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LIVE REPORT

"PUNKSPRING"

2023.03.25 @幕張メッセ

Writer : 菅谷 透 Photographer:HayachiN(HEY-SMITH)、Kazumichi Kokei(MY CHEMICAL ROMANCE) ©PUNKSPRING All Rights Reserved.


THE INTERRUPTERS

国内アーティストの熱気を引き継いで、海外アーティストの1発目として登場したのはTHE INTERRUPTERSだ。Kevin(Gt)、Justin(Ba)、Jesse(Dr)のBivona兄弟に続いてシンガーのAimee Interrupterが登場すると、ドッと歓声が上がり、パワフルな「Take Back The Power」で一気にフロアを沸かせていく。"みんな元気? 一緒に踊って!"という日本語のMCから披露された「Title Holder」では、観客がそこかしこで自由に心地よく身体を揺らす。ステージ後方にいると出音が少々小さめに感じられたのだが、極上のヴァイブスが物足りなさを見事に補ってくれるし、オーディエンスの歓声もクリアに聴こえて抜群のライヴ感だ。Kevinの"この美しい国にまた来ることができて光栄だよ! Thank you so much! アリガト!"という言葉から繰り出された「Raised By Wolves」、「She Got Arrested」ではシンガロングが響き渡り、Billie Eilish「Bad Guy」のスカ・パンク・カバーでは、ご機嫌なホーンも加わってピースフルな空間が広がっていく。「Family」で一体感を高めたあとは、コールがキャッチーな「She's Kerosene」でフィニッシュ。さすがの盛り上げ方で、オーディエンスの心を掴んで離さないパフォーマンスだった。


SIMPLE PLAN

2017年以来の来日となったSIMPLE PLANは、"スター・ウォーズ"のメイン・テーマで華々しく登場すると、軽快な「I'd Do Anything」で口火を切る。無数の手が掲げられた「Shut Up!」、文字通り観客があちこちで跳ね回った「Jump」と、フロアは一気にパーティー会場へと変貌を遂げていく。MCではPierre Bouvier(Vo)が"日本のギャグを用意してきたんだ"と言うと、中腰になって"こーんにーちはー!"と絶叫。そこへSébastien Lefebvre(Gt/Cho)が"うるせぇな"とツッコミを入れ、まさかの錦鯉の完コピに観客は大盛り上がりだ。こうしたサービス精神の旺盛さも、彼らが長年愛されている秘訣なのだろう。

シンガーのAIR YELをフィーチャーした「Jet Lag」や、「Welcome To My Life」といった名曲を惜しげもなく披露したかと思えば、最新アルバム(『Harder Than It Looks』)から「Iconic」もドロップし、現在進行形の姿をしっかりと見せつけていくのもさすがだ。トロピカルな照明の中ビーチボールが宙を舞った「Summer Paradise」に続いて、Avril Lavigneの「Sk8er Boi」やTHE KILLERSの「Mr. Brightside」などをカバーしたパーティー・メドレーで畳み掛けると、ラストはChuck Comeau(Dr)がフロアに飛び込んだ「I'm Just A Kid」、スマホ・ライトが幻想的な光景を作り上げた「Perfect」で締めくくり、心地よい余韻を残していった。


BAD RELIGION

トリ前には2006年の第1回"パンスプ"でヘッドライナーを務め、前回の2017年にも出演した、メロコアの重鎮 BAD RELIGIONが登場。メンバーがSEなしで悠然とステージへ姿を現すと、いきなり「21st Century (Digital Boy)」を投下し、そのまま「Recipe For Hate」、「Los Angeles Is Burning」と続けていく。40年以上のキャリアを誇るバンドながら、教壇の前で熱弁を振るうかのごとく歌い上げるGreg Graffin(Vo)を筆頭としたバンド・アンサンブルは実にタイトで、もう圧巻のひと言だ。

重層的なコーラスが美しい「No Control」や、大合唱を生んだ「Punk Rock Song」、「Suffer」、「Fuck You」などの定番曲を配しつつ、最新アルバム収録の「End Of History」、哀愁漂うメロディで疾走する「Skyscraper」や、「Leave Mine To Me」といったレアな曲も交えたセットリストは、ほぼオールタイム・ベストと言っていい内容で、邦ロック・ファンには馴染み深い「Man With A Mission」は"ついに生で聴けた!"とブチアガった人も多かったのではないだろうか。そして何より、長いMCや休憩をほとんど挟まず、粛々と楽曲を披露する所作にパンク・スピリットを感じてシビれてしまう。終盤には「I Want To Conquer The World」、「Generator」、「Sorrow」のファスト・ナンバーを次々と披露し、トドメの一撃は「American Jesus」。全20曲、生きる伝説の貫禄漂う60分だった。


MY CHEMICAL ROMANCE


イベントも佳境に差し掛かり、いよいよヘッドライナーであるMY CHEMICAL ROMANCEのステージだ。マイケミとしての来日自体が12年ぶりというだけでなく、リユニオン直後に発表された2020年の来日は、公演目前でコロナ禍によりキャンセルとなってしまっていたわけで、転換を待つファンの感慨もひとしおだったに違いない。いつからか場内に流れていた不穏なノイズ音も、より緊張感を高めていた。会場が暗転し歓声が上がるなか、荒廃した都市がバックに映し出されたステージへメンバーが姿を現すと、1曲目に奏でられたのは「The Foundations Of Decay」。再始動後に発表された最新曲だが、バンドの原点とも言える9.11テロにも触れた歌詞と、ダイナミックでエモーショナルな曲展開は、再出発の幕開けに相応しいのかもしれない。

続く「I'm Not Okay (I Promise)」ではイントロから割れんばかりの大歓声で、サビでは黒いスカート・スーツを身に纏ったGerard Wayの歌唱に合わせて、"こんな大音量なのはいつ以来だろう?"というレベルのシンガロングが響き渡り、もう爆発的な熱狂ぶり。特に前方エリアの混乱は相当だったようで、Gerardが後ろに下がるよう伝える場面も見られた。スマホのライトが灯された「The Ghost Of You」に続いて、レアな「Kill All Your Friends」、1stアルバムからの「Our Lady Of Sorrows」にも観客は好反応を見せていたが、この空白期間に彼らの作品を聴き込んでいたファンが多かった証でもあったのだろう。ライヴ中盤には早くも「Welcome To The Black Parade」が投下され、イントロのピアノ・フレーズからこの日一番の、悲鳴にも似た歓声が巻き起こる。もはやヴォーカルが聞こえないほどの大合唱で、一気に最高潮のテンションに達したところで、「It's Not a Fashion Statement, It's a Fucking Deathwish」、「Teenagers」、「Destroya」といった歴代ナンバーを矢継ぎ早に披露し、ダークな狂宴をまだまだ続けていく。終盤ではコール&レスポンスから「Helena」、「Mama」とプレイし、本編ラストは「Famous Last Words」。スクリーンの荒廃した都市の上には、いつしか美しい星空がきらめいていた。アンコールでは、デビュー・シングル「Vampires Will Never Hurt You」が披露される粋な演出のあと、多くの人々が"あの頃"の気持ちに戻ったであろう1日を締めくくるに相応しい「The Kids From Yesterday」が届けられた。

待望の開催となった"PUNKSPRING"は、イベント自体の復活だけでなく、パンク・シーンや、ライヴ・シーンにとっても再生の象徴になったのではないかと思う。この日のステージを家族に連れられて観ていた子供が自分で足を運べるようになるまで、フロアで観ていたキッズが演者としてステージに立てるようになるまで、この最高の空間が続くことを願うばかりだ。