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INTERVIEW

DREAM THEATER

2025.02.07UPDATE

2025年02月号掲載

DREAM THEATER

Member:James LaBrie(Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

Mike Portnoyと再会したときは10秒でハグを交わしたよ


Mike Portnoyの電撃復帰という衝撃的なニュースから約1年半。創設メンバーの1人で、リーダー的存在でもあったドラマーを再び迎えて生み出されたDREAM THEATER(以下:DT)の最新作『Parasomnia』は、一聴して分かる5人のケミストリーが見事に融合した作品となった。"パラソムニア"(睡眠時随伴症)をモチーフにしたヘヴィ&ダークなサウンドを軸に、往年のディスコグラフィを彷彿させる瞬間を随所に含みながら、同時に新鮮さも感じさせる充実作に仕上がっている。今回はJames LaBrieの視点から、Portnoyとの十数年ぶりの再会や、最新作についてじっくりと語ってもらった。

-ニュー・アルバム『Parasomnia』のリリースを控えた、今の心境を伺えますか?

もちろんメンバー全員ものすごくワクワクしているよ。いわゆる"クラシックDT"なアルバムだと俺は思っている。俺たちがシーンに出てきた頃のルーツを思わせるノスタルジアがあるよね。特に俺にとっては『Images And Words』(1992年リリースの2ndアルバム)、『Awake』(1994年リリースの3rdアルバム)、『Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory』(1999年リリースの5thアルバム)あたりの時代を思い出させるよ。あの頃のプログレッシヴ感やヘヴィさがあるし、全体を通して美しい瞬間がいくつもある。Mike(Portnoy)がドラマーとしてすぐあいつと分かるスタイルの持ち主というのも大きいね。あいつのリズムのセンスがアルバム全体にちりばめられているんだ。ソングライティングにも参加しているしね。というわけでこのアルバムは、今の俺たちがどんなところにいるのかを示す、真の意味で強力な証言になっているんだ。とてもワクワクしているし、100パーセント支持しているよ。今まで作る必要があった、というか作りたかったアルバムなんだ。最初に「Night Terror」が書けたとき、自分たちはしかるべき場所、いる必要がある場所にいるんだって手応えがあった。

-本作はMike Portnoyが約13年ぶりにバンドに復帰してリリースされる、記念すべき最初のアルバムとなっています。2023年秋に復帰のニュースが発表された際は非常に驚きましたが、彼が復帰するというアイディアはいつ頃から話題に上がり始めたのでしょうか? 復帰に至った経緯を教えてください。

あれはいつだったか......俺たち4人、つまりJohn Petrucci(Gt)、俺、Jordan(Rudess/Key)、John Myung(Ba)がじっくり話し合ったのは、たぶん『A View From The Top Of The World』(2021年リリースの15thアルバム)のツアー("Top of the World Tour 2022")が終わって数ヶ月経ったあたりだったと思う。そのツアーが終わった後、内輪話みたいな感じで、自分たちがいろんな理由によって人生のある地点、ここから先に進む必要がある地点にいるという話になったんだ。それだけじゃなくて明らかな選択肢になったのは、リユニオンを楽しめるようになるなら今だという頭になったときだった。それに至ったファクターはいくつかあった気がする。うち1つは、MikeがJohn Petrucciの最新ソロ作(2020年リリースの『Terminal Velocity』)に参加したこと。その後あいつはJohn Petrucciとそのソロ作を引っ提げたツアーに出たんだ。それで、今度はLIQUID TENSION EXPERIMENTのアルバム(2021年リリースの『LTE3』)を一緒に作っていた。それによって、DTの他のメンバーとも関わることが増えたんだ。そうすると、バンド内の会話でも"Mikeは元気だったか?"なんて話になってきてね。知っての通り俺とMikeが再会したのは、ニューヨークのBeacon Theatreで行われた俺たちのコンサートだった。ようやく全員が一緒になって、ゴミを過去に葬ることができたってことだ(笑)。全てが理に適っていたよ。あいつとは素晴らしいアルバムをたくさん作ってきたし、兆候があったんだ。

-あなたとPortnoyはそれまで10年以上話していなかったそうですね。再会の感想を教えていただけますか? ぎこちない瞬間等はなかったのでしょうか。

まぁ、少しはね......。というのもBeacon(Theatre)でのコンサートを目前に控えた頃にJohn Petrucciから突然メールが来たんだ。"Mikeがコンサートに行くことを心から希望しているんだ。挨拶したいって言ってるから、なんとか2人とも和解してくれないか"的な内容だった。当惑したよ。ショーの準備をしている途中だっていうのに、いったいなんなんだ? と思ってさ(苦笑)。ショーに集中しようとしているのに、とね。だから最初はちょっと不快だったよ。状況を把握して、冷静にならないといけなかった。そうしてからJohnに返事したんだ。"分かった。Mikeに、楽屋に会いに来なよと伝えてくれ"とね。実際再会したときは10秒でハグを交わしたよ。それから2人で俺の楽屋に入って、30分くらい話をして......全てを洗い流したような感じだった。ありとあらゆる話をしたね。お互いに対する長年のクレイジーな悪口とか、それらが浄化されたんだ。まさにカタルシスだった。全てがリセットされたからね。その後あいつはショーを観てからまた楽屋に戻ってきて、"最高だったよ"と言ってくれた。あいつにとっては現実離れした一時でもあったんだ。外からこのバンドを眺めている間中ずっと、"この状態はしっくりこない。俺はあっち(ステージ上)にいるはずなのに"と思っていたらしい。"いるはず、じゃなくて「いたい」んだ"と。"ああ、そうだろうね。きっとものすごく奇妙な感じだっただろうし、ある意味心が痛みもしたんじゃないか"と言ったら、"そうだ"と返ってきたよ。いい気分だけではなかっただろうね。あいつはずっとDTを愛してきたし、このバンドはミュージシャンとしてのあいつを表す大きな目印でもあったから。このバンドがきっかけで、俺たちは名を知られるようになったからね。――という複雑な状態ではあったけど、ひとりでに筋道が書かれるというのはあるもので、俺たちの宇宙には抗えない大きな力が存在するらしい。こういうことが起こるべくして起こったのは明らかだったし、実際起こって良かったよ。ツアー("An Evening With Dream Theater 40th Anniversary Tour 2024 - 2025")もすでに始めたけど最高の気分だからね。

-そうして全てが浄化されて、ようやく本作のライティングやレコーディングが始まりました。前作からバンドのプライベート・スタジオ、DTHQ(Dream Theater Headquarters)で作業が行われるようになりましたが、Portnoyがそこに入るのは今回のセッションが初めてだったのですか?

いや。John Petrucciの最新ソロ・アルバムをレコーディングしたときもいたからね。その後、LIQUID TENSION EXPERIMENTの最新作のレコーディングのときもいた。だから俺たちが再会して『Parasomnia』に取り組み始める前にも使っていたんだ。

-なるほど。とは言え、このラインナップでDTHQに入るというのは、彼だけでなく全員にとって特別な経験だったことでしょうね。バンドとして初めてセッションをした際はどのような感触を得ましたか?

Mikeと俺が12年ぶりに再会したのはBeaconだったけど、その次に会ったのがライティングの初日だったんだ。部屋中が感動で満たされていたよ。新作に着手するということで全員ワクワクしていたというのもあるけど、みんなでスタジオに足を踏み入れていって、ハグやハイタッチを交わして、"よし、やろう。素晴らしいアルバムを作ろう"なんて言い合う瞬間がね。まずは(スタジオの)ドアを突破しないといけないし、"オーケー、みんな落ち着いて。冷静になって。そして、俺たちがやりたいと確信している、大好きなことをやろう"と言い合って。そんな感じだった。個人的には、最初の1、2日はそのシナジーを感じるだけで終わっていたような気がする。ちょっとジャムってみようか、この部分をこうしてみようか、みたいな感じで始まってね。それが金曜日だったかな? 週末はオフにしたんだ。ゆったりじっくり考えられるようにね。翌月曜日にスタジオ入りしたときは全員フレッシュな状態で、そこから先に進んだんだ。そうして最初にできたのが「Night Terror」だった。どのインタビューでもこう話しているんだけど、「Night Terror」を聴いてもらえれば、バンドが演奏を始めて、そこにMikeのドラム・フィルが入ってくる。あれを聴くと"おぉ、なるほど。やつらが帰ってきた"と思えるだろうね。

-まさにその部分について質問するつもりでした。あのドラム・フィルから"Portnoyが帰ってきた!"というインパクトがありますからね。

あのフィルはあいつ独特だからね。曲の構造の中であいつが作り出す演奏やアプローチはいかにもあいつらしいというか、紛れもなくあいつのものだ。あのエネルギーやヴァイブ、グルーヴは、バンドが始まった頃からすぐにあいつと分かるものだった。

-スタジオに入った時点で、アルバムを作ることは決まっていたのですね。

ああ。

-作曲プロセスはPortnoyの脱退前や、Mike Mangini(ex-Dr)在籍時と変化はありましたか?

いや、俺たちの記憶にあった通りだったよ。実際あまりにその通りで、みんなで笑っていたくらいなんだ。『Black Clouds & Silver Linings』(2009年リリースの10thアルバム/Portnoy脱退前の最後の作品)から、『When Dream And Day Unite』(1989年リリースの1stアルバム)に遡るまでと全く同じだった。あの頃のインタラクションを彷彿させたんだ。あの頃のコミュニケーションの仕方や、Mikeがライティングや曲のアレンジに大きく関わっていたこと......まるで時間が経っていなかったかのように蘇ってきたよ。すごく自然なことに感じられたんだ。何かを強いられることもなかったし、"何かが間違っている、グルーヴが見つけられない"なんて感じてしまうこともなかった。ノーだ。全て初めから揃っていて、直感的で内在的な環境が整っていて、楽器を手に取ればすぐに始められる状態だった。みんなと一緒に部屋の中でじっくり腰を据えて、音を聴いて、アイディアが出てくればそれを投げてみて、出ないときはただみんなの意見に耳を傾ける。何か聞こえてくれば意見するし、提案したり、自分のアイディアを出したり......そうじゃないときは耳を傾けながら、全体の状況を把握していたんだ。もちろんメロディや歌詞にも携わってね。

-前作のときはコロナ禍の影響であなたはカナダから出られない状態で、多くの作業をリモートで行ったと言っていましたね(※2021年10月号掲載)。もともとのセットアップで作業できたのは嬉しかったのではないでしょうか。

まぁ、同じ部屋にいないと出せないエネルギーというのはあるからね。ただ俺の場合は楽器を演奏するわけではないから、あのサウンドを作るために俺があの部屋にいることは必要不可欠ではないんだ。今回は何週間かDTHQに滞在して、それから1週間くらい自宅スタジオに戻って、そこからDTHQに繋いで、引き続きプロセスの一員になれるようにした。その後またDTHQに行って、今度は1~2週間一緒に滞在して、また自宅に帰って家族と過ごして......という感じだったよ(笑)。全て上手くいった。俺のアイディアもみんなにプレゼンすることができたしね。通常は口頭で伝えたり、テープやスマホに録音したものを聴かせたりするんだ。俺自身の立ち位置は変わっていないね。ソロ・アルバムをやるときはリフやメロディ、歌詞だったり、もちろん全部俺のアイディアだから完全にシチュエーションが違うけど、こっちでは5人でアイディアの核になろうとしているから、ソロとはアプローチが違うんだ。全員参加だからね。

-本作ではプロデュースをPetrucciが1人で担当しています。脱退前はPortnoyもプロデュースをしていましたが、今回は近作の流れに沿ったということでしょうか?

そうだね。Mikeがいた頃、『Black Clouds & Silver Linings』以前はMikeとJohn Petrucciがプロデューサーの席に座っていた。Mikeが脱退してからはJohnが主なプロデューサー役になった。それが今回のアルバムでも続いているんだ。Mikeはプロデューサー的なことはやっていなくて、今もJohnの担当だね。Johnはプロデューサーとしての判断をするときに自分自身をバンドと切り離して考えることのできる人で、素晴らしい仕事をしてくれたよ。同時に"外交手腕"に長けているから、俺もバンドの一員だってことをちゃんと認識してくれている。俺は俺で、どの段階でどうやってアプローチする必要があるかを常に考えないといけない。Johnのもう1つ素晴らしいところは、各メンバーの強みを分かってくれているところだね。だからこそ俺たち一人一人からベストなものを引き出すことができるんだ。それでいてあいつ自身もいつだってバンド・メンバーであり続ける。Johnはそういうやつなんだ。とても大らかで、共感力があって、賢くて――それから、何が俺たちを動かしているのか、俺たちのバンドとしての姿をあらゆるレベルで理解している。あいつがプロデューサーであることの素晴らしさはそこだね。逆効果になりそうな摩擦や困難な状態を作ることはない。というか、問題になったことすらないんだ。

-プロデューサーではないにしろ、あなたも言うようにPortnoyは独特のサウンドの持ち主なので、このアルバムに大きな影響を与えたことと思います。

そうだね。ライティングにも参加しているし、間違いない。