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INTERVIEW

Unlucky Morpheus

2025.02.26UPDATE

2025年03月号掲載

Unlucky Morpheus

Member:紫煉(Gt/Scream)

Interviewer:杉江 由紀

凛々しく、激しく、美しく。Mリーグ"KADOKAWAサクラナイツ"のテーマ・ソングとしてこのたびUnlucky Morpheusが発表する「SAKURA chevalier」は、わびさびの効いたメロディと劇的な歌詞が融合した大和魂溢れるメタル・チューンだ。3月22日にはSONATA ARCTICAとの共演となる"Legends of AVALON"への参加が決まっている上、6月からは全国ツアー"LIVE TOUR 2025《桜花絢爛の陣》"も控えるなか、リーダー 紫煉への本誌初単独取材が実現!


崩壊するギリギリ寸前のラインまで攻めてみたいと思ってた


-Unlucky Morpheusは、2024年に初のTVアニメ・タイアップ曲としてシングル『世界輪廻』を発表して好評を博しましたが、このたびの2025年第1弾シングル『SAKURA chevalier』については、また新たな形での外部コラボレーションが実現したようですね。まずはその経緯について解説をいただけますでしょうか。

僕がMリーグのファンであることはいろんなところで言ってきてますし、これまでもUnlucky Morpheusとして「Top of the "M"」(2020年リリースのフル・アルバム『Unfinished』収録曲)、「"M" Revolution」(2021年リリースの配信シングル表題曲)、「"M" Anthem」(2022年リリースのフル・アルバム『evolution』収録曲)といったMリーグ好き好きソングたちを勝手に作ってきているんですけど(笑)、去年の秋からMリーグ2024-25シーズンの"KADOKAWAサクラナイツ"のスポンサーに就任したんですよ。そこからの自然な流れで、今回は、"(KADOKAWA)サクラナイツ"のテーマ・ソング「SAKURA chevalier」を作ることになったんです。

-この「SAKURA chevalier」は曲調がかなり和の雰囲気となっておりますが、これはきっと、"サクラナイツ"というチーム名からイメージを広げていったからこそ生まれたテイストだったのでしょうね。歌詞世界にも桜のイメージや大和魂を思わせるフレーズが散見されますし、写真でメンバーの皆さまが纏っていらっしゃる衣装に関しては、和とチャイナの要素が融合しているようにも見受けられ、そのあたりも大変興味深いです。

まさに"サクラナイツ"から桜はすぐにイメージが浮かんだし、桜と言えば日本ということで和の要素が必要だなと思いつつ、麻雀はもともと中国発祥のゲームなんで、その要素も意識しながら曲を作っていったところがありました。あと、衣装のほうはさらに"サクラナイツ"のユニフォームのデザインからもインスパイアされたものにしてます。

-大前提の部分で言えば、「SAKURA chevalier」はUnlucky Morpheusの新曲であるわけですが、バンドの持つ特性とタイアップに必要な要素、その両者を楽曲の中で両立していくために紫煉さんが重視されたのは、どのようなことでしたか。

それこそ今まで作ってきた"M"シリーズや、去年の「世界輪廻」もですけど、いろんなものを題材した曲作りはこれまでにもやってきてることなので、まずはその題材となる対象のことを知っている人が聴くとより面白いつくりにしたいな、というのはありました。それと同時に、Mリーグや"サクラナイツ"について全く知らない状態で普通に聴いても、あんきも(Unlucky Morpheus)の新曲として充分楽しめるものにもしているので、聴く人に予備知識があってもなくても成立するような曲にしようということは、気を付けてますね。あと、今回は自分で勝手に作った好き好きソングではなくちゃんとした公式のものなので、俺たちの音楽で"サクラナイツ"やMリーグのことを盛り上げることができたらいいな、という気持ちもあったのは確かです。

-では、この「SAKURA chevalier」を仕上げていく際に、サウンド面で紫煉さんが最もこだわられたのはどのようなことでしたか。

あんきもって基本的にいつも複雑で音数の多いバンドなんですけど、この曲に関してはもっと極限までガチャガチャに音を詰め込みたいと考えてましたね。なんなら、崩壊するギリギリ寸前のラインまで攻めてみたいと思ってたんです。かと言って、聴いた人が"危なっかしいな"と感じることはないと思いますし、僕がこだわったのはかなり細かい部分ではあるんですが、今回チャレンジしたのはそういうところでした。

-たしかに、この「SAKURA chevalier」が、音の情報量が多くてドラマチックな楽曲になっているのは間違いないと思いました。危なっかしいとは全く感じませんし、いい意味での緊迫感と高揚感を湛えた音として聴こえます。グラスいっぱいに入った水が表面張力で盛り上がっている雰囲気というか、あと一滴で溢れるかどうかというような緊張感を漂わせている感じですよね。

あぁ、その表現は自分が曲を作ってたときの感覚と結構近いかもしれない。作曲をするときって、毎回何かしらのチャレンジは入れてるんですよね。今回の場合はそれが崩壊寸前まで攻めながら曲を成立させることだったわけです。音数が多いだけじゃなくて、音の重ね方が自分的に今までにあんまりなかった感じになってるというか。きれいに音を重ねていくのがいつものやり方だとしたら、"ここはちょっとぶつかってる? けどギリギリ大丈夫!"みたいなスリリングさが「SAKURA chevalier」には一瞬あるんです。つまり、これは西洋音楽の理論を超えた次元で、自分の直感的な部分を信じながら、緊張と緩和を曲の中に細かく混在させていく作り方をした曲だとも言えます。

-和の要素を軸にしたことにより、西洋音楽理論を超越することが叶ったわけですね。

やっぱり、日本の古典的な音楽の和声等に対する考え方は、西洋の音楽理論とは違ったものになっていくんですよ。共通してる部分もあるんだけど、例えば雅楽とかはもう根本から違うところが多々あるんです。とは言っても、別に雅楽の理論をめっちゃ勉強したとかではないんですけどね。自分なりの解釈で取り組みながら、Unlucky Morpheusとしては新しい領域に踏み込んでいくことになりました。

-Jillさんが奏でられているヴァイオリンの音も、この「SAKURA chevalier」においては、中国の伝統楽器である二胡を彷彿とさせる響きを孕んでおり、その繊細さが曲の中で美しく映えている印象です。

あれは俺が何か言葉で言うまでもなく、メンバー間で音楽に対する感覚を共有できているから、生まれてきた音だったんじゃないかと思います。状況によってはプリプロの段階で各メンバーに対して、音の方向性やニュアンスなんかを言葉で説明することもありますけど、この曲でのJillさんは、プリプロのときから俺のやってほしいことがすでに伝わってるなという音になってました。

-そうした以心伝心な現象は、今回他のメンバーさんたちとの間でもありましたか?

デモの段階でドラムの音にちょっと和太鼓的な雰囲気を入れてたんですけど、ふーみん(FUMIYA)もその感覚を言わずともしっかり把握してくれましたね。その2人に限らず、デモを渡した段階で今回もメンバーそれぞれがいろいろ汲み取ってくれました。

-紫煉さんご自身は、ギタリストとして「SAKURA chevalier」とどのように向き合われたのでしょう。

この曲にはギター・ソロとヴァイオリン・ソロが入ってて、サビの途中の裏メロも俺が弾いているので、そこでいかに自分の色を出すかというところは考えましたけど、自分の色を出すのはどの曲でもやることですね(笑)。ただ、曲のド頭に入ってるフリーで弾いた和風のフレーズは普段なかなかやってない表現かも。プレイ的にはあの間合いも含めて結構面白いポイントになってると思います。

-あのイントロのギター・フレーズもそうですし、Fukiさんのヴォーカリゼイションにも感じるのですが、どこか「SAKURA chevalier」には"演歌"の面影も漂っていませんか。

うん、そこも自然とこうなりました。こういう曲ならこんな歌い方だよねって感じで、ふっきー(Fuki)がこの曲の特徴を活かしながら歌ってくれてます。

-その昔、Marty Friedmanさんが某番組で、"演歌はメタルなんです"と熱弁をふるっていらっしゃった記憶があるのですけれど、今回「SAKURA chevalier」を聴くことで、改めてメタルと演歌の相性の良さには大変感心いたしました。

その番組は、もちろん俺も知っています(笑)。

-さて。ここからは「SAKURA chevalier」の歌詞世界についてのお話もぜひ伺わせてください。当然"サクラナイツ"というモチーフがあったからだとは思うのですが、サビで高らかに歌われる"桜よ今 騎士の熱き血潮と共に"の一節は実に鮮烈ですし、全体を通してもこの詞は士気の高さに満ちた内容となっておりますね。

"サクラナイツ"は3年前のシーズンで優勝したにもかかわらず、一昨年はセミファイナル、去年はファイナルまで行ったけど優勝することができなかったんですよ。だから、今年は心機一転でやっていくぞ! っていう強い気持ちをみんな持ってると思うんですね。そういう心境をイメージしながら書いたのがこの詞です。