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INTERVIEW

DREAM THEATER

2019.02.20UPDATE

2019年02月号掲載

DREAM THEATER

Member:John Petrucci(Gt)

Interviewer:菅谷 透

DREAM THEATERが持っている強みがすべて表れているアルバムにしたかった


-続く「S2N」はJohn Myung(Ba)による印象的なベース・イントロからスタートする、アルバムの中でもグルーヴィな楽曲です。この曲ではどのようなことを意識されましたか? また、タイトルはどのような意味なのでしょうか?

タイトルはコーラス部分から来ているんだ。"Signal To Noise(信号対雑音/SN比)"というフレーズがあってね。"S2N"はそれに由来しているんだ。オーディオ用語でね。録音しているものをできるだけクリアな音にしようとすると、ホワイト・ノイズが減るんだ。この曲ではそれをメタファーのように使ってみた。世界は雑音だらけの場所になることがある。ネガティヴなヘッドラインがメディアを賑わせているし、注意をそらすものもたくさんある。各種端末や電話、ソーシャル・メディア......それだけ注意をそらすものがあると、ひとりの人間として何かとスピリチュアルに共鳴するのはとても難しいことなんだ。そんな感じのことを曲には込めたつもりだよ。あの曲の始まりのベース・リフは、今回俺たちがヨンダーバーンに集まって最初に取り組んだもののひとつなんだ。なかなか面白い話があってね。作業をしてからちょっと他のことに気を取られてまた取り組むと、全然違う曲になってそのリフを使わない、なんてことがある。あとからそのリフをまた持ってきて取り組んでみたりするんだけど。それからまた別のことで気を紛らせるとまったく違うものになっている。そんな感じで、だんだんジョークみたいになっていったんだ。"このリフ、きっと使わないで終わるな。他の曲のインスピレーションになるだけで"なんてね(笑)。「S2N」は実は最後に書いた曲なんだ。"John(Myung)、今度こそお前のリフを使うぞ。今度こそ他のことに気を取られないって約束する(笑)。ちゃんと丸1曲書くよ"って。そうやってできたのがこの曲なんだ。

-「At Wit's End」はアルバムの中でも最長の楽曲です。虐待やPTSDがテーマになっているとのことですが、この曲のアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか?

「At Wit's End」はみんなで集まって最初に書き上げた曲だったんだ。最初の数日間で書けたんじゃないかな。このアルバムの方向性を見せてくれる曲だったと思うね。どういうアルバムにしようかというムードを設定してくれた。というのも、聴いてもらえればわかるだろうけど、最初はすごくテクニカルに始まって、エネルギーとスピリットに満ち溢れている。グルーヴも強いしヘヴィなリフも多用しているからね。一方で、ものすごくメロディックでもあって、たくさんの感情がこもっているんだ。このアルバムを作るときに俺たちが目指していたバランスがここにはある。DREAM THEATERが持っている強みがすべて表れているアルバムにしたかったからね。強力なメロディ、強力なグルーヴ、テクニカルなところ、ヘヴィなリフ......。最初にできた曲だったから、俺たちがやりたかったことが的確に再現できていると思う。

-ギター・ソロもとてもエモーショナルですね。虐待やPTSDがテーマになっているからかもしれませんが、ギターの音が被害者たちの背中を優しくさすっているようなイメージが浮かびます。

それは嬉しいね。ただ、俺たちの曲の書き方というのはちょっと変わっていて、まずは曲を書くんだ。その時点ではまだ歌詞とはなんの関連性もない。歌詞は曲ができてから書くんだ。思うに、James(LaBrie/Vo)はあの曲のエモーショナルなムードに合わせて歌詞のトピックを選んだんじゃないかな。すごくシナジー的なプロセスになっているんだ。曲自体のムードやエモーションが歌詞の主題にちゃんと合っているかどうかをものすごく重要視しているよ。Jamesは素晴らしい仕事をしてくれたと思うね。

-また、「At Wit's End」から「Out Of Reach」へと移る流れが非常に美しいと思いました。楽曲の収録順で意識したことはありますか?

そうだね。どのアルバムでもそうだけど、全部の曲を書き終えたら、いくつか決断をしなければならないことがある。曲から曲への流れがどうあるべきかとかね。さっきも言ったけど、例えば「Untethered Angel」は初めからアルバムのオープニングにぴったりな感じだった。ごく初期段階からね。「Pale Blue Dot」という壮大な曲を書いたときも、いかにもアルバムを締めくくる曲という感じがしたんだ。そんな感じで、とてもナチュラルな形で決まったものもある。この場合は「At Wit's End」がとてもメロディックな曲で、「Out Of Reach」はこのアルバムで唯一のバラードだから、隣り合わせたときの流れが合うと考えたんだ。

-アルバムの最後を飾る「Pale Blue Dot」は、太陽系の彼方から撮影された地球の写真と、その写真に基づく天文学者のカール・セーガンによる提言がテーマになっています。なぜこのモチーフを選んだのでしょうか?

これもまた、曲のムードに題材を合わせたいい例になるんだけど、曲はすごく宇宙の彼方っぽい雰囲気があるだろう? イントロのところなんてプラネタリウムのサウンドトラックみたいだしね(笑)。曲に"スター・ウォーズ"や"インターステラー"みたいなムードがあるんだ。題材は、俺が子供のころから"ボイジャー"(※NASAの無人惑星探査機)のミッションに興味を持っていたところからきている。俺が子供のころ、父親がカール・セーガンの大ファンだったんだ。よく一緒に"コスモス"(※カール・セーガン監修のドキュメンタリー)を観ていたから、それをトリビュートするというのは俺にとってとても大切なことだった。セーガンが、"地球は宇宙の中のほんの小さな点に過ぎない"と言ったのが俺はとても気に入っていてね。その小さな点に住んでいる俺たちは唯一の生命体かもしれないんだから、人間はお互いを大切にしないと。すごくディープな意味があると思う。

-アルバムのリリース後に行われる北米ツアーでは、新曲に加えて、5thアルバム『Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory』(1999年リリース)の20周年を記念した完全再現ライヴも行われるようですね。ファンからの人気も高い作品ですが、あなたにとってどのような作品でしょうか?

今度のツアーは俺たちにとってもものすごく楽しいものになるよ。『Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory』は俺たちにとって極めて重要だからね。あのアルバムで初めてやった試みも多かったし、Jordanが加入した最初のアルバムでもある。(2010年に脱退した)Mike Portnoy(Dr)がまだ在籍していたころで、初のセルフ・プロデュース作でもあった。あいつと俺でプロデュースしたんだ。そんなわけで、初めて外部のプロデューサーを使わない作品になった。それから、初のコンセプト・アルバムでもあったね。1stアルバムから10年経っていたけど、それまでコンセプト・アルバムを作ったことがなかった。俺たちはPINK FLOYDの『The Wall』やQUEENSRŸCHEの『Operation: Mindcrime』、THE WHOの『Tommy』なんかの大ファンなんだ。それで自分たちも初めてコンセプト・アルバムを作った。ファンがそれに強く共鳴してくれて......君も言っていたように、ファンの中でも人気の高い作品なんだ。だからプレイするのが楽しみだよ。それから、まったく新しいビデオ・ショーがそれに付随するんだ。オリジナルの、作り下ろしのアニメにストーリーを語らせる形でね。最高に楽しいものになるよ。

-新作を引っ提げてのツアーですし、ファンにとっても2019年はエキサイティングな年になりますね。

最高の1年になるよ。北米ツアーが終わったら夏はヨーロッパに行っていろんなフェスに出る。そのときは北米とは違ってアニバーサリー企画はやらないけどね。でもヨーロッパには改めて行くことになると思う。そのあと、年内になるかどうかはわからないし来年になるかもしれないけど、日本には絶対に行きたいと思っているよ。そのときはアニバーサリー企画もやりたいね。きっと楽しいものにするよ。

-来年でバンドは結成から35年を迎えます。長年のファンもたくさんいますが、若い世代がDREAM THEATERの作品を聴いてジャンルに興味を持ったり、実際にバンドを始めたりすることも多いと思います。どう感じていますか?

素晴らしいことだよね。ツアーに行くと、家族ぐるみで来てくれている人たちまでいるんだ。俺たちの初期を知っている親、近年になってDREAM THEATERを知ったキッズ。そういうのを見掛けると本当にクールだと思うし、最高の気分だよ。往年のファンが今も新作を聴いてワクワクしてくれるのも最高に嬉しいし、心の底からハッピーだ。その一方でずっと若い世代の子たちが俺たちの音楽にときめいてくれるのも嬉しい。幅広い層に届いていることが嬉しいんだ。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いできますか?

もちろん! 日本のリスナーが新作を聴いてくれることになって本当にワクワクしているよ。あと1ヶ月くらいでリリースされるんだ(※取材は1月19日)。日本のファンの反応が楽しみだね。楽しんでもらえることを願っているよ。今年中じゃないかもしれないけど、また日本に行ってツアーする日を楽しみにしているんだ。新曲だけじゃなくて――新曲はライヴでやったらものすごく楽しいものになると思うけど、『Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory』の20周年も一緒に祝いたいと考えているよ。日本に行くようになってもう長年経つけど、いつ行ってもものすごく楽しいんだ。ファンも素晴らしいしね。日本のファンもカルチャーも食べ物も人々も大好きだから、日本に行くのは俺たちにとって常に楽しみにしていることなんだ。早く行きたいね!