LIVE REPORT
Jupiter Presents "The Wishing Ceremony" Vol.4
2017.10.09 @新宿BLAZE
Writer 土屋 京輔
華麗で激しいメロディック・メタルの祭典。Jupiterが主催する"The Wishing Ceremony"が、東京の新宿BLAZEを会場に約2年ぶりに行われた。今回で4度目となるイベントだが、これまで同様に錚々たるアーティストが集結。開演時にはすでに場内が満員状態の活況ぶりだったのも、観客の大きな期待感の現れと受け止められるものだ。
先陣を切ったのはCROSS VEIN。オープニングSEが流れ、幕が左右に開くと、すでに演奏陣は定位置に。メロイック・サインを高々と掲げるMASUMI(Gt)に多くのオーディエンスが同調する中、「Eternal Dream」がスタートしたところでJULIA(Vo)も登場。彼らの均整のとれたパフォーマンスは、広いステージの方が魅力を発揮する。Shoyo(Ba)のアクティヴな動きもいいアクセントになっている。CROSS VEINのライヴを初めて観る人も少なくなかったようだが、曲が進むにつれて、反応はより大きくなっていく。エンディングにはJULIAのナレーションが流れ、2018年にニュー・アルバムをリリースし、4月1日に下北沢GARDENで発売記念ライヴ(["CROSS VEIN 単独公演"『Theater of CROSS VEIN ~The Next Stage~』])を行うことをアナウンス。一気に駆け抜ける短いセットながら、自身の持ち味を的確に伝える内容だった。
2016年に結成されたSilexは、若手の注目株として熱い視線が注がれている4人組(※この日はサポート・キーボーディストのYOSISIも参加)。このタイミングで彼らを抜擢したHIZAKI(Jupiter/Gt)の鑑識眼もさすがだが、その想いに応えるライヴで魅せた。1曲目に披露した「Standing On the Grave of Yesterday」の時点で、相応に楽曲が浸透していることがわかるリアクションを獲得。タレントとしての横顔も知られるカナダ出身のPete Klassen(Vo)は、これまでも様々なバンドで活動してきたが、Silexがそのポテンシャルを存分に活かせる場になったことは明白だろう。CRYING MACHINE時代から評価の高かったMasha(Gt)、10代のころから高いプレイアビリティで知られてきたLIGHT BRINGERのhibiki(Ba)、長らくKelly SIMONZをサポートしてきたYosuke(ex-CROSS VEIN/Dr)とのコラボレーションは、今後もさらなる進化を遂げていくはずである。11月17日にリリースされる1stアルバム『ARISE』は、次なる扉を開くことになりそうだ。
2組の勢いに満ちたステージのあと、百戦錬磨の貫禄を見せつけたのが、結成から10周年を迎えた摩天楼オペラだった。いきなりスタートした「BURNING SOUL」で早くも観客の心を掴む。"さぁ、声出していこうぜ!"と煽る苑(Vo)を始め、数々のイベントを経験するなかで培われた個々の巧みさが多面的に現れている。2曲目の「止まるんじゃねえ」を終えたとき、苑は"最高だな"と笑顔。一斉に挙がる拳の数の多さで明らかだが、それほどオーディエンスは序盤から熱狂的だった。
2012年にシングル・リリースされて以降、ある種の伝家の宝刀的な楽曲となった「GLORIA」では、ファンは思い思いにサイリウムを振る。コーラス・パートの大合唱もお馴染みの光景である。メンバーの自信に溢れた姿は、彼らがこの場で得た確かな手応えそのものだろう。最後に演奏された「PHOENIX」のごとく不死鳥たる摩天楼オペラの輝かしき未来はまだ先にある。11月15日にリリースされる新作『PANTHEON -PART 2-』の全貌も楽しみだ。
なお、ここしばらく、身体の故障でほとんど右手のみでのドラミングを余儀なくされていた悠(Dr)が、かねてから調整していたレギュラー・グリップの新たなスタイルで全編を叩き切ったことも付記しておきたい。これがいかに困難を伴う"変貌"であるかは、同じドラマーの立場でなければわからないかもしれないが、希望を捨てずに邁進するその逞しい姿には深く感銘を受けた。
開催間近になって出演が発表されたUnlucky Morpheusは、6人編成での登場。Silexのhibiki、摩天楼オペラをサポートするJaY(Gt)と同じく、LIGHT BRINGERで活躍していた天外冬黄/Fuki(Vo)、妖精帝國などでもプレイする紫煉(Gt)らを擁するバンドだ。多忙なメンバーが名を連ねているゆえ、ライヴの数自体は多くはないものの、実力は折り紙つき。そこがオーガナイザーであるHIZAKIを惹きつけたとも言えるが、この日も疾走感に導かれる楽曲群を連発しながら、多くの観客にアピールしていた。
"言うまでもない。今日は神イベントだ!"との天外冬黄の言葉のように、今回の精鋭揃いの顔ぶれが彼らを鼓舞していたのは間違いないだろう。テクニカルでありながら、ストレートに響くメロディ。ツイン・リード・ギターのハーモニー、ヴァイオリンによるシンフォニックな調べがドラマチックな展開に起伏をつけていく。音数の多いなかで抜きん出てくる声の存在感も、やはり特筆すべきものがある。短いセットを念頭に置いて、最後の「Change of Generation」のギター・ソロでは、今回はセレクトされなかった「THE TOWER OF THE BLOOD」、「THE TOWER OF THE BLOOD」、「殺戮のミセリア」、「Opfer」、「ピロピロリングナイト●3●」のメロディを組み込むサプライズも。マニアをも唸らせるUnlucky Morpheusの個性が光るパフォーマンスだった。
イベントも後半戦に入ったところで、格の違いを見せつけたのがGALNERYUSだった。何しろオープニングから極めて人気の高い「DESTINY」である。導入部のイントロダクションが聴こえてくるやいなや、瞬時にフロアは沸いた。小野正利(Vo)のクリアなハイトーン・ヴォイス、バンド創設者であるSYU(Gt)を筆頭とする敏腕プレイヤーの集合体が繰り出す一糸乱れぬ高度なアンサンブル。まったく無駄がないのだ。それでいて観客にも見事に歌わせる。続けざまにダンサブルな「THERE'S NO ESCAPE」を配した並びも効果的だった。
そして"ニュー・アルバムから新曲をやりますよ"(小野)と、「HEAVENLY PUNISHMENT」を初披露。リリースしたばかりの『ULTIMATE SACRIFICE』が過去最高のチャート・アクションを記録した直後であり、早くもファンからは熱い反応が返される。さらに叙情味も湛えた名曲「絆」、前作『UNDER THE FORCE OF COURAGE』のリード・トラック「RAISE MY SWORD」を連奏したのだから盛り上がらないはずはない。曲そのもののキャッチーさもあるとはいえ、絶妙な緩急のつけ方の巧みさも、自然に一体感を生み出していく要素だろう。終演後に他の出演者も口々に話していたが、あたかも単独公演であるかのような圧巻たるステージだった。
その熱演を受けて、ヘッドライナーのJupiterがどう魅せるか。新ラインナップでの好調さは昨今の実演の場でも明らかだったが、この大事な大舞台でも着実に自分たちらしいメロディック・メタルを提示しながら、揺るぎない存在感を見せつけたのはさすがだった。彼らの始まりの曲でもある「Blessing of the Future」で幕を開けたときに感じさせた、堂々たる落ち着いた佇まい。時にはグロウルを交えて歌い上げるZIN(Vo)、華やかなステージングと美しきフレージングで観衆を惹きつけるHIZAKIとTERU(Gt)。この3人にRUCY(Ba)とDAISUKE(Dr)のタイトさを増したリズムがあと押しをしていく。
途中、HIZAKIはこの"The Wishing Ceremony"が、"速い、熱い、クサい(!)という3拍子揃ったイベント"であることに触れ、"このシーンを俺たちが引っ張っていく"との力強い宣言もなされたが、その気概が必然的にステージに映し出されたと捉えていいだろう。バリエーションのある選曲でJupiterの多彩さを表現しつつも、一気呵成に攻めている印象を受けたのは、ZINいわく充足した"日本のメタル魂"を全方面に発散させていたからこそだ。最後に演奏された「Symmetry Breaking」は個々の見せ場も盛り込んだ楽曲だが、その激しくも劇的なプレイが生み出した光景は、この日の成功を象徴するものだった。
既報のとおり、現編成でのJupiterは2018年1~2月に行われるツアー"Jupiter「Ascension to Heaven」"までとなっている(※今ツアーをもってZINの脱退が発表されている)。それゆえにひとつひとつの公演がより貴重なものにはなるとはいえ、もちろん、バンド自身はその先を見据えているのも事実である。ファンにとっては気掛かりだろうが、リーダーのHIZAKIのみならず、メンバーが目指す新たな理想像は、従来以上のスケール感になることも容易に想像できるはずだ。"Ascension to Heaven"なる言葉に込められた意味もその精神と同義に違いない。気は早いが、5回目の"The Wishing Ceremony"開催も心待ちにしておきたいところだ。
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