MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

BULLET FOR MY VALENTINE

2021.11.04UPDATE

2021年10月号掲載

BULLET FOR MY VALENTINE

Member:Matthew “Matt” Tuck(Vo/Gt)

Interviewer:菅谷 透

新世代メタル・ヒーローとしてセンセーションを巻き起こしたデビュー・アルバム『The Poison』から15年以上を経て、イギリス最大のメタル・バンドの一角へと躍進を遂げたBULLET FOR MY VALENTINEが、7作目のアルバムを完成させた。前作『Gravity』はメロディアスな楽曲にエレクトロニックなサウンドやモダンなアプローチを取り入れ議論を呼んだが、活動初期に発表したEPと同じくセルフ・タイトルを冠した今作は、BFMV史上最もヘヴィでアグレッシヴと言えるサウンドに。それでいて単なる原点回帰ではなく、これまで培ってきた要素も遺憾なく発揮された本作は、まさに"BULLET 2.0"と呼ぶに相応しい、バンドの転換点となり得るアルバムだ。そんな作品について、フロントマンのMattに語ってもらった。


"これが俺たちだ、これが俺たちのサウンドだ"と堂々と言えるようになったんだ。そう言えるようになったからこそ、このバンドの新しい時代が始まったんだと思う


-まず、ニュー・アルバムの完成おめでとうございます。この取材時点では(※8月27日に実施)リリースまで2ヶ月ほどありますが、今の心境を聞かせていただけますか?

とてもハッピーだし、ハード・ワークが形になってほっとしているよ。アルバムが完成したときの気分はいつも同じなんだ。ものすごい労力を注ぐからね。今回も同じ気持ちだけど、コロナ禍とかがあったし、いつもよりチャレンジングだった。でも、できあがりに本当に満足しているんだ。これからがとても楽しみだよ。早くみんなにも聴いてもらいたいね。

-バンドは2018年の前作『Gravity』リリース後、2019年11月までツアーを行っています。ニュー・アルバムの構想はいつごろから生まれたのでしょうか?

2019年の夏に、デモ・セッションとかライティング・セッションを何回かやったんだ。その年の9月にもやった。その後起こったことを考えるとあのときやっておいて良かったよ(笑)。ツアーとツアーの合間を使って集まって、クリエイティヴな時間を取るようにしたんだ。どこかの時点で新しい曲を作らないといけなくなることはわかっていたからね。それで早めに着手したんだけど、2019年の終わりには方向性がだいたい決まっていたから助かったよ。時間を有効に使えたのはラッキーだったね。その時点である程度進展があったわけだから。

-コロナ禍が始まった時点で、すでに方向性が固まっていたんですね。

そうだね。まだアルバムとしては形になっていなかったけど、デモ音源がたくさん溜まっていたし、満足いかなかったものもたくさんあったけど方向性は見いだしていたから、その先何をすべきかはわかっていたんだ。

-レコーディングはいつごろ始まったのでしょうか? コロナ禍になってから、レコーディングやプロダクションのプロセスに弊害はありましたか。

方向性が決まってからはいつものやり方だったね。それぞれ自宅で曲を書いて、たまにアイディアを投げ合ったりして。それからツアーのときは――というのも変な言い方だな。"ツアーをしていたころは"だな(苦笑)......どこかの時点で、泊まり込みのできるスタジオに行ってツアーのリハーサルをするんだけど、泊まるところのすぐそばにスタジオがあるからリハーサル以外のこともできて、仕事量が倍になるんだ。2019年の時点ではそういうこともやっていた。コロナ禍の前は、クリスマスから2月くらいまでオフだった。それが終わったころには当分何もできないことが判っていたから、すぐにブレーキをかけた。3月から5月はほとんど何もしていなかったね。

-その間は、少し音楽から離れて過ごしたりもしたのでしょうか。

最初の3~4ヶ月は本当に怖かった。誰にとっても恐ろしい時期だったよね。でも俺は家にいる時間を与えられて、それはそれで良かったよ。こういう生活になって長いから、ツアーで何ヶ月も家を離れて、2週間だけ戻ってきてまたツアー......なんていうのが普通になっていたからね。それでいいと思っていたけど、5~6ヶ月間久々に地に足の着いた生活をすることができて、俺にとっては素晴らしく良かったんだ。と言うと語弊があるけど(笑)、その状況の中ではベストな生活が送れたと思う。家でずっと曲を書いていて――パンデミックに気を取られてしまわないように、曲を練ることにフォーカスしていたんだ。もちろん世の中がああなっていくのを見ているのは心が痛んだけど、俺個人に関して言えば、家にいられるだけで良かったんだ。リラックスすることができたからね。

-少なくとも毎晩同じベッドで寝られるだけでも違いがありますよね。

そうなんだよ。24時間家にいるなんて、何年ぶりかわからないくらい久しぶりだったからね。世の中で何が起こっているのかは十分認識していたけど、できるだけそっちに気を取られないようにして、家の中にいること、クリエイティヴでいられることにフォーカスしたんだ。

-パンデミックの中でも自分のできることに集中して、なおかつ健康的なライフスタイルを送った結果、このようなエネルギッシュなアルバムができあがったのではないでしょうか。

そうだね。パンデミック前にこの方向性を見いだせていたのも良かったよ。アルバムを作るときに一番大変なのがそこだから。起爆剤になってくれるたったひとつの曲を見いだすためにいくつも曲を書くんだけど、その部分が終わっていたからね。ヘヴィなものになることはわかっていたし、激しいものになることもわかっていたから、みんなワクワクしていたし、ムードも高まっていたんだ。そのフィーリングを消さないようにすることのほうがむしろ大切だったね。作業の続きをできる機が熟すまで、そういうムードを自分たちに繋ぎ留めておくというのかな。そうできて良かったよ。

-実際にレコーディング作業などを再開したのはいつだったのでしょうか。

たしか、2020年の5月か6月だったかな。ここイギリスでは制約が少し緩くなって、自分の住んでいるエリア外に移動しても良くなったんだ。それで俺は荷物をまとめて車に乗り込んで、イングランド北部にあるプロデューサー(Carl Bown)の自宅に行ったんだ。そこで1ヶ月くらい彼と合宿みたいな感じで過ごした。とにかく曲を書き続けて、できる限りの時間を使ってデモを作った。本当にクリエイティヴなセッションだったよ。方向性はちゃんとわかっていたし、すべてが本当にうまく進んでいたから、クリエイティヴなエネルギーがどんどん積みあがっていく実感があった。家にずっといた3~4ヶ月間も良かったけど生活にものすごく制約があったから、Carlと作業ができるスタジオに行けるというのは最高だった。よし仕事に戻るぞ、という感じで意欲に燃えていて、アイディアが次から次へと出てきたんだ。

-このときはあなたとCarlふたりだけだったのでしょうか。

俺とCarlだけだったね。それ以上では集まれなかった。Carlにも家族がいるからね。俺ひとりだったけどちゃんと彼の家族の許可を貰って、俺もコロナの検査を受けてから行ったよ。到着してからは第三者を一切入れずにやったんだ。

-まずメイン・ソングライターのあなたがやることを進めて......という感じだったんですね。

そうだね。彼は自宅に大きなスタジオを持っていて、そこでレコーディングをやったんだ。俺はドラムのパートを書いて、歌詞も全部書いて――とにかくものすごくクリエイティヴなセッションになったね。

-そうやって作ったアルバムの方向性ですが、『Gravity』とはずいぶん違うものになりましたね。『Gravity』はメロディアスな楽曲にエレクトロニックなサウンドやモダンなアプローチを取り入れた実験的な作品と言えましたが、今作ではメロディックな要素は残っているものの、一転してヘヴィでアグレッシヴな作風になっています。もしかしたらバンド史上最もブルータルかもしれません。どのようにして、この音楽性にたどり着いたのでしょうか?

うーん、純粋に、『Gravity』があったからこそじゃないかな。さっきも別のジャーナリストとそのあたりの話をしていたんだけど、この手の音楽を長い間やっていなかったから飢えていた、というのが理由の一部のような気がするんだ。『Gravity』は俺にとって――俺はあのアルバムが大好きなんだ。それにはいろんな理由がある。すごい作品だったと思う。賛否両論だったのは知っているけど、自分にとってはいい作品だったと思うよ。今回はギタリストとしての俺、Padge(Michael "Padge" Paget)のギター・プレイ、ドラマーとしてのJason(Bowld)......自分たちのテクニックやスキルを前作ではあまり使わないでいた状態で曲を書き始めたから、それまで溜まっていたクリエイティヴィティが積み重なって爆発して、こういうものができた。だから『Gravity』は今回のアルバムに大きく貢献しているんだ。

-つまり、前回やらずに渇望していたエッセンスを今回は取り戻しているということでしょうか。

そうだね。しかもさらに獰猛で激しいものとして。

-実はまさにそういうことを思ってました。単なる原点回帰というよりは近作のヘヴィ/グルーヴィな方向性や、空間的なアレンジメントを継承したうえでアグレッシヴなサウンドへと進んでいったように感じました。

そう、『Gravity』が今回大きな役割を担っていると言ったのは、俺たちが前回――というか、4年間こういう面を見せていなかったからなんだよね。その間に培ってきたものと、自分たちが得意だとわかっているものを活用したんだ。そのタイミングが熟したんだろうね。自分たちの中から湧き出てくるものがアルバムと同じ感じで次から次へと曲になっていったんだ。自分でも"Wow!"と思ったよ。こういう状態はちょっと珍しいなと思ってさ。こんな曲の"波"が来ることはなかなかないんだ。実はほんの数週間までその"波"が続いていてね。アルバムを作ったあとも書き続けていたから、また山ほど曲ができたんだよ。

-そうなんですね!

アルバムを出したあとも、またいろいろリリースするつもりだよ。同じくらい激しくて獰猛なんだ。

-それほどクリエイティヴィティがノンストップだったとは。

なかなかないことだよ。もっと頻繁にあるといいんだけど(笑)。ともあれ、この手の音楽を長い間やっていなかったからそろそろ、というタイミングも存分に活用できたと思うよ。激しさもクリエイティヴィティも"波"だったからね。――という言い方をするのがベストな説明だと思う。

-今作はセルフ・タイトルのアルバムになっています。作品にバンド名を冠することは、制作過程のどのあたりで決まったのでしょうか?

たしか去年の夏、アルバムの曲の大半を書いてデモも作ったころじゃなかったかな。まだレコーディングはしていなかったけど、どんな音になるかとか、曲の名前、ヴァイブもだいたいわかっていたころだった。セルフ・タイトルにしたのはマネージメントのアイディアだったんだ。"これは君たちにとって大きな意思表示のアルバムだと思う"と言われたよ。彼らは俺たちとは違う観点から作品を見ているからね。俺たちほど感情移入していないし(笑)、クリエイティヴィティ面でも携わっているわけじゃないから、俺たちが作り終わって送ってきたものを聴くだけなんだ。そんな彼らにそういうことを言われて"ふーん、そうなのか"と思ったよ。"アルバム・タイトルは決まったのか"と聞かれたけど、特には決まっていなかった。いつもは曲からタイトルをピックアップするだけだから(笑)。あまり考えないんだよね。"これがキー・トラックだからこのタイトルにしようか。何にしたって誰が構うわけでもないし"くらいのものでさ(笑)。

-(笑)

でも今回は"セルフ・タイトルにしようと思ったことはあるか"と聞かれたんだ。"特には。なんで?"、"すごくフレッシュで自信に満ち溢れているし、新しい感じがするから"、"わかった。クールじゃないか。そうしよう"......という感じに決まったよ(笑)。決まったあとでジワジワ来たね。"たしかにそうだ。このバンドはひとつの曲がり角に来ているんじゃないか"と思った。たしかに自信に満ち溢れているし、自分たちとしても達成感があるんだ。

-ご自身の得意なものをすべて出したとおっしゃってましたよね。

そうだね。そして『Gravity』からの影響もちゃんと出ているし。例えば「Rainbow Veins」は『Gravity』に入っていても全然おかしくないと思う。でもあのカオスの中に置くことで強く輝くんだ。激しさとシンプリシティがあるからね。この15年の経験をすべて生かしたのが今回のアルバムなんだ。集大成みたいな感じかな。

-アルバムのプレス・リリースにも"これはBULLET 2.0の始まりだ"というようなことが書いてありましたね。

そう、さっきも話したけど、今の俺たちは以前よりずっと強い自信を持っているんだ。もちろん今もソングライティングとかの面で学び続けているけど、自分たちのバンドとしての力がひとつの頂点に辿り着いたような気がする。そしてその力を使うことを恐れないようになった。誤解されたら嫌だけど、俺たちは成功のため、ファンのために曲を書いているわけじゃない。"これが俺たちだ、これが俺たちのサウンドだ"と堂々と言えるようになったんだ。そう言えるようになったからこそ、このバンドの新しい時代が始まったんだと思う。