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LIVE REPORT

SUM 41

2024.03.18 @KT Zepp Yokohama

Writer : 菅谷 透 Photographer:岸田哲平

出演キャンセルとなった2023年の"PUNKSPRING"から1年、まさかこんな形でSUM 41が日本に帰ってくるとは誰も予想していなかっただろう。2023年5月に解散を表明した彼らが、最後のワールド・ツアーの一環として、活動初期から相思相愛の関係を築いてきた日本の各地を巡るツアーを開催。初日の札幌公演、ヘッドライナーで出演した"PUNKSPRING 2024"を経て迎えたKT Zepp Yokohamaでのライヴには、最後の雄姿を見届けようと幅広い年代のファンが詰め掛けていた。

今回のジャパン・ツアーは、サポート・アクトとしてNECK DEEPが全公演に出演。1月にリリースされたセルフタイトル・アルバムの収録曲を中心に、人気曲の「Gold Steps」なども披露して、観客にポテンシャルを力強く印象づけていた。彼らのような次代を担うバンドがこのメモリアルなツアーに同行したことは、きっと今後のシーンの布石となるはずだ。ラストは爽快感の中に反骨精神を垣間見せる「STFU」をドロップし、SUM 41へしっかりとバトンを繋いだ。

歴代のジャケットがコラージュされたバックドロップを背にSUM 41のメンバーが姿を現し、最後にDeryck Whibley(Vo/Gt)がステージ中央のマイクへ駆け寄ると、「Motivation」からライヴがスタート。ポップ・パンクの側面を代表する楽曲にフロアの熱気が一気に上昇していった。アウトロには「88」のブレイクダウンとDave Brownsound(Gt)のスラッシーなソロ・パートを引用したライヴ定番のアレンジを披露し、パンク~メタルの垣根を飛び越える自由度の高い音楽性を1曲目から提示していた。"俺たちはクレイジーになるためここに来たんだろ?"というアジテートに続いて、「The Hell Song」、「Over My Head (Better Off Dead)」とキラーチューンを連発。息の合ったリードをキメるDaveとTom Thacker(Gt)のツイン・ギターや、プレイにも立ち振る舞いにもすっかり貫禄が出てきたCone McCaslin(Ba)、軽快さと重厚さを併せ持ったFrank Zummo(Dr)のドラミングと、演奏陣はもはや鉄壁だ。Deryckは翌日の名古屋公演が中止となってしまったこともあり万全のコンディションではなかったかもしれないが、観客のシンガロングにサポートされながらも要所で鋭いヴォーカルを披露。間違いなくライヴ・バンドとして今が最良の状態にあると言えるパフォーマンスを見せていた。ひとしきりフロアを煽ったあとは、こちらも人気曲の「No Reason」をドロップ。イントロの"Hey!"から割れんばかりの大合唱と共に拳が上がると、ダイバーも大量発生するほどの熱狂に包まれていった。

ここまでは1stアルバム『All Killer No Filler』~3rdアルバム『Chuck』の収録曲が続いていたが、次に披露されたのは7thアルバム『Order In Decline』から「Out For Blood」と、4thアルバムの表題曲「Underclass Hero」だ。モダン・メタルへ最接近した楽曲とポップ・パンクへと回帰した楽曲が違和感なく並んだあたりもSUM 41の懐の深さが感じられたし、風船がフロアを舞った「Underclass Hero」ではTomがソロを弾く場面が実にエモーショナルだった。"PUNKSPRING"にも来てくれたファンに捧げられたレア曲の「Some Say」を経て、Deryckが"今日は古い曲も用意しているけど、もうすぐ出る『Heaven :x: Hell』の曲も持ってきたんだ。SUM 41の最後のアルバムだよ"と語り掛けると、観客からは嘆きの声が。"ブーイングありがとう"と苦笑したあと「Landmines」、「Waiting On A Twist Of Fate」の2曲がプレイされたが、どちらも最新曲とは思えない白熱の盛り上がりに。最新作への期待感を募らせた一方で、それをライヴで体感することはできないんだろうな......という一抹の寂しさも感じられた。

メタル・ヘッズへと捧げられ、"sacrifice!"のスクリームからサークル・ピットが生み出された「We're All To Blame」を経て、「Walking Disaster」からはバックドロップも切り替わり後半戦に突入。「With Me」ではTomのピアノと、Deryckのアコースティック・ギターが幻想的な光景を生み出していく。続いてはオールドスクールな曲を、と初期の代表曲「Makes No Difference」や、2ndアルバム『Does This Look Infected?』より「My Direction」、「No Brains」、「All Messed Up」のメドレーを披露、フロアからは歓喜の雄叫びが上がっていた。Frankのドラム・ソロを挟んで、PINK FLOYD「Another Brick In The Wall」のイントロを引用した「Fake My Own Death」ではステージ後方に悪魔の巨大風船が立ち上がり、怒濤のクライマックスへと突入していく。QUEEN「We Will Rock You」のカバー(『Queen Rock Montreal』などに収録のファスト・バージョンなのがSUM 41らしい)で再び強固な一体感を作り上げたあとは、「Fat Lip」、「Still Waiting」を立て続けにドロップ。パンク/メタル/ラップを内包し、多くのキッズたちをヘヴィ・ミュージックの道へと誘った名曲に、オーディエンスも爆発的な盛り上がりを見せていた。アンコールではセンチメンタルに疾走する初期曲「Summer」を披露したあと、Deryckが何度も"Thank you"と口にする。最後にもう一度クレイジーになろう、と届けられたのは「In Too Deep」。会場全体がそれぞれの想いを噛みしめながら、バンドのキャリアを総括し祝福する一夜は幕を閉じた。

日本での公演を終えたSUM 41はこのあと北米、ヨーロッパを回り、2025年1月30日に母国トロントで最後の公演を行うことが決定している。まだ実感が湧かないというのが正直なところではあるけど、いつの日かまた日本のステージに立つ彼らの姿を見られたら......という淡い期待を持ちつつ、まずは彼らが最後に届けてくれた『Heaven :x: Hell』と共にこれからの日々を歩んでいきたい。

※写真は3/16公演のものです。

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