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INTERVIEW

"POWER OF KOBE"座談会

2025.08.13UPDATE

2025年08月号掲載

"POWER OF KOBE"座談会

阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えた今年、Fear, and Loathing in Las Vegas(以下:ラスベガス)が地元神戸で、特別なイベント"POWER OF KOBE"を開催する。9月6日、7日の2日間にわたり、神戸 ワールド記念ホールで行うこのイベントには、ラスベガスがツアーや主催フェス"MEGA VEGAS"を通じて関係性を築いてきたバンドや仲間が多く登場。ラスベガスならではの多彩なジャンルでのラインナップとなったが、今回はその中でも神戸を中心に活動をしてきたラスベガス、キュウソネコカミ、フレデリックの3バンドに登場願い、神戸という街とその音楽について話を訊いた。

Fear, and Loathing in Las Vegas:So(Clean Vo)
キュウソネコカミ:ヤマサキ セイヤ(Vo/Gt)
フレデリック:三原 健司(Vo/Gt)
Interviewer:吉羽 さおり


やるからには絶対いいイベントにしたいし、他の地域の震災復興も願うイベントにしたい(So)


-皆さん旧知の間柄ではあるかと思いますが、まずは互いのバンドについて知ったのはいつ頃ですか。

So:キュウソ(ネコカミ)は、知ったのでいうと大学生の頃なので2011年とか12年で。実は大学が一緒で、同じ大学で軽音をやっている先輩っていうのでよく話を聞いていたんです。たしかアルバムが出たときにみんなで聴いて、すげぇって思った記憶がありますね。フレデリックは、メンバーがずっと好きで結構前から聴いていて。気にはなってたけど、音楽的にカッコいいシュッとしたお洒落系やから、俺等と対バンは難しいかなって思いながら、ダメもとで2016年のツーマン・ツアー("2Man Shows Tour 2016")に誘ったら出てくれたのが始まりで、そこから仲良くさせてもらってる感じですね。

-三原さんは対バンのオファーを貰ったときどう思いましたか。

三原:むっちゃ怖かったですよ(笑)。もちろんラスベガスのことは知ってましたし、神戸のバンドで知らない人はいないんじゃないかってくらい有名で、カッコいいけど、そもそもそういうバンドと一緒にやれる機会はこの先ないんやろなみたいな感じで。そこで最初に呼んでもらったのが神戸のライヴハウスでもなくいきなり札幌やったから。

一同:(笑)

三原:何が起こるんやろうっていう。でも音楽ももちろんカッコ良かったし、人間もめちゃくちゃ良かったし、人としてめっちゃ合う人やったんで、そこからいろんなところでツアーに呼んでもらったり、"MEGA VEGAS"に出演させてもらったりして仲が深まっていった間柄ですね。

-ヤマサキさんは大学にこんな後輩がいたというのはいつ頃知りましたか。

ヤマサキ:全く気付いてなくて、大学を出てからでしたね。他にもオーラル(THE ORAL CIGARETTES)の拓也(山中拓也/Vo/Gt)とかもおったんやんな?

So:そうですね。同い年にオーラルがいて。ただ僕等はセイヤさんとは在学中は被っていないんですよね。

ヤマサキ:そうやんな。その後も同じ神戸でやってたはずやねんけど、界隈が違いすぎてかすりもしてなかった。けど、あるツアー(["PHASE 2" Release Tour FINAL SERIES])でいきなり初対バンでZepp Nagoyaに呼んでもらって、お互い神戸の小さいライヴハウスでやってたのに、初対バンがZeppっていう珍しいパターンでした。フレデリックは、今見返したら13年前くらいに健司とメールしてて。でもアドレス交換する前から対バンしてるよな?

三原:してますね。21歳とかやったんちゃうかな。フレデリック、キュウソはもうお客さんがいない頃からの仲で。

ヤマサキ:ことあるごとに対バンもしてるし、毎回フレデリックに俺等の曲を俺等以上にお洒落なアレンジでやられる(笑)。"なんやねんこの「お願いシェンロン」(2012年リリースの1stフル・アルバム『10代で出したかった』収録曲)は"とか。かましかまされしながら今まで切磋琢磨しながらやってきているバンドやなって思ってます。

-"POWER OF KOBE"開催にあたって、キュウソとフレデリックに出てもらうのはすぐに決まった感じですか。

So:イベントの趣旨的としても神戸のバンドには出てほしいなっていうのがあって。仲いいところで、ライヴがすげぇカッコいいってなったらやっぱりこの2バンドかなと、声掛けさせてもらった感じですね。

ヤマサキ:もはやこの3バンドで毎年神戸でやらへん? て言いたいくらい、俺等別々の大きなイベントやりすぎやから(笑)。だから"POWER OF KOBE"で3バンドが一緒に出れるっていうのはめっちゃ嬉しい。

-今回は阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えての大きな事業にもなっています。出演するにあたって、ヤマサキさん、三原さんはどういう想いがありましたか。

ヤマサキ:兵庫で結成して十何年バンドやってきて、そのやってきた先に30年のイベントに呼ばれるというのは、めちゃめちゃ光栄やなと思いますね。

三原:僕も同じですね。5歳でしたけど当時の神戸のこととかは覚えてるし、そのときは大人がめっちゃ大変そうにしていた記憶が強くて。自分が同じような年齢になってきて、とんでもないことが起こってたけど、支えてくれる人とか復旧、復興していった力がすごかったんやなと。繋いでくれた想いもあるから、そういうのも含めて音楽で何か表現できればなと思います。

-Soさんは主催という立場でもありますが、神戸という街を背負って大きなイベントを起こしていくのにはどういう想いがありますか。

So:やるからには絶対いいイベントにしたいし、他の地域の震災復興も願うイベントにしたいと思っています。実際に震災を体験したバンドにも出てもらって、そういう話も伝えられたらと考えているし、健司君も言ってたように、復興のパワーってすごいんやなって大人になって気付いたこともあるので、今の平和な神戸のありがたみをみんなで感じられるイベントになったらいいなと思いますね。

-神戸はバンドを育ててくれた場所でもあると思いますが、神戸という街はバンドにとって、音楽をやる人にとってどんな街だと感じますか。

So:音楽に寄り添ってる街だなというイメージがあって。ジャズ・バーとかも多くて、周りの大人もそういうところに連れてってくれたり。あとは海外文化が強いのもあるんかなとか。

-港町で、外国人居留地もありましたしね。

So:そうですね。みんな音楽が当たり前に好きなイメージがあって。バンド・シーンで言うと昔は松原(裕)さんという人がいたり、めちゃくちゃなライヴハウスの店長さんがいてはったりしたんすけど、そういう名物店長もいながら、当たり前にバンド・シーンがある感じというか。高校生くらいから友達のバンドに誘われてライヴハウスに行ったり、"チケット買ってや"みたいなんがあったり、そういうのが普通にクラス内で行われるみたいなのはあまり他の地域はないらしくて。音楽が身近にある街かなと思います。

-ラスベガスの音楽性はそういうなかだからこそ育まれた感覚はありますか。

So:バンド仲間が交流するみたいなのがあったから、仲間が見つけやすかったのはありますね。それぞれ全然違うバンドをやっていたなかで集まってできたのがラスベガスなので。音楽性というよりは、結成できたのは神戸やったからかなと思いますね。

ヤマサキ:今思えば神戸のバンド・シーンって他の地域と違うんですよ。いろんな音楽性のやつらもいれば音楽できないやつもいて。音楽全くできないけど生き様だけでやってるやつらと一緒にステージに立って、俺たちはどうやってオリジナリティを出してそいつらに勝つかばっかり考えてたら、キュウソネコカミのスタイルができあがったんです。他の地域だとギター・ロック同士高め合うみたいなんがあるんすけど、俺等は暴れ回っているやつにどうやって勝つか、全裸で出てくるやつより面白くするにはどうしたらええかっていうので、それは神戸だからこそ学べたかなと思っていて。
神戸は受け入れてくれる土壌みたいなのがハコによって違ったし、自分がいつも出てるハコ以外に出たときに、また違う出会いがあるんですよね。ここのハコのボスはこいつかみたいな。神戸だからこそキュウソネコカミがやれたなとは今思っています。

三原:たしかに神戸のシーンってなんか面白いことをしたろうっていうのがあるから、どんな形であれ、その人しか持っていないライヴを見せてくれて。この3バンドもそうじゃないですか。人として波長が合うから友達になったり一緒に音楽をやれてますけど、中身や音楽性、やっていることでいうと全然別やし。そもそも僕は出身が兵庫県の宝塚で、ちょうど神戸のシーンと大阪のシーンどちらも行ける感覚やったんです。フレデリックがどこをホームにしてやっていくかっていう話をしたときに、神戸のライヴハウス・シーンおもろない? って。どういう対バンでも、さっきセイヤさんが言ってたみたいに、音楽できなくても立ってるやつがいたり(笑)──

ヤマサキ:おったよなぁ、いっぱい(笑)。

So:パンチ勝負みたいなのが一定数おるんすよね。

三原:わけわからん打ち込みのインストやって帰るやつとかね。それよりおもろいことするためには何がええんやろう? って。それがパフォーマンスに寄っていく人もいれば音楽をより深めていく人もいて。フレデリックが神戸のライヴハウスを出て、全国区でいろんなアーティストとやるようになったときに、神戸のシーンってめっちゃおもろかったんやなと思ったから、それくらい魅力のある場所やと思いますね。

-独自の文化が育まれているんですね。自分たちが育ってきた頃のライヴハウスの感じと今の世代、2020年代くらいに入ってからはこう変わってきたな等感じるところはありますか。

So:僕等はいわゆるホームのライヴハウスがなかったのもあるんですけど、2人が言っていたような雰囲気はすごく感じてて。多彩なバンドがいっぱいいる地域やなっていう感じはあったんですけど、その後どんなふうに変わっていったかっていうと、あんまり把握できていないのが正直なところで。最近神戸のシーンどうなんやろうな。

ヤマサキ:今はそのへんのとこまではさすがに見てないな。神戸の一番ディープなシーン、音楽できないけどステージ立つような人のイベントには行かなくなっちゃったので(笑)。ちょっと思うのは、最近の子たちはレベル高いなって思いますね。演奏も上手いし、曲作りももうこんなん作れんのみたいな。ビビるくらいレベル高いなっていうイメージがありますね。

So:今全裸になっているやつはいるのか(笑)。

三原:たしかに、どこかのライヴハウス出身みたいな子は減りましたよね。下積みをしなくてもめっちゃ売れるみたいな。

ヤマサキ:神戸やったら今は、猫背のネイビーセゾンとか。

三原:こないだやっと会いましたよ。

ヤマサキ:会った? めっちゃフレデリックのこと好きやで。

三原:ベースの子(おかともき)が専門学校のESP(ESP学園)に通ってて、僕もESP出身なんですけど、"ESPなんやんな?"みたいな話したら、"健司さんと(赤頭)隆児(フレデリック/Gt)さんが入ってたんで入りました"って言ってくれて。

So:すご!

ヤマサキ:めちゃくちゃ後輩やん! それはアツいな。

三原:そういう存在なのはめっちゃ嬉しいですね。