MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

SUM 41

2023.02.24UPDATE

2023年02月号掲載

SUM 41

Member:Deryck Whibley(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由 Translator:川原 真理子

6年ぶりの開催となる春フェス"PUNKSPRING"への出演が発表されているSUM 41。今回は、これまでにも"パンスプ(PUNKSPRING)"だけでなく単独公演など数多くの来日経験があるSUM 41より、フロントマンのDeryck Whibleyにインタビューに応じてもらった。ライヴについてはもちろんのこと、バンドや彼自身の近況、現在制作中だというダブル・アルバムについても詳しく語ってもらった。来日前の意気込みが聞ける貴重なインタビューなので、ぜひチェックしてほしい。

-まずは、バンドの近況についてうかがっていこうと思います。ここ3年は、音楽業界だけでなく人々の生活にも大きな変化があった期間でしたが、どのように過ごされていましたか? バンドとしての活動やメンバーとの結束にも大きな影響はありましたか?

もちろん! ロックダウンが始まる2週間前に子供が生まれたから、妻も俺もそっちで忙しかったんだ。それはそのあともどんどん続いた。でもしばらくすると曲作りやレコーディングを始めて、曲のデモ作りをしていたよ。ほとんどの時間スタジオでプレイしていたんだ。

-他のメンバーと会うことはできなかったんですよね?

ああ、それはなかった。

-昨年はSIMPLE PLANとの大規模なツアーもあり、ライヴ活動に忙しかった1年だったと思いますが、ライヴについては何か変化がありましたか?

いつもと変わらない気がしたね。ステージに戻ると、すべてが同じに感じられた。俺自身のパフォーマンスに関してはちょっと違っていたけどね。なぜだかわからないけど、パンデミックから抜け出してステージに上がったら、ギターを弾くことがちょっと退屈になっていたから、ギターを弾くのをやめて歌に専念することにしたんだ。この1年間ずっとそうしてきたけど、こんなのは初めてさ。どうしてなのかな。このバンドを始めてから27年経つけど、なぜか俺はステージでもうギターを弾きたくなくなったんだ。

-パンデミックが何か関係しているんでしょうかね。

一度ステージに上がった俺はエナジーに溢れていたんだけど、ギターはそれをはばんでいたんだな。(ギターを弾いていると)1ヶ所に留まって歌って弾かないといけないけど、俺は走り回りたかったんだ。

-これまでになく楽しんでいますか?

さらに楽しんでいるよ。以前からステージがすごく楽しかったから、もっと楽しむなんて無理だと思っていたけど、今の俺はさらに楽しんでいる。

-それは良かったです。近年は、自身の楽曲「Catching Fire」(2019年リリースの7thアルバム『Order In Decline』収録曲)にNOTHING,NOWHERE.が参加した新バージョンをリリースしたり、SK8の楽曲「Shooting Star」にSUM 41が参加したりするなど、ジャンルにとらわれない活動をしているアーティストとのコラボレーションも話題となっていますね。「Fat Lip」(2001年リリースの1stアルバム『All Killer No Filler』収録曲)もそうですし、もともとSUM 41は、ラップを取り入れるなど型にはまらない自由なパンク・ロック・スタイルのバンドであったと思うので、これは原点回帰のようなものと考えても良いのでしょうか?

俺たちは常にいろんなタイプの音楽をやって、いろんなスタイルをミックスさせてきたと思う。ひとつのことだけをやるバンドだと思ったことはないし、自分たちをパンク・ロック・バンドと呼んだこともない。単にロック・バンドと呼んでいるし、俺たちはいろんなタイプの音楽が好きだから、別のサウンドを出している他のアーティストとコラボレーションするのも、たまには楽しいよ。とにかく、俺たちは音楽全般が大好きなんだ。

-ダブル・アルバムとなる新作『Heaven And Hell』が控えているそうですが、こちらについても詳しく教えていただきたいと思います。制作はいつ頃から始めていたのですか?

ある意味偶然始めた感じなんだ。あてもなく曲を作っていて、中には他のアーティストがやってもいいなと思える曲もあった。パンデミック中にいろいろ依頼があったんだ。マネージャーやレコード会社から連絡があって、他のアーティストと一緒にやらないかという話があったんだよ。というわけで、万が一誰かと一緒にやることになったときのために曲を書いていたんだ。でも結局自分が書いた曲を全部気に入ったから、他人にあげたくなくなった。アルバムのプロセスはそこから始まったんだ。あと取り組んでいた曲が他にもあって、そっちはもうちょっとヘヴィだった。他人のために書いた曲はもっとポップ・パンクっぽかったんだけど。そういった曲が揃ってすべて聴いてみたら、これはアルバムとして成立するかもしれないけど、1枚じゃないなと気がついたんだ。間違いなく別々のアルバムになると思ったね。ポップ・パンクな面とヘヴィな面があったから、1枚は昔のSUM 41サウンド、もう1枚は新しいSUM 41サウンドといった感じだったんだ。

-では、長い期間にわたって曲作りをしていたのですね?

そうだよ。

-新作に描かれているテーマやメッセージについて教えてください。

歌詞の面で必ずしもそういうものはなかったし、いろんなタイプの音楽ではあるけど、俺の声だから全編にわたってSUM 41らしく聴こえるんだ。このバンドには特有のスピリットやエナジーがあるから、俺たちがやればアルバム全編が俺たちらしくなるのさ。

-歌詞の面では特にテーマがあるわけではなく、それぞれの曲に独立したストーリーがあるのですね?

そういうこと。

-音楽的な傾向についてはいかがでしょう? 先ほど話題となった多彩なコラボレーションもそうですし、今回はヘヴィなサウンドが目立った前々作『13 Voices』(2016年リリースの6thアルバム)や、エモーショナルで少しダークなイメージのある前作『Order In Decline』とは違って、1stアルバム『All Killer No Filler』のようなテイストがあるのでしょうか?

2枚組だから、1枚は『All Killer No Filler』や『Does This Look Infected?』(2002年リリースの2ndアルバム)時代の昔っぽいサウンドだし、もう1枚は『13 Voices』や『Order In Decline』と『Chuck』(2004年リリースの3rdアルバム)を足して割ったようなものになっているんだと思うな。

-音楽性によって2枚に分かれているわけですね?

そうだよ。1枚はポップ・パンクっぽくて、もう1枚はもうちょっとヘヴィなんだ。

-なぜそのように分けたかったのですか?

別にそうしたかったわけじゃなくて、自然とああなったんだ。さっきも言ったように、俺はアルバムの曲を作っているなんて考えてなかった。単に曲が完成してすべて順繰りに聴いてみたら、何をすべきか音楽が教えてくれたんだ。音楽が"これはこっちに、あれはあっちに入れるべきだ"って教えてくれたんだよ。そういう音だったんだ。

-それはすべて、あなたの判断だったのですか? バンドやレコード会社やマネージメントと話し合いましたか?

すべての曲を聴いて、2枚組にするというアイディアを思いついたとき、俺は誰にも何も言わなかった。ただ、他のメンバーに曲を送っただけだ。"これが、俺が書いた新曲だよ"って。そうしたらひとりずつだったけど返事が来て、"これって2枚組じゃない?"って言ったんだ。"実は、俺も同じことを考えていたんだ"と俺が言ったら、今度は別のメンバーから連絡があって、"これって2枚組にできるんじゃないか?"って言った。つまり、俺に連絡してきたみんなは同じことを言ったから、そうするべきだということは明らかだったんだ。

-1枚には収まりきらないほどの数の曲があったと。

それもそうだけど、数があっただけじゃなくて、2枚の別々のアルバムのように聴こえたんだよ。"20曲あるから"って感じじゃなくて、"この10曲はひとつのバンドのように聴こえるし、もう10曲は別のバンドのように聴こえるけど、同じバンドなんだ"って感じだったから、ふたつに分けて2枚組にしたんだ。

-曲作りはあなたひとりで行ったようですが、いつもそうなのですか? それとも、パンデミックのせいで余儀なくそういうことになったのですか?

すべていつもと同じだった。曲はいつも俺ひとりで書いているんだ。このアルバムにはMike Greenという共同プロデューサーがいるから、彼と俺で書いた曲がいくつかあるけど、その他の曲はこれまでと同じく、俺ひとりが引きこもって静かに書いたんだよ。

-レコーディングはいつ始めたのですか?

2021年の暮れか2022年の初めだったかなぁ。それからすぐにツアーに出かけたから、アルバムの制作は今までずっと中断していたんだ。やっと家に戻ってきたから、今完成させているところだよ。

-レコーディングは、バンドが集まって行うことができたのですか?

必ずしもそうじゃなかったね。みんなそれぞれのスタジオでやったんだ。こういうやり方になってから久しいよ。何年も前からこうしてきたから、大した違いはなかったね。スタジオでドラム録りをするときはみんな集まるけど、そのあとはみんなそれぞれ自宅にスタジオがあるから、Cone(Cone McCaslin)はベース・パートを、Dave(Dave Brownsound)はギター・パートを、Tom(Tom Thacker/Gt/Cho)は自分のパートを、それぞれやるのさ。

-では、実際のプロセスは変わらなかったのですね?

そうだね。

-ツアーに出たときに、新曲をやってみたりはしましたか?

サウンド・チェックでやった曲はあったけど、本番のライヴではやらなかった。

-ツアー中に新曲が変化していったりしましたか?

いいや、ツアー前にもうレコーディングは終わっていたんだ。

-でもまだ完成はしていないんですね?

そう、今仕上げているところだ。あとヴォーカルをちょこっとと、ミキシングとマスタリングをすれば完成だよ。アルバムの最終段階に来ているんだ。

-思い描いていた通りのものになりそうですか?

ああ、そう思う。本当に素晴らしいものになると思うよ。とてもエキサイトしているんだ。