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INTERVIEW

Unlucky Morpheus

2020.04.23UPDATE

2020年04月号掲載

Unlucky Morpheus

Member:天外 冬黄(Vo) 紫煉(Gt/Scream) 仁耶(Gt) 小川 洋行(Ba) FUMIYA(Dr) Jill(Vn)

Interviewer:荒金 良介

Unlucky Morpheusのニュー・シングル『瀧夜叉姫(読み:タキヤシャヒメ)』は、坂東の虎、平 将門を巡る伝説を"和"のアプローチで奏でた、意欲的且つ挑戦的な内容に仕上がっている。前作『CHANGE OF GENERATION』以降、ますますバンドの動きが活性化するなか、常に斬新な企画やアイディアでリスナーを驚かせるバイタリティは素晴らしい限り。今作も従来のファンからすれば意表を突くものであり、あんきものフレキシブルな音楽性に頭が下がる思いだ。和テイストを見事に昇華した今作の内容について、メンバー6人に話を訊いた。


神田明神ホールのシチュエーションも素晴らしかったんで、この場所に合わせて和のテイストの音源を作れたらいいなと思って


-まずは今作の話の前に、Blu-ray『Lunatic East 2019 TOUR FINAL』(2020年3月)がリリースされましたよね。

紫煉:去年、Unlucky Morpheus(以下:あんきも)としては17公演という大きな規模のツアーをやり、そのファイナル公演を収めたものです。オリジナル曲の他に東方プロジェクトのアレンジも昔はやっていたので、その楽曲縛りの構成でライヴをやったんですよ。

冬黄:その前のツアー("Unlucky Morpheus 10th Anniversary Oneman Tour『CHANGE OF GENERATION』")との被りは1曲もないので、ファンの方も待ちに待った内容になったんじゃないかと。

小川:ツアー自体も濃かったし、初めて行った場所もありますからね。ツアーを通してバンドっぽくなりました。達成感もありましたね。お客さんを含めて全員で作り上げることができたなと思います。

FUMIYA:あんきもはもともと東方プロジェクトのアレンジから始まったバンドなので、懐かしさはありましたね。ツアーを通して同じ時間を共有できて、僕もバンドっぽくなったなと感じます。

冬黄:ドラム的には東方プロジェクトのほうがしんどいんでしょ?

FUMIYA:体力的にはね。メロディック・スピード・メタルのテンポでずっとツーバスを踏まなきゃいけないから(笑)。

-アスリート並みの体力が必要とされますね。

FUMIYA:2~3時間マラソンしているような感覚ですからね。

Jill:私は加入してから東方プロジェクトの曲をやっていなかったんです。だから、みんなは懐かしいかもしれないけど、私にとってはすべてが新曲なので、覚えるのが大変でした。ツアー前半は曲を身体に入れなきゃいけなかったけど、後半は楽しめるようになりましたね。

仁耶:僕も東方プロジェクトの曲は懐かしさがありました。あと、あんきもをやり始めた頃は、ライヴは年に1、2回やるお祭りみたいな感覚でしたけど、今はツアーが日常的なものになりつつありますね。昔はひとつのライヴを作り込む感じでしたけど、今は当日思いついたことをやる技量も身につきました。いろんな意味で成長を感じられたツアーでしたね。

冬黄:ファイナル前にロンドン公演("Metal Matsuri")も挟んだので、そこでより結束力が強まったと思います。

紫煉:アニメのタイアップがあるわけでもないし、YouTubeにMVを上げているだけなのに、思いのほか盛り上がってくれてすごく驚きました。

小川:海外は初だったから、修学旅行みたいな気分でした(笑)。

-昨年12月にも新曲「籠の鳥」のMVを発表するなど、バンドとして今、仕掛けてますよね?

冬黄:去年は一昨年よりもライヴをやったので、今年はさらに右肩上がりでいこうと。

紫煉:単純に以前は他のプロジェクトと同時進行だったけど、今はあんきもに集中しているので、スピード感が増しているのかなと思います。

-そして、今作を聴き、急激な音楽の変化に驚きました。

冬黄:今作とMV「瀧夜叉姫」の情報解禁をエイプリル・フールに設定して、"急にあんきもが和風バンドになってしまったら"みたいな、ちょっとジョーク的なニュアンスも交えた感じです。

紫煉:そもそもの経緯から説明すると、最初の予定は7月にアルバムを出して、8月からツアーをやろうと決めていたんですよ。それまでに何もやらないのもあれだなと思い、5~6月に東名阪のワンマン・ライヴをやれたらいいなと。それで会場を探していたら神田明神ホールが候補に挙がったんですよ。俺と冬黄で下見に行ったら、神田明神の隣に併設された会場で、シチュエーションも素晴らしかったんで、この場所に合わせて和のテイストの音源を作れたらいいなと思って。

-会場からインスパイアされたんですか!

紫煉:はい。普段と違うあんきもという形でエイプリル・フールと被せられたら面白いかなという。

冬黄:いつもエイプリル・フールはパート・チェンジしたMVをおふざけで上げているけど、今回は本チャンのMV自体がジョークみたいなノリです。会場を見てその場のインスピレーションで考えた紫煉はすごいなと思います。

紫煉:その頃はアルバムに向けて曲を作りまくっていたので、その勢いで作っちゃいました(笑)。

-これまでヨーロッパ然としたメタルをやり続けてきたあんきもが、いきなり和のテイストに切り替えたことについて他のメンバーは大きな戸惑いもなく?

冬黄:私はドンと来い! でした。もともと陰陽座が好きだし、日本語で歌詞も書いてますからね。普段はあまり演歌っぽいコブシを使わないけど、今回はそういうスキルも初めて入れたので、楽しかったです。

小川:今年は東京オリンピックの年(※延期/取材は3月中旬)でもあるし、このタイミングで和風のものを出すことには意味があるのかなと。

冬黄:たしかに! オリンピックのことは考えてなかった(笑)。

小川:海外の人から見た日本人のおいしいところを意外と日本人は表現しないから、あんきもがやれば面白くなるんじゃないかと思いましたね。

FUMIYA:「瀧夜叉姫」もそうだけど、和風ということで、ドラムで"カンカン!"というベルの音色をかなり使っているんですよ。

仁耶:チンドン屋って感じでね。

FUMIYA:そうそう。紫煉さんからも"ガンガン入れよう!"と言ってもらえたし、単純に面白いなと。

紫煉:ベルを使うと和風っぽさを演出できるなと思いついて、ふーみん(FUMIYA)は喜ぶだろうなと思いながら作りました。

Jill:私も和風テイストをやるとなったときに全然違和感はなくて。ヴァイオリン的には東洋の胡弓に近いニュアンスを意識しました。

冬黄:和のアプローチをしているバンドは日本にもいますけど、ヴァイオン奏者がいるバンドはあまりいないと思うから。

紫煉:「豪賊」もヴァイオリンらしく弾いているけど、オリエンタルな要素も交ぜてますからね。ゲストで二胡の奏者を入れようかと考えたけど、ヴァイオリンでそういうふうに表現した方が面白いかなと。

仁耶:今回は変則的なチューニングでギターを弾いているんですよ。他にやっている人はたぶんいないんじゃないかな。具体的に説明すると7弦ギターをドロップDにして6弦を1音下げているんです。

紫煉:それは俺オリジナルかな。少なくとも誰かを参考にしたわけじゃないから。

仁耶:紫煉さんに言われてそうしたんですけど、変則的なチューニングにすることで表現力はより深めることができました。