場にいた若いオーディエンスをも圧倒した最高のステージを見せてくれた。(KAORU)
the GazettE
ヒリヒリとした激情を放つ重厚なナンバー「DOGMA」でスタートしたthe GazettEのライヴ。真っ赤なライトに照らし出されたそのステージは、パワー型のラウド系バンドとは一線を画する孤高の美しさがあった。
LOUD PARK 14に続いて、ラウド系フェスへの出演はこれが二度目となる彼ら。ワンマンで幕張メッセを埋められるバンドが、それに甘んじることなく、こういう場所にチャレンジしてくれることはとても嬉しい。長い髪を振りまく客席のヘドバンの波など、一瞬これがKNOTFESTであることを忘れてしまいそうな光景も広がっていたが、強靭なシャウトを介する「RAGE」、「UGLY」の圧倒的なヘヴィさ、そしてヴィジュアル系のイメージを完全に払拭するメタル・バンド然とした演奏力はあまりに鮮烈で、ステージから目が離せなかった。
"こんばんは、the GazettEです! 見てのとおり、ヴィジュアル系でございます"と始まったRUKI(Vo)のMC。観客との距離が近くて驚いた。さらに昔、SLIPKNOTのライヴをメンバー全員でここ幕張メッセに観に来たことがあるというエピソードが語られた。会場からは"えー!"なんて驚きの声もちらほらと聞こえてきたが、彼らのパフォーマンスを見ればなるほどと合点がいく。何より、こういうルーツを持つバンドがヴィジュアル系シーンの第一線で活動してくれていることがとても頼もしい。
"いつも以上にやっちまえよ! 全員でかかってこい! 中指立てろ!"と、まるでCorey Taylorのような煽りからラウドなナンバー「BLEMISH」を投下。メタリックに研ぎ澄まされた「TOMORROW NEVER DIES」もダイナミックに幕張メッセに響いた。"全員でこの会場を揺らしてくれ!"と言って放たれたラスト・ナンバーは長年の彼らの代表曲となっている「Filth in the beauty」。the GazettEの今のモードがしっかりと感じられるライヴだった。
異文化交流の最たる時間だったが、こういう嬉しい発見があるのがフェスの醍醐味なのだ。ぜひまたメタル・フェスに参戦してほしい!(MAY-E)
IN FLAMES
KNOTFEST JAPAN 2014でも、勢いや激しさより楽曲の魅力を丁寧に伝えていくようなステージングを披露し、ベテランの風格漂うパフォーマンスで魅せたスウェーデン出身のIN FLAMES。その音楽性は、北欧メロデスに分類されていた初期よりアメリカのシーンを大きく意識した6thアルバム『Reroute To Remain』での変化、そして今や世界的な音楽シーンを意識したサウンドへと変貌を遂げていた。
そして迎えた今回は――"レディー・スクリーム・トーキョー!!"とAnders Fridén(Vo)の咆哮で、北欧色が残る5thアルバム『Clayman』の1曲目「Bullet Ride」からスタート! メロのギターがクリーン・トーンだからか、他のバンドと比べると少し音圧が足りないような感覚もあったが、Andersのスクリーム、Björn Gelotteのギター・ソロもキマり、その変わらない姿をアピール。始まる前からIN FLAMESのTシャツを着た人を多く見かけたが、やはり今も精力的に活動を続ける彼らの不動の人気ぶりを窺わせるようにしっかりと歓声で応えるオーディエンスも熱い。ステージが赤い照明へと切り替わると、シリアスなイントロから始まるミドル・テンポで壮大な「Where The Dead Ships Dwell」をドロップ。手拍子を煽りつつ、サビをオーディエンスに託す。次に披露されたのは11月11日にリリースされる12枚目のニュー・アルバム『Battles』からすでに音源が公開されていた「The End」。この日はちょうどアルバムがリリースされる前のタイミングで、明らかに曲は浸透していなかったが、キャッチーなサビとどう切り取っても"ザ・IN FLAMES"な楽曲に好反応だったことは確かだ。
MCでは、今年9月に加入したばかりの新ドラマー Joe Rickard(ex-RED)をAndersが紹介する。そう、長年バンドに在籍してきた屋台骨 Daniel Svenssonが去年バンドを脱退して以降、正式な後任が決まらずにいたのだ。そんなあたたかな空気感から一気に音圧を上げて演奏された往年の名曲「Only For The Weak」で、フロアは一体となり大きくバウンスする。そのまま畳み掛けるようにイントロから大歓声が起きるほどの人気曲「Cloud Connected」のグルーヴで、観客は身体を揺らしながらサビで大合唱。その後も新曲「The Truth」、ミドル・テンポな「Paralyzed」、「Deliver Us」と落ち着いた展開で魅了する。Andersは満足そうに"サンキュー"と3回言うと、そのまま"クラウド・サーフィン・メイヘム、カモン!!"と「Take This Life」を投下!! 堰を切ったように観客が前方にどっと押し寄せ、フロアは錯乱状態に。そのスピーディ且つアグレッシヴな往年のアンセムはやはりラストを飾るに相応しかった。すでに世界的バンドへと成長しているIN FLAMESの安定のステージングは、やはり他のバンドと一線を画していたように思う。(今谷 重治)