INTERVIEW
DREAM THEATER
2019.02.20UPDATE
2019年02月号掲載
Member:John Petrucci(Gt)
Interviewer:菅谷 透
1989年のデビュー以来、プログレッシヴ・メタルの最高峰としてシーンに君臨し続けるDREAM THEATER。彼らがレーベル移籍第1弾としてリリースする、14作目のオリジナル・アルバム『Distance Over Time』は、原点に立ち返るような力強さに満ちた作品に仕上がっている。激ロックでは、そんなバンドを牽引するオリジナル・メンバーにして、アルバムのプロデューサーも務めたJohn Petrucciに取材を敢行。約20年ぶりにメンバーが共同生活を行ったというレコーディングの裏話も交えながら、今作について語ってもらった。
-ニュー・アルバム『Distance Over Time』を完成させた、今の心境をお聞かせください。
最高の気分だよ。アルバムの曲を書いている間も本当に楽しかったし、曲にもサウンドにも満足している。実際に聴いた人とやっとこうして話すことができるのはいいことだよ。早くリリースされて、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいね。俺たち全員が誇りに思っている作品だから。
-今作は2007年より在籍した"Roadrunner Records"を離れ、"Sony Music"傘下の"Inside Out Music"に移籍した第1弾作品となっています。移籍に至った理由をうかがえますか?
"Roadrunner Records"とは結構な数の作品を出した。素晴らしいレーベルだったよ。友人もたくさんできたし、在籍中はいい曲を出せたと思う。でもちょうど契約が満了したこともあって、他の機会を窺うときがやってきたのかもしれない、新しいオファーを受け入れるべきなのかもしれないと思ったんだ。"Inside Out Music"を率いているのはThomas Waberという人で、もうずっと前から知り合いなんだよ。DREAM THEATERの長年のファンでもいてくれている。実は俺たちが初めてヨーロッパ・ツアーをしたころ、わざわざ観に来てくれたんだよね。ようやく一緒に仕事ができることになって喜んでいるよ。彼は大の音楽愛好家だし、DREAM THEATERのファンだし......移籍していろんな新しい出会いがあるのも素晴らしいことだよね。
-前作『The Astonishing』(2016年リリースの13thアルバム)から約3年ぶりのリリースですが、レコーディングはいつごろスタートしたのでしょうか?
みんなで集まって曲を書き始めたのが去年の6月。3週間か1ヶ月くらいかけて書いたかな。その直後にレコーディングを始めたんだ。それが7月だね。6月と7月はアルバムの曲を書いてレコーディングを全部やって、ミキシングが始まったのが10月だったかな。だから全体では4ヶ月間くらいかけたね。
-レコーディングでは、人里離れたスタジオで約20年ぶりにメンバーが生活を共にしながら曲作りを行ったそうですね。なぜこの方法をとったのでしょうか?
実は新作をどうするかって話を妻にしていたときに、妻から出たアイディアなんだ。"どこかプライバシーの守れるところに行って、気を紛らわすものがないところで、絆を新たにしたらいいんじゃないかしら"みたいにね。というのも、俺たちは『The Astonishing』や『Images And Words』(1992年リリースの2ndアルバム)のアニバーサリー・ツアーで忙しすぎて、スロー・ダウンする間もなかったんだ。素晴らしい提案だと思ったから、メンバーに持ち掛けてみたんだよ。それで見つけたのが"ヨンダーバーン"というスタジオだった。いいところだったよ。詳しくは覚えていないけど、日本にもゆかりのあるスタジオだった。名前をど忘れしてしまったんだけど......映画"レヴェナント:蘇えりし者"の音楽を担当した、リュウイチ・サカモト(坂本龍一)だったかな? 彼が以前、当時の奥さんと一緒に持っていたスタジオらしい。いい縁だよね。
-ご家族は同行されたんでしょうか。それともメンバーだけですか?
野郎どもだけだね(笑)。妻が来たこともあったけど。俺たち5人と、俺のギター・テク担当のMaddi(Schieferstein)、それから録音を担当してくれたエンジニアのJimmy T。野郎だけのキャンプみたいな感じだったよ(笑)。
-(笑)レコーディング時のエピソードがあれば教えていただけますか。
印象深かった出来事はたくさんあるよ。野生動物がたくさん訪ねてきてね。鹿とかキツネとか......あるときは熊の親子が玄関まで来たんだ。あれはクレイジーだったね。
-それは怖いですね......。もしかしたら、みなさんの演奏を聴きたかったのかもしれません。
かもね(笑)。ゴミに食べものが混じっていたからだろうって俺は思ったけど(笑)。
-セッションの合間にはバーベキューも楽しんだりされましたか?
やったよ。夏だったし、ニューヨーク州北部は気候が最高だったんだ。ウッドストックの近くでね。俺は燻製器を持参して、バーベキューでステーキやチキン、それからいろんなものを焼いたんだ。夜はどこにも車で行く必要がなかったから、ワインやバーボンを飲んで......翌朝目覚めるとベーコン・エッグの匂いがして、下の階に行くとMike(Mangini/Dr)が朝食を作っていたりした。そこから次にやる曲の話を始めたりして......そういうことができたのは俺たち全員にとってとても有意義なことだったよ。何しろ14作目のアルバムだからね。結成して30年以上になるし、ここで改めて絆を確かめ合えて良かった。本当にクールなことだったよ。
-だからこそ、今作は今まで以上に一体感が強いのかもしれません。前作はオーケストラ・サウンドやクワイアをフィーチャーした壮大な作風でしたが、今作はシンプル且つヘヴィなバンド・サウンドが強く打ち出されているように感じました。今作で目指した音楽性はどのようなものですか?
今までよりもオーガニックなアルバムを作りたいという気持ちがあったんだ。ライヴ・アルバムに近いフィーリングがあるようなものをね。ミュージシャンが全員フィーチャーされて、ヘヴィでメロディックでプログレッシヴな、DREAM THEATERの音を構成している要素のすべてを織り込んだものを作りたいと考えた。それから、全員がもれなく携った作品にしたいというのがあったね。『The Astonishing』は俺が書いたストーリーがもとになっていて、曲はJordan(Rudess/Key)と俺が一緒に書いたから、今回とはまったく違う経験だったんだ。今回は全員が参加して、全員の声が反映されて、全員が貢献しているものにしたかった。そういう意図を今回は曲にうまく表すことができたと思う。
-前作は2枚組、2時間超えという超大作でしたが、今作は歴代のスタジオ・アルバムの中でも特に短い部類に入ります。これは意図的なものでしょうか?
そうだね、前作はものすごく長かった。2時間半近く......たしか2時間10分くらいだったと思う。それだけで1回のショーになるように作られていたんだ。今回は、全員が同じことを考えていた。スタジオに入る前にこんな話になったんだ。"今回は1時間前後にしておくのがいいかもしれないな"ってね。そういうことはもう長い間やっていなかったから。たぶん前回が『Images And Words』だったんじゃないかってくらい。DREAM THEATERのアルバムはすごく長いのが多いからね。2枚組とか、1枚だけど75分とか。今回は意識的に"1時間くらいのものにしよう。そうすれば電車通勤のときや、ジムでワークアウトするときに聴くことができる。あまり大きな負担にするよりも、車で聴けるようなものにしよう"って話になったんだ。
-みなさんがこのアルバムを作るために暮らしを共にしたように、今度は我々リスナーがこのアルバムと暮らしを共にするように考えた、ということですね。
まったくそのとおりだよ。リスナーとしては、アルバムをかけてもそれに圧倒されないことが大事なんだ。ひたすら楽しんでもらえたらいい。アルバムを聴いてもらえればわかると思うけど、ものすごくエネルギーのある作品だからね。曲から曲へと聴き進む間もエキサイティングな気分でいられること、それが本当に大事なことだと思うんだ。