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LIVE REPORT

TOTALFAT

2011.09.18 @渋谷AX

Writer 山本 真由

開演ギリギリに会場に入ると、フロアは既にライヴを待ちきれないキッズ達の熱気が渦巻いていた。チケットはソールドアウト、こんなにパンパンにオーディエンスが詰まったAXを見るのは初めてかも......と圧倒される。
そう、この日はTOTALFATの4ヶ月にも及ぶ全国ツアー"THE HERO IS DAMNED TOUR 2011"の最終日。TOTALFATにとって最大規模となるワンマン公演を盛り上げる為、会場を埋めるファンの多くがTOTALFATのTシャツを着て、バンドが現れるのを今か今かと待ちわびていた。

そんな期待感も最大限に高潮し、開演時刻の18時を5分ほど過ぎたところで、打ち込みのアゲアゲなSEが流れ、レーザーライトが会場を貫くド派手な照明にフロアが湧きあがる!そして、本日の主役4人の登場と共に、ドーン!とスモークが上がる!ショウの始まりだ。
一曲目は、ニュー・アルバム『DAMN HERO』のオープニングを飾る「Livin' for The Future」。出だしの"オー"からもう、テンションが弾けたキッズのモッシュ&ダイヴの嵐!キラキラしたメロディに極上のハーモニーは、"これぞTOTALFAT節"な堂々たる完成度の高さ。そこから畳み掛けるように、疾走感たっぷりの「Sky of California」へなだれ込む。面白いほど、ダイバーが次々に宙を舞い、"こんなに初っ端から暴れまくってみんな大丈夫??"と、要らぬ心配をしてしまうくらい、フロアの盛り上がりっぷりはハンパない。そんな尋常でないほどの熱気の中、続く「Across The Chance」は極上のシンガロング・ナンバー。Kuboty(Gt&Cho)のギター・ソロも、いつにも増して冴えわたり、キャッチーなメロディに絶妙なスパイスとなる。
「Ball and Chain」までアルバムの曲順通りに続け、このままアルバム全曲再現!?と思いきや、お次は聴き覚えのある"カンカンカン♪"という出だしでお馴染みの、『OVER DRIVE』からのキラー・チューン「Summer Frequence」!"Everybody dance, now!"のご機嫌なフレーズが一度聴いたら忘れられない最高のダンス・ナンバーだ。勿論、"オウ!"で一斉にタオルの舞う痛快な一幕も。

そして、"今日はこのステージで心も体も全てさらけ出していくんで、みんなも自分の中のカオスをぶちまけていってくれ!"というShun(Vo&Ba)の意気込みが響き渡ったMCから、"ヘヴィなやついくぞ!"と叩き込まれたのは、『DAMN HERO』の中でも異色のダークなナンバー、「Damage」。MCに答えるようにフロアからは、はち切れんばかりのカオスがぶちまけられ、いよいよライヴは佳境へと突き進んでいく。

『DAMN HERO』は本当に多彩なアルバムだ、と今回のライヴで改めて実感させられた。そして、一曲一曲に込められたパワーに圧倒された。正直、このアルバムを初めて聴いた時、"TOTALFATにこういうの求めてないから!"と、ちょっと自分の中で批判的だったのを激しく後悔した。そんな私の考えを見透かすような"TOTALFATは、常に挑戦し前に進んでいくバンドだ"という宣言。確かに彼らは、まるで脱皮をするように、成功した過去を自らぶち破ってさらに大きく飛躍した。毎度お決まり(?)の"このステージを目指してました"っていうMCも、どんどん大舞台へとのし上がっていくバンドの、いわば有言実行的なチャレンジ宣言なのかもしれない。本当に、天井知らずの彼らの勢いには驚かされるばかりだ。

そんな彼らを支える、1600人の笑顔。ちょっとセンチメンタルなヴォーカルで始まる「Sweet」では、みんなで肩を組んで円陣を作り、フロアの一体感とバンドとの調和が全体でアンサンブルを奏でているようだった。そして、そんなユルいハッピー・モードの均衡を壊すかのようにアグレッシヴなギター・リフが投下され、「Highway 3」、「Highway Part2」と続くと、一気にサークル・ピットが広がる!疲れ知らずというか、全力疾走なのは、バンドもオーディエンスも一緒だ。

ここでなんと、"俺らが高校生の時に書いた曲です"と始まった「Nothing But」。バンドを初期から支えてきたファンにとっては、懐かしいナンバーだろうし、メジャー・デビューしてからTOTALFATにハマったファンにとってもまた、ある種感動的な演奏であったに違いない。(実際終演後に、"Nothing Butやばい!""初めて聴いた!"などと感動したファンの声がちらほら聞こえたのだ。)
その初期衝動の勢いから、近年の彼らの方向性の主軸の一つである"パーティー感"が満載のナンバー「Life Like Movies」へと駆け上がると、一糸乱れぬBunta(Dr&Cho)のドラムにハンズクラップが加勢する。

そんな中、これ以上ないまでに満ち足りた空間に、更なるサプライズ・プレゼントが!スペシャル・ゲストでRUNNERS-Hiの日向寺 浩太(Gt&Cho)が登場!!しかも、ヘア・メタルなファッションでキメたKubotyコスプレ(笑)!これには会場も爆笑&歓喜の嵐。TOTALFATといえば、Kubotyのメタリックなギターだけど、それがダブルで攻めてきたらホント最強。「Revelation」「Predator」と続けてギター・ソロ合戦をかまし、大いに沸かせてくれた。
あくまで最後までクールに(?)ギター・ヒーローを演じきった日向寺が拍手に見送られながらステージを去ると、もう舞台はクライマックス。今日というハレの日に招かれたメンバーのご両親が紹介され、二階席にはオーディエンスから温かい拍手が送られた。
そして、そこで発表された新曲は、(井上ジョーとコラボした「World of Glory with JOE INOUE」のシングルver.を除いて)彼らにとって初の挑戦となる、日本語詞のナンバー「Place to Try」。やはり、それが賛否両論となることをバンドとしても意識しているらしく、"俺たちが今まで歌ってきたこと、伝えてきたことをそのまま日本語にした"と説明。"伝えたいことは、お前らは一人じゃないってこと""辛いことがあった時、このライヴを思い出して欲しい"と力強く訴えた彼らに、もう疑問を投げかける余地は無い。私たちオーディエンスは、彼らを信じるのみ、だ。そして披露された「Place to Try」。意外にも全く違和感無く聴くことが出来た。メッセージもシンプルな分、日本語だからって奇をてらったフレーズは無く、直球勝負の歌詞とメロディは、TOTALFATそのものだ。

そこから、「World of Glory」まで、高音も全くブレることないJose(Vo&Gt)と芯の強いShunのヴォーカル、一貫して力強くタイトなBuntaのドラミング、持てるテクニックを余すことなく華麗に披露したKubotyのギター・パフォーマンスも、全てが全力で、渾身のライヴだった。アンコールは、オーディエンスのOi!コールに答えて割とすんなり登場したが、あれだけ全力疾走のライヴだと、一回休んだらもう続かないんだろう。本編のテンションそのままでアンコールに突入。そこで再びの新曲「Place to Try」の登場だが、今回はMusic Videoの撮影を行うということで、ビデオ・カメラを大量動員!"目立ったモン勝ち"の撮影だそうだが、"一体ここへ来てどうしてそこまで体力残ってんだ!?"ってくらいにピットは白熱!まるでこれがライヴ一曲目かの如くダイヴの嵐(笑)。
撮影が終わり、ちょっと懐かしい「Show Me Your Courage」で仕切り直し!と言わんばかりに今までステージを飾っていたDAMN HEROロゴの垂れ幕から、TOTALFATのロゴへチェンジ!最後の最後まで何とも憎い演出だ。そして、"ラスト!"と言って始まったのは、美メロとパワフルなフックが同居した、これまたキラー・チューン「Overdrive」で大団円...と思いきや、もう一曲!?そういえばまだ今日は聴いて無かった!名曲「DA NA NA」!"You never be alone"、お前達は一人じゃない、そうやっぱりTOTALFATが歌い続けることは変わらない。常にチャレンジし、どんだけ遠くへ突き進んでいっても、信じることは一つ。一つの場所、一つの音楽で、分かち合った仲間たち。この日渋谷AXに集まった1600人のオーディエンスは、決して忘れることは無いだろう。

シーンの移り変わりは速い。毎月、何百何千という新譜がレコード・ショップに並び、"今聴くべきバンド"と謳われ、持て囃されては消えていく。そんな中、時代の波に乗り、常に前進を続けるTOTALFATは、間違いなく"今からでも聴くべきバンド"だ。

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