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LIVE REPORT

DOWNLOAD JAPAN 2022

2022.08.14 @幕張メッセ 1~3ホール

Writer 米沢 彰、内堀 文佳

2019年に初上陸、2020年に再び開催が予定されるも新型コロナウイルスにより中止となった"DOWNLOAD JAPAN"が、3年ぶりについにリベンジの日を迎えた。直近では様々な大型フェスで当初発表されていたラインナップが揃うことが叶わず、海外アーティストの来日公演や大規模な音楽イベントの完全復活にはまだ難しさを見せていたほか、"DOWNLOAD JAPAN"前日に開催が予定されていた"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022"5日目は台風の影響で中止せざるを得なかった。そんななかで、日本、アメリカ、イギリス、スウェーデンから、錚々たる顔ぶれがほぼ予定通りに集結したこの日はもはや奇跡に近かっただろう。8月14日日曜日朝9時45分、漆黒に染まった幕張メッセにて、鋼鉄の宴がいよいよ幕開ける。


BAND-MAID


日本発の世界で活躍する数多のバンドの中から、今回開催国を代表してオープニング・アクトを務めたのはBAND-MAIDだ。約2年半ぶりのリアル"お給仕"は未発表のインストゥルメンタルでスタート。そしてヴォーカル SAIKIが登場すると、ハードでヘヴィでノリのいいナンバーたちが、早起きして眠い目をこすっていたであろう観客の手を拳やメロイック・サインに変え、天高く突き上げさせる。ステージ左右の巨大ヴィジョンが映し出すメンバーの楽しそうな表情に、観る者もつられてマスクの下で笑顔になっていく。最後に「DOMINATION」が投下されると、これから長いメタル尽くしの1日を楽しむためのウォーミングアップは完了した。


THE HALO EFFECT


日曜午前10時半。長髪&黒Tシャツのオーディエンスの大半はいつもならようやく起きてこようかという時間帯にもかかわらず、会場全体のテンションは右肩上がりに上昇を続ける。自然に手拍子が巻き起こり、緑一色の照明の中メンバーたちが現れ「Days Of The Lost」でスタート。IN FLAMESのサウンドを色濃く反映した楽曲に、最初からオーディエンスは手を上げて応える。アルバムの曲順をなぞるように「The Needless End」を続けたあとは「A Truth Worth Lying For」、「Conditional」と緩急のついた楽曲で懐の深さを見せつけた。

"ドモ、アリガト。グッド・モーニング!"Mikael Stanne(Vo)の日本語の挨拶を織り交ぜたMCからは、ステージを日本のファンと一緒に楽しむスタンスが伝わってくる。おはようと言いながらもしっかりとデス・ヴォイスをキメるあたりにベテランの凄みを感じさせる。

曲を終えると"サンキュー、サンキュー、サンキュー"と3連呼し、アルバムが出てから初めての日本でのライヴへの感謝を伝える。彼らの出身である北欧は戦線からもほど近い。こうして日本でライヴをできることのかけがえのなさや、平和の価値についてもつい思いを馳せてしまうのは考えすぎか。依存症の治療などのためにJesper Strömblad(Gt)がこのステージで観られなかったことは残念だが、MCでJesperに言及するなど、メンバーにとって常に心がともにあることが伝わってきたし、朝早くから幕張に詰めかけたメタラーたちからも、その背景も含んだうえでこの日のステージを楽しんでいる様子がしっかりと表れていた。


CODE ORANGE


転換中のスタッフによる音出しの時点から、登場を今か今かと待ちわびて会場から手拍子が湧いていたCODE ORANGEのライヴは、最新曲「Out For Blood」で開幕。心臓を直に握りしめてくるかのようなアグレッシヴなドラムの振動や、頭を振り、腰から身体を半分に折りたたみ、縦横無尽にステージを暴れ回る彼らから発せられるエネルギーにかき立てられ、観客は自らも感情を全身で発散させんとうずうずして仕方がなかったはずだ。"スマホがあるならライトを出せ! ライトだ!"とフロントマン Jami Morganが怒号を飛ばすと、会場はたちまち煌々と輝き、「Bleeding In The Blur」に合わせオーディエンスが思い思いに揺れる。ここまで攻撃性を一切緩めることなく続いてきたなかで、ラストの曲を前にJamiが放った言葉は深い愛に溢れていた。"ここは世界で一番好きな場所だ! お前らが大好きだ!"、"朝早くから会いに来てくれてありがとう。俺たちのハート! 魂! 血! 身体! すべてを今ここでくれてやる"。と言い放ち始めた「Swallowing The Rabbit Whole」ではJamiがフロアへ降り、直接愛を伝えに行くと、それに応えるように観客のヘドバンもますます激しくなっていく。最後の一音を鳴らし、Jamiが"また必ず来る"と言いマイクを投げ捨てた。ステージからメンバーが去っていく姿を見送るオーディエンスは、今からすでに3回目の日本公演を待ち遠しく思っていたことだろう。


AT THE GATES


再結成後初のアルバム『At War With Reality』のSEで使われているようなノイズが会場を包み込むなか、バックドロップに4thアルバム『Slaughter Of The Soul』のアート・ワークが赤く浮かび上がると、オーディエンスから心の声が漏れる。叫び出したいのを堪えているような、声を上げてしまったことをあとから慎むような歓声が局所的に上がるなか、メンバーがステージに登場。スネア4発のカウントからいきなり「Blinded By Fear」が始まり、宣言通りの『Slaughter Of The Soul』完全再現ショーが幕を開けた。表題曲を挟み、拍手の中でTomas Lindberg(Vo)が人差し指を挙げると一瞬の静寂が訪れ、「Cold」が始まる。ゴリゴリに潰して重く響くようなスネア、ガツガツと硬質に刻まれる竿隊のリフが今回のラインナップの中で最も凶悪に響く。クリーン・パートでの3拍子への急速なペース・チェンジも完璧に決め、圧倒的なパフォーマンスでオーディエンスをぐいぐいと引き込んでいく。

8曲目の「Unto Others」まで一気に走り抜け"サンキュー東京、サンキュー「DOWNLOAD」、We are AT THE GATES"とようやくMCを挟む。感謝を様々な表現で伝えつつ、再結成時の2008年のワールド・ツアーで東京にも来たことにも触れる語り口からは、日本のファンに活動を支えられたという彼らの認識が垣間見えた気がする。続いて「Nausea」でライヴを再開させたあとは「Need」、「The Flames Of The End」と作品の再現をエモーショナルに締めくくる。ここで終わりと思わせておいての「The Night Eternal」は冒頭のSEとリンクしているかのような『At War With Reality』の収録トラック。最終盤までアグレッション溢れるパフォーマンスで完璧なショーを締めくくった。

2020年に本来であれば開催予定だった"DOWNLOAD JAPAN 2020"でやるはずだった『Slaughter Of The Soul』再現ライヴを2年の時を経て実現させたことに、バンド、ファンだけでなくイベンターも含め誰もが胸を熱くしただろう。


SOULFLY


"DOWNLOAD JAPAN 2022"の前半戦を締めくくる位置で登場したのはSOULFLY。最新アルバムのオープニング・トラックでスタートするあたりに、Max Cavalera(Vo/Gt)のプロ根性を感じてしまうのはちょっと穿ちすぎか。曲が終わりで"アリガトー!"とMaxがあの風貌で声を上げるのは結構ズルい。ちょっとかわいく見えてしまう。

Maxの息子、Zyon Cavaleraがスネアの一打一打に殺意を込めるような鬼気迫るドラム・パフォーマンスを繰り広げ、バンドのサウンドを根っこからアグレッシヴ且つ感情溢れるものに作り上げていく。これを見てテンションが上がらないメタラーはおそらくいないだろう。一方、正確にベースを鳴らすMike Leonはコーラス・ワークも含め、バンドの土台に厚みを持たせる。そして、ずっと"あれDinoだよな"と思っていたら、MCで紹介されたのはやはりFEAR FACTORYのDino Cazares。サポートとして正確無比なギター・ワークに徹し、エモーショナルで感覚が先に立つ南米流のメタル・サウンドをより高次元にまとめ上げる。

ライヴが進行するにつれて、どうもオーディエンスとのシンガロングが成立しているように感じられる。いや、きっと違う。みんなの心の声が共鳴して漏れ聴こえてくるような錯覚がしているだけだ。スタッフも危険がないかずっとフロアを巡回しているし、大丈夫、大丈夫。"手を上に上げろ!"とMaxが煽ると見渡す限りほとんど全員の手が上がり、ラストの定番曲「Jumpdafuckup」では全員でジャンプを決めるなど、声を出せないなかでも一体感を全員で楽しむ姿が幕張に生まれていた。


STEEL PANTHER


ヘヴィでダークなオーラを纏うバンドが多く名を連ねる本公演のラインナップの中で、ひと際明るくド派手な異彩を放っていたSTEEL PANTHER。1曲目「Goin' In The Backdoor」から、ギラギラとしたグラム・メタル・サウンドで快調に飛ばしていく。「Asian Hooker」ではタイトルにちなんで、セクシーな着物風の衣装を身に着けたダンサーの女性が4人登場したと思いきや、あっという間に脱ぎ捨てさらにセクシーな姿が露わに。また、24時間ぶっ通しで勉強してきたと言う日本語を駆使しつつ、言語の壁を越えて爆笑をさらう姿も彼ららしい。そうしてMCでも盛り上げたあと、スタッフに支えられながらヨボヨボと震える足取りで現れたのは丸いサングラスを掛けたOzzy Osbourne、もといその物真似をしたMichael Starr(Vo)だ。心臓が止まりかけたような仕草を見せたり、コウモリ(のぬいぐるみ)の頭を食いちぎったりしながら「Crazy Train」を披露する。Ozzyと入れ替わるかたちでMichaelが再登場したあとも、パワフルな歌声とSATCHELの熱いギター・リフでソングライティング技術の高さを見せつけていく。最後はダンサーたちが見事なポール・ダンスを披露するなかで「Death To All But Metal」と「Gloryhole」で締め、ヘヴィ・メタルと女性(女体)へのパッションをやりたい放題に爆発させた、STEEL PANTHERのすべてを凝縮した時間となった。