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LIVE REPORT

TRIPLE AXE

2024.08.21 @幕張イベントホール

Writer : 吉羽 さおり Photographer:HayachiN(HEY-SMITH)、鈴木公平(SiM)、ヤマダマサヒロ(coldrain)

HEY-SMITH、coldrain、SiMの3バンドによるTRIPLE AXE。2012年に3バンド合同企画"TRIPLE AXE TOUR '12"がスタートして以来コンスタントに活動を重ね、3マンの対バン形式やTRIPLE AXEという1つのバンドとしてツアーを行い、海外公演や、2019年にはTRIPLE AXEとして全国5ヶ所の夏フェスの舞台を席巻するなど、ラウド・シーンにとどまらない存在感を示してきた。全国5ヶ所を回る今回のツアー・タイトルは"TRIPLE AXE THE LAST TOUR"。さらなる飛躍を遂げるべく、ここで一旦ツアー活動に終止符を打つという。この"LAST TOUR"のファイナルが8月21日、TRIPLE AXE最大級の規模となる幕張イベントホールで開催された。

対バン形式による今回のツアー、この日の一番手を担ったのはHEY-SMITH。満員御礼の会場に向け猪狩秀平(Gt/Vo)は"今日はHEY-SMITHがリリースした全てのアルバムから曲をやっていく"と宣言し、まずは最新作『Rest In Punk』から「Be The One」、「Say My Name」を連投。さらに"coldrain、SiMと出会った頃一番演奏していた"という1stフル・アルバム『14 -Fourteen-』からの曲などが続く。全フル・アルバム、ミニ・アルバムから数曲ずつという構成は、まさにHEY-SMITHのオールタイム・ベストであり、盟友となった2バンドと築いてきた歴史でもあるだろう。TRIPLE AXEだからこそ、よりエモーショナルに響くセットリストだ。"今日、絶対にやらないといけない曲"(猪狩)とプレイした「Goodbye To Say Hello」での観客一体となった大合唱が心に沁みる。開演前に会場の後ろからフロアの様子を見ていたという猪狩は、観客がTRIPLE AXEの最新Tシャツや歴代のTシャツを着て集っている光景に、"ずっと時代を共にしてきたんだな"と感慨深げに語った。また、これは3バンドともにMCで話したが、"LAST TOUR"ではあるがTRIPLE AXEの看板を下ろすわけではないと語る。HEY-SMITHの場合は、かなす(Tb)が年内いっぱいでライヴ活動を休止することもあり、ツアーをすることが難しくなるが、バンドとしてもTRIPLE AXEとしてもまた最高の形で戻ってくるという言葉で観客を安心させてくれた。頭から観客も一体となって歌い、もみくちゃになって踊った全17曲、"また絶対会おうぜ!"(猪狩)と言ってラストは、「Come Back My Dog」でバンドも観客も汗みどろとなるアグレッシヴさで締めくくった。

続くSiMのステージは「Get Up, Get Up」でスタートを切った。MAH(Vo)の"行こうぜ、幕張"という声に大合唱が起こり、SINがベースを抱えダイナミックに回転するとフロアもうねりを帯びて熱気を増していく。次の曲も2ndミニ・アルバム『LiFE and DEATH』から「Amy」、また2ndフル・アルバム『SEEDS OF HOPE』から「Faster Than The Clock」という感じでHEY-SMITHに倣って曲紹介をしていたMAHだが、"もう全部覚えてられないよ!"と序盤にしてこのシステムを断念。SiMはSiMらしく、傍若無人なパワーを持ったアンサンブルで観客を豪快に揺らしていった。また「The Rumbling」でスタートした中盤は、さらに凄みを増したステージングでアリーナを沸騰させ、「Blah Blah Blah」での大合唱から、HEY-SMITHのイイカワケン(Tp)を迎えたレゲエ・チューン「Rosso & Dry」のドープなビートと歌とで観客を酩酊させていった。

今回のツアーの札幌公演の際にMAHが喉を壊し、6曲をやったところで声が出なくなってしまい、そこでライヴを断念せざるを得なくなったSiM。苦しい決断だったが、次に続いたHEY-SMITHにバトンを託した経緯があった。"自分がガチでピンチになったときに、「ごめん、お前に助けてもらいたい」って言えるのがcoldrainとHEY-SMITHだけです"という。そして"同じ時代に生まれてバンドをやって、こうして出会えたことは本当に運がいいなと。ありがとうございます"と続けたMAHの熱い言葉にグッとくる。そしてこのツアー各地で2バンドからの誰かをギターに指名してプレイしてきた「KiLLiNG ME」では、まだ弾いていないMasato(coldrain/Vo)、YUJI(HEY-SMITH/Ba/Vo)、そして特別に観客の中から1人を選び、じゃんけんの勝者がギターをプレイ。この日は観客が見事勝者となって、練習してきたのにと悔しがる2人を尻目に歓声を巻き起こし、実にファイナルらしい展開でもステージを盛り上げた。

2バンドの熱いステージを経てさすがに観客の体力も残りわずかではと思うが、"疲れたとは言わせねぇぞ、幕張"というMasatoの声でド頭から攻撃的な「Vena」を見舞ったcoldrain。さらに"全員かかってこい"と「To Be Alive」でヘッドバングを起こし、またアリーナのあちらこちらにできたサークルで観客はもみくちゃになって、拳を振り上げ歌う。観客の体力や興奮のメーターをぶっ壊して天井知らずに盛り上げていく重厚なアンサンブルと、観客のテンションを自在に指揮していくようなスクリームとクリーン・トーンのヴォーカルが冴え、会場内の熱気を容赦なく上げ続けるステージだ。ここでさらに"coldrainのライヴでは、モッシュ、ダイブ、ウォール・オブ・デス等の行為を禁止することを禁止しています"というアナウンスが流れる。"NO RULES ONLY MORALS"。そんな当たり前だがとても大事な思いのもと、左右に大きく分かれたアリーナの観客は、続く「Cut Me」でのカウントとともに勢い良く入り乱れ、「Die tomorrow」は頭から観客の大合唱となって一体感が増していった。

"TRIPLE AXEでこうして大きな場所でやることを夢見てました"とMasatoは言う。またこの3バンドでは、相手の頑張りや成功が自分のことのように嬉しいと互いの関係性、信頼感を語りつつ、ただいざ同じステージでのライヴとなれば、絶対に負けたくない相手でもあると伝える。後半には、なかなかやらない曲だと言って「Inside Of Me」で再び巨大なサークル・ピットを生み出し、「NEW DAWN」、「The Revelation」、そして「Final destination」を連投するという怒濤のパワーで観客を完全燃焼させていった。

2012年からのTRIPLE AXEのヒストリー映像を挟んで迎えたアンコールでは、2020年にTRIPLE AXEでリリースした『15MANIAX』での4曲を披露すると共に、改めてそれぞれのバンドからTRIPLE AXEへの想いや、たくさんの観客が着てくれているTRIPLE AXEのTシャツの価値を、TRIPLE AXEという存在の価値をこれからの活動でも上げていきたいと語った。"またやろうぜ"というMAHの声に、そう遠くない未来にこうして集まれる期待感が滲んだ。

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