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INTERVIEW

BAD RELIGION

2013.01.09UPDATE

2013年01月号掲載

BAD RELIGION

Member:Greg Graffin (Vo)

Interviewer:山本 真由 Interpreter:安江 幸子

-前作『The Dissent Of Man』のリリースから2年以上が経つわけですが、私個人的にはあっという間の2年間という印象です。BAD RELIGIONにとっても30周年のツアーがあったり、目まぐるしい2年間だったのではないかと思うのですが、実際はどうでしたか?

俺にとってはいつも目まぐるしいけどね(笑)。もう慣れたから、そう忙しいとは感じなくなったよ。学問と本の執筆とBAD RELIGIONと、いつも3つのプロジェクトが同時進行しているような感じだから。まぁ、少しは休みたいと思うときもあるけどね(笑)。

-前作は30周年、そして15作目という節目に相応しい気合いの入ったアルバムになっていましたが、新作『True North』は、もっとナチュラルにできあがった曲が集まった印象を受けました。前作と比べて、アルバム制作において心境に変化はありましたか?

そうだね、とてもナチュラルな形でできあがったような気がするよ。今回は曲が俺の中から自然に浮かび上がってきた感じだね。プロセス的にもそんなに苦しまないでできたよ。今回、Brettと俺は自らに課題を与えたんだ。“曲の長さは2分以内にしよう”ってことにして、できるだけそのフォーマットに収めることにした。かなり近いところまでいったと思うよ。短いと言っても断片的ではなくて、1つ1つが曲として完結している。“クラシックな(昔ながらの)” BAD RELIGIONのフォーマットだね。その課題がいい曲を書くことに寄与したと思う。キャリアのこんなに後になっても、まだソング・ライターとしてもミュージシャンとしても成長できたのは良かったよ。常に変化の余地はある、と考えていたいんだ。

-PENNYWISEのFletcher Dragge(Gt)があるインタビューで語ったところによると、彼らの最新作『All Or Nothing』を聴いたBrett Gurewitzから連絡があって、『All Or Nothing』の影響で、まるで『No Control』のようなファストなBAD RELIGIONを蘇らせようと思った」と言われたとか。確かに本作は、曲によっては『No Control』を彷彿とさせるものがありますね。

そう、BrettがFletcherと話をしてから間もなく、俺たちの歴史の中でも特に“クラシックな”時代について俺もBrettと話をしたんだ。『No Control』、『Suffer』、『Against The Grain』、『Stranger Than Fiction』辺りを今回のテンプレートにしようってね。さっき言った2分以内の縛りを作って、ソング・ライティング的にはその時代を思い出しつつ、最新のスキルを駆使しようという話になった。今はドラマーも変わったし、リズムのオプションも向上したからね。Brooks(Wackerman /Dr)はあの頃居なかったけど、今回はあいつがあの時代の音に磨きをかけるための手段になってくれたと思う。

-『True North』というタイトルを採用した訳は?

今回のアルバムでは何かをachieve(成し遂げる、手に入れる)したいと思ったんだ。もう年だからね(笑)。俺たち自身や同世代の人たちに訴えかけるアルバムを作りたかった。それが俺にとっては大切なことだったんだ。年取ってもティーンエイジ・ライフの歌を歌っているようなバンドにはなりたくないからね。『True North』というタイトルには、そのスピリットが表れていると思う。激ロックの読者の中で地質学や地図に興味を持っている人たちは知っていると思うけど、地図を見ると北を示す矢印が描かれているだろう?あれはコンパスを持って出かけるときに見る北とは違うんだ。方位磁針が示すのは磁北だからね。磁北は、地図に描かれている真北(true north)とは違うようになっているんだ。世の中に出ると、真北がどこなのかはなかなか分からない。人生という旅に出るとき、人に指示された方向を進むことはできるし、人から期待される方向に進むということもできる。こうしろああしろと言われる通りに進めばね。でもその方向が自分にとってしっくりこないというのはよくあることだ。それは指示した側が間違っているのではなくて、その方向が自分にうまく合わないというだけなんだけどね。そういうことに俺は世の中に出て間もなく気づいて、今もその気持ちが続いている。そして歳を重ねるにつれて、自分にとっての真実、true northとは何なのか、人生の意味とは何なのかを自分で探さなくてはと思うようになったんだ。そして若い人たちにも、自分で自分だけのtrue northを探してもらいたいと思う。そうすれば自分というものの全体が見いだせるからね。そういう意味で今回のタイトル曲やアルバム全体のスピリットは、今日の俺たちの一部であるだけでなく、若い世代に対するメッセージでもあるんだ。

-だからかも知れませんが、アルバム全体的には、かつての攻撃的な激しさとはちょっと種類の違う、希望に満ちた力強さを感じました。

そう言ってくれると嬉しいね。俺たち自身意識していたことだから。活力を呼び戻すような雰囲気を作りたかった。今回の最後の曲は「Changing Tide」(移り変わる潮流)というんだけど、あれは海岸線というメタファーを使っている。海岸に行くと、いつ潮が満ちたり引いたりするか分かるだろう?潮の高さなんかも予測することができる。だけど人生で1番大切な出来事は不意にやってくるものなんだ。予測できる潮汐ではなくて移り変わる潮流……。メタファーから離れて考えても、気候の変化によって、潮流が予測できなくなっている。ほとんど当てにならなくなっているんだ。だけど人生に積極的に関わっていきたいと思うのであれば、人生の不安定な要素から逃げるよりも、その潮流の変化を受け入れて、なおかつ渡り歩かなければならない。変化を受け入れることができれば、大変だと理解しつつも受け入れることができれば、淡々と死に向かうのではなくて生きている実感を味わうことができるんじゃないかな。