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INTERVIEW

Unlucky Morpheus

2024.07.31UPDATE

2024年07月号掲載

Unlucky Morpheus

Member:Fuki(Vo) 紫煉(Gt/Scream) 仁耶(Gt) Jill(Vn) Hiroyuki Ogawa(Ba) FUMIYA(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

やっと、ようやく、ついに。あんきもことUnlucky Morpheusがこのたび発表するシングル『世界輪廻』の表題曲は、7月13日から放送開始となるTVアニメ"なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?"のOPテーマとして起用されるという。重厚なメタル然とした音像を武器としながらも、そこに上質なポップ・センスを絡ませていくことも得意なあんきもは、かねてよりアニソンを作ることを1つの目標としていたという。ドラマチックでダイナミックなあんきも流アニソン、ここに完成!

-Unlucky Morpheusにとって初のアニソン・タイアップ曲を表題に冠したシングル、『世界輪廻』がこのたびリリースされることになりました。こちらは7月13日より、TVアニメ"なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?"のOPテーマに起用されておりますが、5月に発表された、Unholy Orpheusとしての1stアルバムにして、メロデス色が全開だった『what is DEATH?』からの流れを考えると、この展開はとても興味深いです。紫煉さんとしてもここは意図して目論まれたところでもありましたか?

紫煉:ありましたね。あのUnholy Orpheusとして出した『what is DEATH?』は、もともとUnlucky Morpheusのアルバム『evolution』(2022年リリース)と対になるものとして、一緒に出したいと考えていたんですけど、タイミング的にズレてしまって『evolution』が先に出たんですよ。だけど、今度は今回のタイアップの話が持ち上がったこともあり、この間の『what is DEATH?』は今回の『世界輪廻』といい対比を生む作品、として捉えていたところが自分としてもたしかにありました。この振れ幅の大きさを楽しんでほしいな、という気持ちがあるんですよ。

-やはりそういうことだったのですね。今まさに"触れ幅の大きさ"というお言葉があった通り、今回のシングル表題曲「世界輪廻」は、あんきもらしい迫力あるサウンドがベースにはなっている一方で、メロディラインの突出具合や、全体的なバランスとしてはアニソンとしてのキャッチーな特性も、ふんだんに含んだものに仕上がっております。もっとも、あんきもには、「アマリリス」(『evolution』収録)のようにポップ・センスやヴォーカルを前面に打ち出した楽曲がこれまでにもありましたので、これは突然変異などではないとも言えそうです。

Fuki:以前出した『evolution』というアルバム自体、歌が全体を引っ張っていく内容でしたからね。その中でも「アマリリス」は特にアニソンっぽい文脈を持つ曲で、歌の声色も含めてアニメ・ソングとして起用されてもおかしくない、とファンの方々に感じていただけるような曲だったのではないかと思っているんですよ。その意味では、今回の「世界輪廻」も曲がこんなメロディや歌い方を求めていたのでこのように仕上がったに過ぎない、ということなんです。ただ、実際にあんきもとしてアニメのタイアップ曲を作るのはこれが初めての経験なので、バンドにとってはこれが1つのターニング・ポイントというか、おそらくあんきもにとっては、今までで一番たくさんの人数に聴いていただくことになるはずの曲なので、このシングルが私たちにとって大きな意味を持っているのは間違いないと思っています。

-せっかくですので、ここからは楽器陣のみなさまにも、今回のタイアップが決まったときの心境をおうかがいしてみたいです。

FUMIYA:自分としては"ようやくこのタイミングが来たな"という感じですかね。あんきもはメタル・バンドと言ってはいますけど、メタルの中で言えばわりとわかりやすいことをやっているバンドですし、メタル入門用のバンドだなとも思っていて、それこそ「アマリリス」のようにアニソンっぽい曲も前からありましたから、ほんとに"やっとだな"っていうのが正直なところです。

Ogawa:たぶん、あんきもファンの間でも"いつかアニソンやったらいいんじゃないか"って思ってた人たちは一定数いたんじゃないかと思いますしね。もちろん、僕ら自身も以前からそう思ってはいたんですけど、インディーズというか自主でやってるとなかなかそういう機会と巡り合うのが難しい現実もあるので、僕もほんとにやっと叶ったなと思ってます。1つの目標をついにクリアした達成感がありますね。

仁耶:実際問題、事務所とかにも所属せずに、インディペンデントでやっててタイアップを取ってくるっていうのは普通ないことなので、今回いろんな巡り合わせと周囲の方のご尽力によって実現したこの機会を、僕は大変ありがたいものだなと感じております。

Jill:私も"やっと......!"という気持ちに尽きますね。ここまで活動してきたなかで私には2つの大きな夢がありまして、その1つが自分のプロジェクトでアニメのオープニングを担当する、ということだったんですよ。これまでにもお仕事のレコーディングで、アニメの劇伴などに携わらせていただいたことはあるんですけど、自分のバンドで、アニメのオープニングを担当できるという機会をいただけたのはとても嬉しかったです。それに、私は個人的にもアニソンがすごく好きなんですよね。自分のYouTubeチャンネルで"鬼滅の刃"の「紅蓮華」「炎」(共にLiSAの楽曲)、"進撃の巨人"の「紅蓮の弓矢」(Linked Horizon)を、コスプレしたうえでの"弾いてみた動画"として投稿したこともありますし、そういう意味でも、今回アニメの世界に直接関わらせていただくことができてとても光栄でございます。

-なお、アニメのOPテーマということは尺が1分半に固定される大原則がありつつでしょうから、作曲段階では、諸々タイアップ曲ならではの要素を意識されることになったのではないかと思います。紫煉さんとしては、今回どのような点を特に考慮されたのでしょう。

紫煉:アニソンを作るのにまず一番大事なのは、やっぱり"なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?"に合う曲かどうか? っていうことですからね。この曲が流れたとき、作品の中でどう響くかということはとにかく重要視しました。まずはこの作品のために曲を作る意識が最優先すべきものとしてあって、それをあんきもらしく聴かせていくにはどうしていったらいいのか? という考え方をしていったんです。

Fuki:もしあんきものことを知らない人が聴いても、誰もが"おっ......!?"と気になってしまうような曲にしていきたいという気持ちは私も持ってました。そして、そこには当然ヴォーカリスト、Fukiの魅力もしっかり入れていくようにしましたね。

紫煉:音の面に関して言うと、普段あんきもではデジタルなシンセってそんなに多用しないんですよ。でも、今回は"なぜ僕(なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?)"の中に近未来的な武器が出てきますし、ファンタジックな世界観を持った物語になっているので、そのあたりの感覚を表現していくためにあえてデジタル・シンセ系の音を使ってます。まぁ、そうは言ってもファンタジックな世界観の部分は、本来あんきもにとって得意な分野でもあるんですけどね。いずれにしても、とにかくアニメのための曲ということを常に考えながら作ってました。あとは、拍子もアニメの尺に合わせたが故にこうなったくらいです。

-具体的にどういうことなのかも解説していただけますとありがたいです。

紫煉:この「世界輪廻」はBメロが変拍子で、4分の7拍子というか4分の3拍子と4拍子になってるんですけど、曲の尺を合わせるのにあの拍子がちょうど良かったんですよ。最初のうちは普通に4拍子とか3拍子で合わせられないか試してたんですけど、なかなかちょうどいい感じにならなかったんですね。それで、もしかして変拍子だったら合うのかも? と思ってやってみたらそれがたまたまハマりました。あのBメロの変化球な感じは、アニソンとしての尺が決まってなかったら生まれてなかったです(笑)。

-では、音作りの面で、テレビで流れることを各人が踏まえたところはありましたか?

FUMIYA:いや、音はいつも通りで何も変えてないです。「世界輪廻」は曲自体がすごくメタリックな曲ではない歌モノなので、そもそもドラムがそんなに出しゃばるタイプの曲ではないんですよ。でも、ちゃんと自分の個性は必要に応じて入れてますし、ほんとにそういう意味でもいつもと何も変わらないバランス感覚でやってます。

紫煉:ある意味、テレビからどう聴こえるかを考えてたのは基本的に僕だけでしょうね。そこは作曲を担当した者として、最初に考えるべきところだったので。あと、ミックスの段階でもテレビのスピーカーからどう聴こえるか? っていうところも考えてます。メンバーのみんなは、僕の提示したデモに対してそこからさらにいい音楽にするにはどうしたらいいか? っていうアプローチをそれぞれしていったんだと思いますよ。

FUMIYA:まさにそういうことですね。紫煉さんがアニメ・ソングということを意識して曲を作ってくれてるので、僕はそこから逸脱しないようにやったまでです。

Ogawa:僕もそこのスタンスは基本的に一緒ですし、感覚的には「アマリリス」を録ったときと近いものもありました。テレビで流れるからとか、アニソンだからとか、そういうことを気にしたっていうのはなかったですね。

紫煉:日本に住んで音楽をやってるからには、みんなそれなりにアニソンがどんなものかっていう認識は持ってると思うんですよ。たとえ意識してなくても、無意識的に刷り込まれている部分というのもきっとあるだろうし。そういう共通認識みたいなのものは、いろいろこの曲の中で自然と生かされてるところがあると思いますよ。

仁耶:"なぜ僕"のアニメ・ソングに必要な要素は紫煉さんが曲にすべて入れてくれてたので、自分としてはそれを受け取ったうえでいつも通り、純粋にあんきもらしいメタルとして、優れたプレイをするということを大事にしていきましたね。やっぱり、あんきもがアニソンをやる意味というのは、そこにあると思うんですよ。単にメタルっぽいアニソンだったら他にもできる人たちはいっぱいいるでしょうけど、あんきもにしかできないメタルをアニソンとして聴かせる必要があったんです。だからこそ、プレイヤー個人としてはいつもとやることは一緒でした。強いて言えば、今回ならではだったのはミックスがあがってきたときに、"アニメのオープニング曲としては、もうちょっとここの音はこうしたほうが相応しいんじゃないか?"と少し提案したくらいですね。

-先ほどは紫煉さんから物語中の近未来感を音で演出するために、「世界輪廻」では、普段あまり使わないけれど、"あえてデジタル・シンセ系の音を使ってます"との発言がありました。その場合、音の帯域的な問題として、シンセとヴァィオリンが競合するようなことはなかったのでしょうか?

Jill:いえ、そういうことはまったく思いませんでした(笑)。デモを聴いて譜面を見た時点から、この曲の中で表現したいことは自然と伝わってきましたし、自分として大事にしたのは、アニソンという短い尺の中で、聴いた人たちに届きやすいように意識してフレーズを弾いていくことでしたね。そこは普段とちょっと違った点だったかもしれません。

-そうした音作りのプロセスもさることながら、この「世界輪廻」については、詞の内容をどうしていくかという点も大切だったのではないかと思います。先方からは事前に何か資料のようなものはいただいていたのでしょうか?

Fuki:私は今回、このお話をいただいたときに、"なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?"の原作であるライトノベルを読みました。もともとは2017年から2020年にかけて連載されていたもので、現在はコミカライズされたマンガが連載中なんですよね。で、アニメについては先方から、"ここからここまでがアニメ化されます"というお話をうかがったので、すぐに原作を自分で全巻買ったんです。そして、それをすべて読み込んでから書いたのがこの歌詞なんですよ。

-そういうことでしたか。歌詞の第1稿があがってからの追加オーダーや修正オーダーのようなものも、先方とのやりとりの中ではあったりして?

Fuki:何もなかったですね。原作者の方からお墨つきをいただいたっていう言い方をしてもいいんじゃないかと、私は思ってます。