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LIVE REPORT

"MEGA VEGAS 2025"DAY1

2025.03.22 @神戸ワールド記念ホール

Writer : 内堀 文佳 Photographer:Viola Kam (V’z Twinkle) 、鈴木公平

Fear, and Loathing in Las Vegas(以下:ラスベガス)の主催フェス"MEGA VEGAS"が今年も開催! 2023年から3年連続、通算5回目の開催となる今回も彼等の地元、神戸は兵庫県内最大の屋内会場 ワールド記念ホールにて、"MEGA VEGAS"らしい豪華ラインナップによる異種格闘技戦が2日間にわたって繰り広げられた。場外に設置された、ラスベガスメンバーが衣装として着用しているブランドのブース前ではSo(Clean Vo)等が、CRAFTROCK BREWINGとコラボしたオフィシャル・クラフト・ビールのブースではレオタード姿のTaiki(Gt)とMakoto(THE LOCAL PINTS/Gt/Cho)が写真撮影に応じる等、ホスピタリティ精神にも溢れたこのお祭り。本稿では、04 Limited Sazabys、トゲナシトゲアリ、Saucy Dog、ROTTENGRAFFTY、打首獄門同好会、フレデリック、そしてスペシャル・ゲストとして西川貴教が駆け付けた初日公演の模様を届ける。


ROTTENGRAFFTY


暗転するや否や、大歓声と盛大な拍手が響き渡るワールド記念ホール。トップバッターのROTTENGRAFFTYが、まずは最初に「世界の終わり」を繰り出す。ロットン(ROTTENGRAFFTY)らしい和のエッセンスを盛り込んだラウドチューンで場内の熱を一気に引き上げると、イントロのギター・リフとヘヴィなドラムがさらにオーディエンスのテンションを急上昇させる「ハレルヤ」を畳み掛け、すっかりサークル・ピットやクラウド・サーフでぐしゃぐしゃになったフロアを曲名通り「D.A.N.C.E.」でますます踊らせる。しかし、NOBUYA(Vo)は全く満足していない様子。"ROTTENGRAFFTY、立ちリフト禁止にしました。怪我人がいっぱい出たからやめることにしました。でもさ、リフト、ダイブ、モッシュ、誰がやめろつってん、おい。立ちリフトすんなっつってるだけやで。モッシュ、ダイブ、サークル・ピット、やらんかいお前等! 殺す気でかかってこい!!"その言葉に続いた「THIS WORLD」に、観客はコーラスの音量も一段と上げる形で応えた。

ラスベガスとも長い付き合いになったと話しつつ、神戸で思い浮かぶこととして"COMING KOBE"およびその実行委員長を務めた故 松原 裕についてN∀OKI(Vo)が語る(なお松原はロットンの所属事務所社長も務めた)。たくさんのライヴ・バンドと関わってきた彼への弔いとして、松原がいなければ生まれなかったという「アイオイ」をここで届けると、会場中から大きく温かい歓声と拍手が送られた。そこから最新作『わびさび』より「響都グラフティー」、大合唱が巻き起こった代表曲「金色グラフティー」、「秋桜」でスパートをかける。ありったけの熱量を詰め込んだショート・チューン「暁アイデンティティ」を投下し、颯爽とステージを去るその姿は実に潔くかっこ良く映った。


Saucy Dog


先程までのアグレッシヴなサウンドとは打って変わって、優しいアコギの音色や口笛が響くピースフルなSEで登場したSaucy Dog。舞台上で円陣を組み、「馬鹿みたい。」でライヴをスタート、石原慎也の温かみと強さを兼ね揃えた歌声と、それにビートを刻みながら華やかにハモるせとゆいかの声を聴かせる。ステージの左右に設置されたヴィジョンには、メンバーが演奏する姿の上に歌詞が表示され、内容は切ないながらも白い文字がフレーム内に浮かんできたりする演出が、視覚的に楽曲のポップネスを増幅していた。そんななか、「現在を生きるのだ。」ではオーディエンスのシンガロングを聴くために石原がイヤモニを外したり、「夢みるスーパーマン」の前に"あなたのヒーローになりたいよ!!!"と絶叫したり、石原の弾き語りで始まる「煙」でも曲の緩急に合わせ声を大きく張り上げたりと、音楽性は本イベントのラインナップの中では明るくライトなほうでも、熱量は変わらないことを示していく。

秋澤和貴のグルーヴィなベースラインが楽曲をぐいぐい先導する「poi」から後半に突入。そのまま繋いだ「ゴーストバスター」のラスサビではモッシュ・ピットやダイバーが発生、自身も楽しすぎて自分の汗に溺れそうという石原が"みんな大丈夫? 水分取ってる?"と問うと、女性ファンの声のほうが大きいSaucy Dogのライヴではあまり聞かれない野太い歓声が上がり、"「ROOKIES」観てるみたいやな"と笑う。そんなSaucy Dogは"「MEGA VEGAS」に出るようなバンドじゃない"と自分でも感じていたというが、呼んでくれて嬉しかったし、期待に応えたいという思いから、"Saucy Dogが呼ばれるっていうことはこういうことだって思う曲持ってきました"と「いつか」、「優しさに溢れた世界で」で締めた。


トゲナシトゲアリ


メンバーがステージに登場してから1曲目「サヨナラサヨナラサヨナラ」のシンバル4カウントが鳴るまで、一切歓声が止むことなくトゲナシトゲアリのターンが開始した。齢17にして圧倒的にパワフルな歌声を聴かせる理名(井芹仁菜)、音と立ち姿でギター・ヒーローとしての存在感をいっそう高める夕莉(河原木桃香)、楽曲の前のめりな勢いを下から引っ張る朱李(ルパ/Ba)と、サポート・メンバーの宮内沙弥(Dr)と鈴木栄奈(Key)が奏でるアンサンブルでフロアのテンションはマックス、ダイバーが続出する。バンド主催のイベントに出演するのは初めてだと理名が語っていたが、これまでもメディアミックス・プロジェクト等から生まれたグループをはじめ、シーンを超えて様々なアーティストが出演してきている"MEGA VEGAS"である。きっといただろう、彼女たちを初めて観るという観客も含め、受け入れ態勢は万全だということが場内を見れば一目瞭然だった。 メンバー紹介からのベース・ソロを経て、理名の声量をも凌ぐ程の爆音で朱李が"MEGA VEGAS!!!"と咆え、「空白とカタルシス」、「空の箱」、そしてTVアニメ"ガールズバンドクライ"OP主題歌「雑踏、僕らの街」、1stシングル表題曲「名もなき何もかも」を繰り出していく。楽器隊各メンバーのスキルはもちろん、アップダウンが激しい且つ超早口なヴォーカル・パートを歌いこなす理名の姿が圧巻だったことをここに記したい。

毎公演、ライヴ初披露曲があるという彼女たち。今回も例に漏れず、リリースしたばかりの「ダレモ」がお披露目されたが、このフロアのノリが大人しくなるわけもなく、変わらずもみくちゃになったり、拳を高く突き上げたりする。ラスト「運命の華」まで、熱気は上昇する一方だった。


打首獄門同好会


時刻は15時過ぎ、タイムテーブルも折り返し地点に差し掛かろうというところ。散々暴れ倒したフロアもきっと小腹が空いてきたこのタイミングで、リハを終えた打首獄門同好会からおやつのうまい棒が支給される。"うまい棒を回せ!"というBGMに合わせてうまい棒が入った袋を後ろに回し、手に持ったうまい棒を頭上で回して待っているうちに、ライヴが始まる前から一体感が生まれていた。まもなくして打首獄門同好会が改めて登場、1曲目はもちろん「デリシャスティック」だ。
続く「筋肉マイフレンド」でともに汗を流したら「BUNBUN SUIBUN」でしっかり水分(と塩分)補給を促し、そのまま勢いを緩めず「ほっこりニュース大集合」に突入。前日に神戸入りしたものの、ホテルの予約日程にミスがあり、別の宿は取れたが焼肉丼 十番での夕食は諦めることに......しかし一夜明け会場入りすると、十番のケータリングが用意されていた! というニュースを大澤敦史(Gt/Vo)が発表し、場内は大変ほっこりした。

"MEGA VEGAS"に呼んでもらったことへの感謝を大澤が述べつつ、フェスを主催するにあたってのラスベガスの苦労を慮って次の曲に選ばれたのは「はたらきたくない」。誰しもがこのイベントの裏側で動く彼等の思いに寄り添っていたことと思うが、ふと2番手 Saucy Dogが「優しさに溢れた世界で」でのコール&レスポンスで"仕事頑張ってる人!"と呼び掛けた際、一際大きな声が上がっていたことを思い返す。この日の観客に最も染みたのは、もしかしたらこの曲だったかもしれない。ラストは「島国DNA」と「日本の米は世界一」。会場中の日本人、およびこの日ラインナップした日本人が作った音楽が好きで集まった者たちの心を1つにした。