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FEATURE

MY CHEMICAL ROMANCE

2016.09.16UPDATE

2016年10月号掲載

最高傑作『The Black Parade』の10周年記念盤がリリース! バンドの歴史とともに、金字塔を打ち立てた名盤の衝撃を振り返る

Writer 山口 智男

パンク/エモの......いや、それだけに留まらず、21世紀のロック・シーンに金字塔を打ち立てたMY CHEMICAL ROMANCE(以下:マイケミ)の『The Black Parade』の10周年記念盤『The Black Parade: Living With Ghosts』がリリースされると聞いたとき、まず感じたのは、あれからもう10年経ったのかということだった。十年一昔と言うが、『The Black Parade』と、それを作り上げたマイケミのことはなんとなく知っていても、『The Black Parade』の衝撃とその余波を知らない若い人たちもきっといるに違いない。
そういう人たちにとって、もしかしたらマイケミをデビューしたころから知っている人間の思い出話が、改めて『The Black Parade』がどういう作品なのか知ってもらううえで、何か役に立つかもしれないと考え、筆者がマイケミの存在を知ったのは、今から14年前の2002年のことだった――と書き出してみる。

それは、スクリーモがここ日本でもようやく、新しいムーヴメントとして賛否両論を巻き起こしながら認知され始めたころのことだった。先駆者と言えるTHURSDAYを追うようにTHRICE、FINCH、THE USEDといった新進バンドがロック・シーンに頭角を現してきたことによって、ハードコアの突然変異だったスクリーモはハードコア・シーンに留まらない広がりを見せ始めていた。まさにそんなとき、マイケミはTHURSDAYのGeoff Rickly(Vo)が運営に関わっているニュージャージーのインディーズ・レーベル、Eyeball Recordsから『I Brought You My Bullets, You Brought Me Your Love』で2002年にデビュー。たちまち、あのTHURSDAYのGeoffが認めたバンドとして、スクリーモ・ファンから注目され始めた。

彼らの結成は、その前年の2001年。そもそものきっかけは、アニメーターとして働いていたGerard Way(Vo)が、9月11日にアメリカ同時多発テロ事件が起きた際、崩壊する世界貿易センタービルを目の当たりにしたことをきっかけに悔いのない人生を送るべきだと考え、疑問を感じていたアニメーターを辞めて、音楽活動を始めることを決意したことだった。
その後、デモがEyeball Recordsに認められ、前述したとおり、2002年にデビューとなったわけだが、Eyeball Recordsのディストリビューションが貧弱だったのか、品薄になるほど人気だったのか、彼らのデビュー・アルバムはリリース当時、量販店では取り扱いがなく、インディーズ専門の輸入CD店にオーダーしてから入手するまでに1週間ぐらい時間がかかったことを今でも覚えている。ポップ風味もあるゴス・パンク/ハードコア・サウンドと鬼気迫るGerardのスクリームは、この時点ですでにマイケミの個性になってはいたけれど、アングラ臭ぷんぷんのデビュー・アルバムを聴き、正直、この連中がその後、ロック・シーンを代表する存在になると予想できたリスナーが果たしてどれだけいただろうか? もちろん、筆者も予想できなかったひとりだ。

しかし、メジャー・デビューをきっかけにマイケミの快進撃が始まる。2004年にリリースしたメジャー第1弾アルバム『Three Cheers For Sweet Revenge』は、ZEBRAHEAD、HOOBASTANKなどを手掛けたプロデューサー、Howard Bensonの力を借りて、マイケミ・サウンドをブラッシュアップ――中でもアルバムからの1stシングルとなった「I'm Not Okay (I Promise)」を始め、もともと持っていたポップな魅力を、バンドとファンがライヴでシンガロングできる楽曲に昇華させたことによって、その後の精力的なライヴ活動を通して、マイケミの人気は急上昇。「I'm Not Okay (I Promise)」に続けて、「Helena」「The Ghost Of You」といったヒット・シングルを生んだ『Three Cheers For Sweet Revenge』はアメリカだけで100万枚超のセールスを達成する大ヒット作になった。

その後、ドラマーの交代、Gerardのドラッグ中毒、アルコール依存、神経衰弱など、スターダムに上り詰める中で起こった突然の様々な問題を乗り越え、メンバーたちが取り組んだ新たな挑戦が、"死"を題材にしたロック・オペラを作ることだった。プロデューサーには、GREEN DAYによるロック・オペラ『American Idiot』を手掛けたRob Cavalloが迎えられた。自分たちのサウンドをさらに磨き上げると同時にストーリーを語るための曲作りは、ストリングスもフィーチャーしたピアノ・バラードの「Cancer」を含む幅広い曲の数々に結実。『The Black Parade』はそれまでのパンク/エモ・ファンに留まらない、より多くのリスナーにアピールできる作品となった。

『The Black Parade』のヒット以降、多くのメディアが"マイケミを取り上げたい"と言ってきた

2006年10月にリリースされた『The Black Parade』は世界各国での売上は300万枚を超え、大ヒット。ここ日本でも30万枚を超える売り上げをたたき出し、オリコン洋楽チャートで1位を記録した。翌2007年5月には、日本武道館公演も実現。THE BEATLESの来日以来、日本におけるロックの殿堂となった武道館で単独公演を行ったことで、マイケミに対する見方を改めたというロック・ファンも少なくなかったはずだ。また、このとき、彼らは地上波の音楽番組である"ミュージックステーション"にも出演。当時、マイケミを音楽専門メディア以外の、様々なメディアに売り込んでいた日本のレコード会社の宣伝担当の方がこんなことを言っていた。今まで、"何ですか!? この黒い人たち"と相手にしてくれなかったメディアが、『The Black Parade』の大ヒットをきっかけに掌を返したように"ぜひ取り上げたい"と言ってきた、と。
もちろん、それは『The Black Parade』がそれだけの評価に見合うクオリティの作品だったからこそだが、そんなエピソードが『The Black Parade』の衝撃とその余波を端的に物語っていると思う。
その後、バンドは『The Black Parade』が引き金になったと思しき音楽性の広がりをまとめきれず、その意欲が空回りした感が少なからずあった『Danger Days: The True Lives Of The Fabulous Killjoys』(2010年リリース)を残して2013年に解散を発表し、世界中のファンを悲しませた。

今回、『The Black Parade』の10周年記念盤がリリースされるにあたって、"マイケミ活動再開か!?"と世界中のファンが色めき立ち、バンドが"活動再開はない"と慌ててコメントを発表した騒動からは、マイケミの人気が未だ衰えていないことが窺えるが、10周年記念盤のリリースを機に改めてマイケミを聴いてみようというリスナーもいることだろう。そんな再発見、再評価はマイケミの伝説化にさらに拍車をかけることになるに違いないが、今回の10周年記念盤の目玉であるDisc-2に収められたレア・トラックの数々は、筆者には彼らがどんなところからやってきたバンドなのか今一度、思い出させるという意味でとても興味深いものだった。
『The Black Parade』の主要曲であり、ヒット・シングルでもある「Welcome To The Black Parade」のアーリー・バージョンである「The Five Of Us Are Dying」に加え、Disc-2には計5曲の初収録化音源、さらには『The Black Parade』収録の4曲とシングル『Famous Last Words』のカップリングだった「Kill All Your Friends」のライヴ・デモが収録されている。それらはどれも粗削りで、Gerardの歌もお世辞にも上手いとは言えない。本当だったら、そのまま眠らせておくべきものだ。それを今回あえて発表したのは、自分たちの最高傑作である『The Black Parade』を、舞台裏も含め、楽しんでほしいと思ったからなのかどうかは正直、わからない。しかし、「The Five Of Us Are Dying」と「Welcome To The Black Parade」を聴き比べることで、そのときバンドが成し遂げた成長を追体験できるだけでも10周年記念盤を手に入れる価値は十二分にあると思う。

『The Black Parade』の10周年記念盤リリースに寄せて
国内アーティストたちからコメントが到着!

2ndアルバム『Three Cheers For Sweet Revenge』を初めて聴いたのが高校生の時で、その当時の激ロックには彼らに影響されたエモキッズがいっぱいいたのを覚えています。(俺がその時一目惚れした女の子もエモガールだった笑)『The Black Parade』は世界中にエモシーンを広げ、10年経った今でも世界中のキッズにRomanceを届ける素晴らしいアルバム。

Crossfaith / Teru (Prog/Vision)

『Three Cheers For Sweet Revenge』でマイケミの大ファンになり、次の作品を待っている最中でドロップされた「Welcome To The Black Parade」のビデオには一発KOされた。作品を通してもクラシカルなロックと現代的なポップの融合センスがものすごく衝撃的で何度も何度も聴きまくったアルバムです。惜しくも解散してしまったマイケミ、でも彼らが遺してくれた作品は僕らファンにとって永遠です!まさに"Carry on"!!

TOTALFAT / Shun (Vo/Ba)

思春期が遅かった僕の人生、21歳のとき「I'm Not Okay (I Promise)」のMVを観て、止まらなかったドキドキは彼らの音楽を聴く度にいつでも蘇る。

グッドモーニングアメリカ / たなしん (Ba/Cho)

CDが傷だらけになっちゃうくらい家でも車でもライヴハウスでも聴いた。今だって全曲歌えます。特に「Welcome To The Black Parade」のピアノイントロが始まると仲間と奇声を上げて喜んで大合唱していたことを覚えてます。今も当時の新しいライヴデモまで聴けるなんて嬉しすぎる。彼らの残してくれた音楽のメッセージと、私たちはずっと生きて行く。そして人生の最後に思い出すのは「Dead!」。

LiSA 

▼リリース情報
MY CHEMICAL ROMANCE
The Black Parade10周年記念盤
『The Black Parade: Living With Ghosts』

2016.09.23 ON SALE!!
WPCR-17512/3 ¥2,800(税別)
[WARNER MUSIC JAPAN]
amazon | TOWER | HMV | iTunes

【Disc-1】
1. The End
2. Dead!
3. This Is How I Disappear
4. The Sharpest Lives
5. Welcome To The Black Parade
6. I Don't Love You
7. House Of Wolves
8. Cancer
9. Mama
10. Sleep
11. Teenagers
12. Disenchanted
13. Famous Last Words
14. Heaven Help Us ※日本盤Bonus Track

【Disc-2】
1. The Five Of Us Are Dying (Rough Mix)
2. Kill All Your Friends (Live Demo)
3. Party At The End Of The World (Live Demo)
4. Mama (Live Demo)
5. My Way Home Is Through You (Live Demo)
6. Not That Kind Of Girl (Live Demo)
7. House Of Wolves, Version 1 (Live Demo)
8. House Of Wolves, Version 2 (Live Demo)
9. Emily (Rough Mix)
10. Disenchanted (Live Demo)
11. All The Angels (Live Demo)

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