FEATURE
MY CHEMICAL ROMANCE
2020.02.10UPDATE
Writer 山本 真由
2019年10月31日、ハロウィンの日にとんでもないニュースが飛び込んできた! なんと、あのMY CHEMICAL ROMANCEが復活!?
Twitterの世界トレンド1位になったことからも、その影響力の大きさが窺えるが、再結成と共に発表された12月20日のロサンゼルス公演は当然のことながら、わずか数分でソールド・アウト。さらに、全米の最新アルバム・チャートには、『The Black Parade』(2006年リリースの3rdアルバム)が再びチャートインしたというのだから、どれだけ音楽シーンを揺るがす大ニュースであったかがわかるだろう。
そして、サプライズはそれだけではない。なんと2020年の3月には、"DOWNLOAD JAPAN 2020"のヘッドライナーとして来日も決定! 彼らの復活を待ち望んでいた日本のロック・ファンも驚喜させることとなった。
しかしながら、2013年3月に解散を発表し、それから6年半以上の月日が経つ。現在のティーンエイジャーにとっては、"名前くらい聞いたことがある洋楽バンド"のひとつになっているかもしれない。そこで今回は、3月に迫る来日公演をより多くの激ロッカーに楽しんでもらうために、彼らのこれまでの歩みと作品をおさらいしておこうと思う。
MY CHEMICAL ROMANCE DISCOGRAPHY
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1st ALBUM
『I Brought You My Bullets, You Brought Me Your Love』(2002)
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TOWER RECORDS
HMV
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2nd ALBUM
『Three Cheers For Sweet Revenge』
(2004)
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TOWER RECORDS
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3rd ALBUM
『The Black Parade』
(2006)
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TOWER RECORDS
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4th ALBUM
『Danger Days: The True Lives Of The Fabulous Killjoys』(2010)
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TOWER RECORDS
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BEST ALBUM
『May Death Never Stop You - The Greatest Hits 2001-2013』(2014)
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TOWER RECORDS
HMV
MY CHEMICAL ROMANCEというバンドの歴史。それはフロントマンであるGerard Wayの人生と切り離すことはできない。ニュージャージー出身の彼は、祖母の影響で子供の頃から歌うことや絵を描くことに親しんでいた。そして、ハイスクール時代から友人とバンドを組んでいたが、卒業とともにメンバーはそれぞれの道に進み、Gerardはニューヨークでアニメーターの仕事をしていた。そんななか、自分の生き方に満足していないものの変わらぬ日々を送っていた彼に転機が訪れる。2001年、職場へ向かうフェリーに乗っていたGerardは、その目で9.11テロを目撃してしまうのだ。そこで、悔いのない人生を送るべきだと思い立った彼は、同じ思いを共有した友人のMatt Pelissier(Dr)を誘い、バンドをスタートさせる。
その後、Gerardの実弟であるMikey Way(Ba)が加入し、彼の紹介でギタリストのRay Toroが参加する。そして、4人で制作した最初のデモ音源が"Eyeball Records"の目に留まり契約。新たにギタリストのFrank Ieroも加わり、結成からわずか3ヶ月で、THURSDAYのフロントマン Geoff Ricklyがプロデュースを手掛けた1stアルバム『I Brought You My Bullets, You Brought Me Your Love』(2002年)の制作に取り掛かった。また、バンドは当時主流だった音楽サイトのPureVolumeや、音楽ファンの間で人気のあったSNSのMyspaceなどで楽曲を配信。インターネットやティーンエイジャーのカルチャーとも親和性の高かった彼らの音楽性もあり、強固なファン・ベースが確立されていった。
そして、そんなインディーズ・シーンで絶大な支持を得た1stからわずか1年後の2003年には、メジャー・レーベルとの契約も決定。メジャー・デビュー作で、日本盤もリリースされた2ndアルバム『Three Cheers For Sweet Revenge』(2004年)は、世界的大ヒット作となった。中でも特に、リード・シングルであった「I'm Not Okay (I Promise)」は、エモやパンク、ハードコアといったアンダーグラウンドなロックから一線を越えたキャッチーな楽曲で、MTVやラジオなど様々なメディアでヘヴィ・ローテーションされた。
彼らの音楽性は、シアトリカルでゴスの要素もあり、当時同じ枠組みで語られることの多かった、エモやスクリーモといったジャンルのバンドたちとは異なるものであったが、1stのアングラなイメージと、彼らのヴィジュアルも含めそのダークな世界観が、いわゆるエモ・キッズから圧倒的な支持を得たため、代表的なエモ・バンドのひとつとして語られることが多い。また、この頃はメジャー・シーンで多くのバンドが活躍するポップ・パンクとエモの垣根が、徐々に曖昧になってきていたこともあり、幅広い層の音楽ファンが彼らの音楽に熱狂する環境が整っていたとも言える。
そして2006年、ロック史にその名を残す名盤『The Black Parade』がリリースされた。あのGREEN DAYのヒット作『American Idiot』を手掛けたRob Cavalloがプロデュース、コンセプト・アルバムとして強固なストーリー性とメッセージ性を持ったこのアルバムは、彼らのアグレッシヴで疾走感のある魅力を失うことなく、グラム・ロックやロック・オペラの妖しい輝きを纏った、唯一無二の作品として世界を虜にした。"死"と"再生"が描かれ、不思議な高揚感に満ちたリード曲「Welcome To The Black Parade」は、ソナタ形式を模したような起伏のある展開で、冗長になりすぎず、キャッチーにまとめられた完成度の高い1曲だ。マイケミ(MY CHEMICAL ROMANCE)の存在にピンとこない若い世代も、この楽曲には聞き覚えがあるんじゃないだろうか。こうして、時代を代表するアンセムを生み出してきた彼らだが、このある意味完成されすぎた作品を生み出してしまったことで、その後大きな壁にぶち当たってしまう。
『The Black Parade』で言いたいことを出し尽くしたバンドは、同作に伴うツアーの終了とともに、一時の休息期間に入る。それほど長くもない休息期間だったが、スランプに陥っていたGerardにとっては厳しい時期だったようだ。そして、そんな葛藤を経てシンプルなロックに立ち返った、2010年リリースの『Danger Days: The True Lives Of The Fabulous Killjoys』は、彼らのイメージを一新するものに。それまで、1stアルバムは"ひどい失恋"、2ndは"祖母の死"、3rdは"自分の道を生きる決意"と、パーソナルな経験が作品のコンセプトとして反映されていたが、新作ではもう一歩先へ進んだ"僕らが君たちを救う"という未来志向のものとなった。ゴシックな衣装から一転したSFやアメコミのようなヴィジュアルも注目された。シングル曲にもなった「Na Na Na (Na Na Na Na Na Na Na Na Na)」は、エモやハードコアの要素を捨て、ポップで軽いタッチのギター・ロックとなっており、ファンの間では賛否両論が入り乱れた。『Danger Days: The True Lives Of The Fabulous Killjoys』リリース時のインタビュー(※2010年11月号掲載)でGerardは、David Bowieからの影響について語っているが、Bowieもまた、"Ziggy Stardust"という自らが生み出した強烈なキャラクターにイメージを固定され、悩んだロック・スターだ。彼は、『Diamond Dogs』というアルバムで、"Ziggy Stardust"に象徴される自身のグラム・ロックに別れを告げた。そしてMY CHEMICAL ROMANCEは、『Danger Days』で『The Black Parade』が象徴する彼らのイメージに決別したのだ。
妥協を許せないばかりに、人気絶頂でシーンを去った彼らが、未来への希望を持って再び動き出す――
マイケミはとてもクリエイティヴなバンドだ。だからこそ妥協のできない彼らは、『Danger Days』以降立ち止まってしまったのかもしれない。Gerardが自身のTwitterでバンドの解散について、"僕たちを最高にしたすべてのものこそが、まさに僕たちを終わらせようとしていた"と語っている。2013年のバンドの終焉は必然で避けられないものだった。しかし、時を経て復活を果たすのもまた、必然だったんじゃなかろうか。
私たちは幸運なことに、しばしの別れを経て、新鮮な気持ちでまた彼らの音楽に触れることができる。2020年というこの新しい時代に。MY CHEMICAL ROMANCEは、彼らの進むべき道を見つけ出し、再び歩き出したのだ。彼らのファンはもちろんのこと、この復活が初めましてのリスナーにとっても、彼らの音楽は大きなパワーを与えてくれるだろう。
"DOWNLOAD JAPAN presents My Chemical Romance" LIVE INFORMATION
2020年3月28日(土)インテックス大阪
OPEN 15:00 / START 16:00
スペシャル・ゲスト:JIMMY EAT WORLD and more
[チケット]
スタンディング ¥15,000(D代別)
■一般発売中
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